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あなたの事業アイデアを社内外を巻き込む事業計画に!~「経営革新計画」のススメ~

個人消費が回復しつつあるなか、自社の成長を加速させるための新ビジネスのアイデアを温めている事業者さんも、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
また、原材料価格の高止まりに対して、収益向上が期待できる新製品・新サービスを開発中の事業者さんもいるでしょう。
このような事業者さんに、本格的に人手や資金をかける前に取り組んでいただきたいのが事業計画の作成です。
そして、事業計画をつくるのであれば「経営革新計画」として取り組みましょう、というのが今回のブログです。

今回お伝えしたいポイント

1. 新たな事業活動に取り組むのであれば、事業計画の作成が重要です。

2.事業計画を作成することにより、事業が見える化し、事業の方向性を社内外の関係者と共有できるようになります。

3.事業計画を「経営革新計画」の形にまとめると、新規事業の計画としてポイントを押さえたものになります。

4.「経営革新計画」が都道府県に承認されれば、外部の信用が得られ、公的な支援策を受けられます。

5.承認が得られる計画にするには、新規性と実現性をしっかり検討する必要があります。

新たな事業活動の事業計画を作る意義とは?

事業計画を作るには、多忙ななかで、資料集めの時間を作り、考えを整理するためにパソコンに向かっていただく必要があります。
忙しいなかで、時間を使い事業計画を作る意義は、次の2点に集約できます。

① 事業内容を「見える化」できる。
② 事業の方向性を従業員・取引先・金融機関と共有できる。

新たな事業活動への挑戦の場合、未経験、知見不足の状態からのスタートになる場合も多いでしょう。
一度立ち止まって、事業計画を作る意義が大きいと言えるでしょう。

事業計画をより役に立つものするための方策は?

新たな事業活動の設計図として、経営者が自信をもって活動に取り組み、従業員や取引先、あるいは金融機関を前向きに巻き込むことができる事業計画を作るには、どうすればよいでしょうか。
一つの選択肢は、中小企業庁や各都道府県が作成を奨励している、「経営革新計画」の形に事業計画書をまとめることです。
「経営革新計画」を都道府県に提出し、審査の結果、承認が得られればさまざまな波及効果が期待できます。

「経営革新計画」とは?

「経営革新計画」とは、新たな事業活動に取り組みための事業計画づくりを奨励する国の施策です。
「経営革新計画」を定めた法律では、「経営革新」とは「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」と定義されています。

(リンク)詳しくお知りになりたい方は、コチラから中小企業庁のガイドブックをご覧ください。

「経営革新計画」の申請・審査の特徴は?

申請できる事業者

申請できる事業者の範囲は、下表のように主に従業員数で決められています。
業種ごとに定められた従業員の上限人数より少なければ、申請が可能です。
個人事業主でも申請できます。

承認の対象となる事業計画

「経営革新計画」の承認を受けるには、計画が以下の2つの要件を満たすことが必要です。
第一に、事業者の取組みが以下の5類型に該当することです。

第二に、「付加価値額」(または「一人当たり付加価値額」)の伸び率、「給与支給総額」の伸び率という2つの数値指標が、3~5年の事業計画期間の終了時に、設定された目標を超えていることです。
具体的には、次の表のとおりです。

要件を満たしていれば必ず承認ということではなく、計画の内容が審査されます。

補助金・助成金と比較すると?

補助金・助成金を申請する場合も、事業計画の審査が行われます。
補助金・助成金の場合、補助金の目的に叶う事業計画を採択するために、多数かつ複雑な要件が設定されています。
それに比べると、「経営革新計画」には2つの要件しかなく、シンプルかつ間口が広い要件設定になっています。
また、補助金・助成金と異なり、「経営革新計画」には締切がなく、通年で随時申請が可能です。
「経営革新計画」は、要件の少なさや、申請のしやすさの点で取り組みやすい制度と言えるでしょう。

「経営革新計画」に取り組むメリットは?

事業計画を「経営革新計画」の形にまとめるメリット

「経営革新計画」は、中小企業の新たな事業活動を奨励する施策です。
そのため、計画書のテンプレートは、新たな事業活動用に作られています。
テンプレートを使い、記載要領に従って作成すれば、新たな事業活動の計画書としてポイントを押さえた計画を作り上げることができます。
都道府県では、作り方をガイドする記載要領や記載例を提供しています。
また、「経営革新計画」の窓口となっている地域の商工会議所等の支援機関で、アドバイスを受けることもできます。

「経営革新計画」に都道府県の承認を得るメリット

承認を受けることができれば、希望により承認企業名等が公表されますので、一定レベル以上の事業計画として、外部の信用を獲得することができるでしょう。
計画の実行時に、取引先や金融機関の理解を得やすいなどのメリットが期待できます。
また、承認を受けると、計画を実行するに当たって、資金面や販路開拓面等の公的な支援策を受けることができます。
国が用意しているもののほか、都道府県も独自の支援策を用意していることが多いです。

(リンク)承認を取得した場合に利用できる国の支援策は、コチラから確認できます。

事業者さんの声「経営革新計画を作成してよかったこと」

では、実際に「経営革新計画」を作成し、承認を受けた事業者さんはどのようなメリットを感じているのでしょうか?
埼玉県での承認を受け、県のモデル企業にも選ばれた事業者さんの声を紹介します。

(リンク)埼玉県の「経営革新計画事例集」はコチラで見ることができます。

【令和4年度承認 日本人形メーカー(従業員6名)の社長さんのコメント】
(出典) 埼玉県「彩の国経営革新モデル企業事例集」Vol.19

【平成30年承認 屋外広告業(従業員11名)の社長さんのコメント】

(出典) 埼玉県「彩の国経営革新モデル企業事例集」Vol.17

「経営革新計画」の事業計画書テンプレートは?

それでは、提出書類として都道府県が提供している、「経営革新計画」の事業計画テンプレートの構成を見てみましょう。
都道府県によらず主要部分は同じ構成となっており、それぞれの記載項目もほぼ同じです。

① 経営革新計画 「別表1」
② 実施計画と実績 「別表2」
③ 経営計画及び資金計画 「別表3」
④ 設備投資計画及び運転資金計画 「別表4」

ここから、東京都のテンプレートを見ていきます。

(リンク)東京都の書類はコチラからダウンロードできます。

経営革新計画 「別表1」

「別表1」と附番されたテンプレートは、いかなる目標を立て、何に取組み、どれだけの成果をあげるかを記載する「経営革新計画」の中核になる部分です。
都道府県により、このテンプレートに計画の概要を記載させるケースと、ここに事業計画の詳細を記載させるケースの2パターンがあります。
前者のケースでは、その都道府県が詳細記載用の独自の別テンプレートを用意しています。
東京都は、前者、つまり概要を記載する使い方をしています。


(出典)東京都の様式(テンプレート)に筆者が留意事項を吹き出しに記入
※クリックで表が拡大します。

実施計画と実績 「別表2」

「別紙2」には、新たな事業活動を立ち上げ、軌道に乗せるための個別の実施事項を記載します。
計画欄と実績欄がありますが、実績欄は申請段階で記入する必要はありません。
実施事項の進捗を確認するための評価基準、および評価の頻度と時期も記載します。


(出典)東京都の様式(テンプレート)に筆者が留意事項を吹き出しに記入
※クリックで表が拡大します。

経営計画及び資金計画 「別表3」

「計画期間」の、会社全体の数値計画を記載します。
会社全体ですので、既存事業と新規事業の合算値を記入することになります。
多くの都道府県が、既存事業と新規事業それぞれに数値計画を入力し、合算は自動で行うスプレッドシートを、補助テンプレートとして提供しています。


(出典)東京都の様式(テンプレート)に筆者が留意事項を吹き出しに記入
※クリックで表が拡大します。

設備投資計画及び運転資金計画 「別表4」

この「経営革新計画」として取り組む新規事業に必要な、設備投資の明細と、運転資金の増加内容を記載します。


(出典)東京都の様式(テンプレート)に筆者が留意事項を吹き出しに記入
※クリックで表が拡大します。

「経営革新計画」の承認を得るためのポイントは?

東京都では、次のとおり審査のポイントとして、「新規性」と「実現性」を挙げています。
それぞれについて、より詳しく説明しましょう。


(出典)東京都 令和6年度 経営革新計画パンフレット

(リンク)東京都のパンフレットはコチラからダウンロードできます。

審査のポイント「新規性」

① 「既存事業と比較して、何処が新しい事業であるのかが記載されているか」

「新事業活動を行うことによる経営の向上」を後押しする施策ですので、まず、自社の既存事業とどこが違っているのかをよく考え、事業計画のなかで示す必要があります。
既存事業と商品・サービスが違うだけでなく、顧客や市場が違うのであれば、販売促進の方法も違うはずです。
販売促進方法の違いは、自社に必要なノウハウの違いとなります。
既存事業との違いを掘り下げて検討することで、新規事業に必要な経営資源や、準備としてやるべきことが見えてきます。

② 「他社と比較した場合の違い(ターゲットやメリットなど)は何か」

新たな事業活動は「既に他社において採用されている技術・方式を活用する場合でも原則承認の対象」となります。
平たく言うと、他社の真似でも、原則承認の対象です。※
しかし、自社の商品・サービスに他社の類似商品・サービスとの違いがなければ、競争のなかで、顧客をひきつけ事業を伸ばしていくことは難しいでしょう。
競合他社について、性能・品質・価格といった表面的な違いにとどまらず、対応する顧客のニーズや販売戦略まで分析することで、自社の差別化ポイントや、採るべき戦略が見えてくるのではないでしょうか。
※ 「既に相当程度普及している技術・方式等の導入」については、承認対象外になりますのでご注意ください。

審査のポイント「実現性」

① 「いつ・どこで・何を・どのように取り組むということが記載されているか」

事業計画は、それに基づいた行動を起こせるよう、具体的に書かれている必要があります。
事業の立ち上げスケジュール、自社の拠点や対象となる市場、商品やサービスの中身、具体的な製造方法や販売方法を検討し、読む人がわかるように説明する必要があります。
「誰が」、つまり実施体制も重要です。

②「人・モノ・金等の経営資源は手当されているか」

経営資源は、事業計画の実現させる原動力になるものですので、新規事業に必要な経営資源が揃っているか明確に示す必要があります。
人材、設備、資金に加えて、市場などに関する情報やノウハウなどの知的資産・・・。
不足している経営資源があれば、外部調達を考えないといけません。
経営資源に関しては、人材など自社の経営資源の強みを新規事業に活かせるのかも、検討のポイントです。

③ 「仕入先、販売先や顧客ニーズの把握など売上計画は適当であるか」

新規事業として、売り上げが見込めることを事業計画で示す必要があります。
顧客ニーズの存在に関する根拠や、具体的な原材料の仕入先や商品・サービスの販売先を示すことができれば、売上計画の精度は高まります。
数値計画においては、単価と数量に分解して売上の見通しを立てることも重要です。
計画として想定する価格と数量がないと、実行段階で売上が思い通りに伸びない場合、戦略の軌道修正が難しくなります。

さいごに

今回のブログでは、新たな事業活動を開始する際には、事業計画を「経営革新計画」の形にまとめ、認証を取得することが、事業を「見える化」するうえでも、社内外の関係者を巻き込んでいくためにも、有益な取組みであることを説明しました。
また、事業計画を「経営革新計画」として承認が得られるようにするポイントを紹介しました。
いかがでしたでしょうか。
当社(ハイブリッド経営サポート)では、経営革新計画の作成や、都道府県への承認申請もサポートしています。
「経営革新計画」について、もう少し話を聞いてみたいと思われる方は、当社までお気軽にご連絡ください。

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