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中堅企業の飛躍的成長を後押し!「 100億宣言」と「中小企業成長加速化補助金」の活用法

2025年4月、中小企業庁は、中堅企業の成長を後押しするために「100億宣言」という仕組みを整え、その挑戦を後押しする施策として「中小企業成長加速化補助金」がスタートしました(2025年3月2日の本ブログ※をご参照願います)。本記事では、同制度が運用開始後約6ケ月が経過し、どのような企業が「100億宣言」を実施したか、「中小企業成長加速化補助金」の第1次公募結果も振り返り、今後の活用のポイントについて、解説します。

【最大5億円の補助!】2025年度新設の中小企業成長加速化補助金について(2025年3月2日)

今回お伝えしたいポイント1.  なぜ「100億企業」を目指すのか?

2.  「100億宣言」を実施した企業の状況

3.  「100億企業」を後押しする「中小企業成長加速化補助金」とは

4. 「中小企業成長加速化補助金」第1次公募の採択状況

なぜ「100億企業」を目指すのか?

近年、中小企業庁は、売上高100億円を超えている企業、いわゆる「100億企業」の創出を大きな政策目標に掲げていますが、実際のところ「100億企業」は、日本全体で見ると上位1%程度にすぎません。

しかし、「100億企業」は単なる一企業の規模の拡大にとどまらず、地域経済全体に大きなインパクトを与える存在です。具体的には、「100億企業」は、日本のGDPの約53%を創出しており、地域に対して年間130億円以上の需要を創出し、1社あたり500人以上の雇用を生み出す力を持つ力を持つとされています。また、売上規模10億円前後の企業と比べて収益性は1.6倍、給与水準は1.3倍高いというデータもあり、企業自身の持続的成長だけでなく、社員や地域にとっても大きなメリットが期待できます。こうした、「100億企業」の地域・ひいては国への影響力に注目しており、「新しい資本主義実現会議(第30回)内閣官房 2024年10月開催」の重点政策案のひとつとして、「100億企業」の創出を促進する旨を挙げています。

出典)「100億企業化~売上20~30億の中堅企業化のための時流予測レポート 2025」船井総合研究所

 

「100億宣言」とは何か?

「100億宣言」とは、中堅企業の皆様が飛躍的成長を遂げるために、自ら、「売上高100億円」という経営者の皆様にとって野心的な目標を目指し、実現に向けた取組を行っていくことを、宣言するものです。「宣言」には、以下の内容を盛り込む必要があります。

【100億宣言の内容】
1. 企業概要(直近の決算期の売上高、従業員数等)
2. 目標と課題(売上高成長目標、期間、プロセス等)
3. 具体的な措置(生産体制増強、海外展開、M&A等)
4. 実施体制
5. 経営者のコミットメント(経営者自らのメッセージ)

つまり、上記の「宣言」により、売上高100億円を実現するための企業の強いコミットメントと具体的な実現可能性を明らかにし、我が国及び地域の経済を支える中堅企業の加速的な成長に向けた機運の醸成を図るものとします。また、宣言した企業の取組を「見える化」し、より一層の機運醸成を図るため、100億企業成長ポータルに、当該宣言を掲載します。

(100億円宣言の具体例:猿田彦珈琲株式会社)

「100億宣言」は単なる宣言にとどまらず、その後の補助金や税制支援、ネットワーク参加資格など、成長支援策の入口になるのが特徴です。同宣言の主なメリットは以下のとおりです。

【100億宣言のメリット】
1.  補助金活用:中小企業成長加速化補助金等の成長支援制度を利用可能

2. ネットワーク形成:同じ目標を掲げる経営者同士の交流
3. ブランド効果:100億円宣言ロゴマークを活用したPR
4.  税制優遇:経営強化税制の拡充措置(今後詳細決定予定)

「100億宣言」を実施した企業

「100億企業成長ポータル」によると、2025年9月29日時点で1,804社が「100億宣言」を実施しています。同宣言を実施した企業について、マクロ的視点から見てみましょう。

業種別分布製造業が約半数で、卸売・小売業、建設業、運輸・郵便業までで約7割を占めますが、サービス業やIT等まで幅広い業種の企業が参加しているのが特徴です。

■ 地域分布(都道府県別):東京・大阪・愛知等の大都市圏の企業は多いものの、全都道府県の企業が「100億宣言」を実施しているのが特徴です。

事業規模約7割が売上高50億円以下であり、100億円まで「倍増以上の成長」を狙う意欲的な企業が中心です。

■ 従業員数100名未満で約5割強、300名未満で約9割を占めています。

 

「100億企業」を後押しする「中小企業成長加速化補助金」とは

「100億企業」になるための成長を後押しする目的で、令和7年度より開始されたのが、「中小企業成長加速化補助金」です。この補助金の基本要件は以下のとおりです。

項目 内容
補助上限額 5億円(補助率1/2)
補助事業期間 交付決定日から24ケ月以内
補助対象者 売上高100億円を目指す中小企業(直近の売上高が10億円以上100億円未満である必要)
補助事業の要件 ① 「100億宣言」を行っていること
② 投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
③ 一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画の策定
(賃上げ実施期間は補助事業終了後3年間)
※賃上げ要件とは、補助事業の終了後3年間の「給与支給総額」 又は 「従業員及び役員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上であることを指します。
※「給与支給総額」又は「従業員及び役員の1人当たり給与支給総額」どちらで目標を立てるかは申請時に選択いただきます。
※持続的な賃上げを実現するため、補助金の申請時に掲げた賃上げ目標を達成できなかった場合、未達成率に応じて補助金の返還を求めます(但し、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合を除く)。
補助対象経費 建物費(拠点新設・増築等)、機械装置費(器具・備品費含む)、ソフトウェア費、外注費、専門家経費
※建物費は生産設備等の導入に必要なものに限ります。なお、土地代は対象外。
スケジュール 【第1次公募】
申請受付開始:2025年5月8日、申請締切:6月9日、1次審査結果公表:7月中旬、
2次審査(プレゼンテーション審査):8月18日~9月5日、採択結果公表:9月19日
審査方法 1次審査:形式要件の適格性の確認及び計画の効果・実現可能性等について定量面の書面審査
2次審査:1次審査を通過した申請について、地域ブロック単位で審査会を設置し、外部有識者による計画の効果・実現可能性等について定性面も含めたプレゼンテーション審査
審査のポイント 審査は以下の項目を定量的・定性的に審査し、採択事業者を決定されます。
① 経営力、② 波及効果、③ 実現可能性

出典)「中小企業成長加速化補助金(1 次公募)公募要領」

ちなみに、2025年10月12日現在、第2次以降の公募についての公式な発表はありませんが、第3次まで実施されるのではといわれており、今後も新たな発表に注意が必要です。

「中小企業成長加速化補助金」第1次公募の採択状況

2025年9月19日に第1次公募の採択者が発表されました。採択状況は以下のとおりです。

中小企業成長加速化補助金 第1次公募採択状況

有効申請件数  :1,270件、採択件数  :207件(採択率:16.3%

採択者(カッコ内申請者全体)の主要な指標の「中央値」
・売上高成長率*:23.7%/年(15.7%)  *基準年度(補助事業完了⽇を含む事業年度)と事業化報告3年目となる年度の数値を比較した率
・最新決算期の売上高:21.9億円(34.8億円)
・補助事業全体に要する経費:11.0億円(8.8億円)
・給与増加率:5.6%/年(5.0%/年)

出典:「100億企業成長ポータル」

同補助金として初めての採択率は16.3%という、厳しい状況が明らかになりました。具体的には「売上高約21.9億円きぼの中堅企業が平均5.6%の賃上げを行いながら、約11.0億円の投資を行うことで、年率23.7%の事業成長を行う事業計画をコミットする」という野心的なチャレンジを行おうとしている「100億企業」像が浮かんできます。

 

出典)2025年10月7日「100億企業創出シンポジウム」講演資料より抜粋

おわりに

売上100億円を超えることは簡単ではありませんが、中堅企業の経営者のひとつの目標として、上記の「中小企業成長加速化補助金」等の活用や、同じ目標を持つ経営者間でのネットワークを利用した情報共有とモチベーション創出により、ぜひとも挑戦していただきたい目標であります。

HKSでは、上記、「中小企業成長加速化補助金」等の大型補助金の申請から採択後のフォローまで、採択実績のある経験豊富な専門家が対応いたします。補助金のご相談はぜひ、HKSまでご相談ください。

 

今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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