HKSブログ

補助金を使っていい時期のルールと例外(例外:事業再構築補助金の事前着手申請)

補助金はこれから使う費用(事業)にしか出ない原則

今回は、結構よくお問い合わせいただく話題を解説します。

 

「過去に使った経費は補助金の対象に含められるのか?」

 

答えは、原則「NO」です。

補助金を活用して行う事業の開始、つまり「購入契約(発注)等」は、交付決定後に行うことが原則とされております。

交付決定というのは、補助金を得るために超えなければならない「申請・審査」の2つめに当たります。

 

 

図の左から右に手続きを進めます。

もしかしたら「採択」と「交付申請」という用語が分かりづらいかもしれません。

 

【採択】
まず一番左です。補助金を申請して採択される必要があります。まさに第一の関所であり、補助金申請において肝心要の所です。自社における既存事業の強みや弱み、市場の機会・脅威を踏まえた「補助事業の事業計画そのもの」が審査されます。

【交付決定】
そして採択されたあとに行うのが「交付申請」です。交付申請とは、採択された事業計画を実行するための「見積書」や「相見積書」等を入手して提出し、審査を受けるための申請です。この交付申請が承認されて、はじめて「購入契約・発注」ができる、という順番です。

 

交付申請においては、事務局によって見積書の明細レベルまでしっかり確認されます。おかしな項目は無いか、値引きはどうかなど、実施段階の経費の詳細が確認・承認されてからようやく経費を使用することが許されるという順番です。

 

ということで、

 

交付決定前に事業開始(購入契約・発注)してしまった場合は、原則として補助金の交付対象にはできない。

 

特に中小企業庁の補助金(ものづくり補助金やIT補助金)はまずはこれを原則として、頭で覚えて下さい。

 

 

実際にある相談の例

ときどきこのようなご相談をいただきます。

 

実際に会ったご相談の例

【HKS担当者A】
先日ご紹介した持続化補助金のご検討状況はいかがですか?

 

【お客様】
Aさん、先日はご相談に乗っていただきありがとうございました。
現在カタログや看板などを作成中なので、使った金額が確定したら再度 ご連絡させて下さい。

 

(最初の面談で、先述した「原則」を丁寧に説明したのですが、きちんと伝わってはいなかったようです)

 

【HKS担当者A】
●●様、すみません。 補助金は申請して審査の後に採択され、交付申請し交付決定した後に発生した経費しか認められません。
従いまして既に発生した経費は補助の対象とすることができません。

 

【お客様】
そうなんですか?
使った分の領収書をそえて申請するのかと、思っていました。
今回はカタログや看板の制作会社に発注してしまったため厳しいですね。

 

確かに、「使った分の領収書をそろえて申請する」という手続きも「実績報告」として必要になりますが、順番でいえばかなり後ろ(下図の右下)の方の手続きになります。

 

 

原則は覚えたものの、なぜこの順番でなければならないのかをもっと理解するために、各プロセスを紐解いてみます。

 

①事業計画書を作成 → 補助金申請 → 採択

②見積書関連の帳票(相見積書が必要な場合もあり)入手 → 交付申請 → 交付決定

③採択、交付決定を経て、購入契約・発注など経費を使用してよい補助事業期間となる

 

図にある通り、③まで進むことができたら、いよいよ購入契約や発注等を行うことができます。

ただし、この時点ではまだ補助金が支払われない(入金されない)点にも注意が必要です。

補助金が支払われるためには「実績報告」と「確定検査」を終える必要があります。補助事業の「実績報告」を行い「確定検査」をクリアした後に、ようやく「精算払請求」が可能となり、補助金が支払われます。

 

④実績報告 → 確定検査(補助額の確定)

⑤精算払請求 → 補助金の支払

 

という順番になります。①から⑤までのプロセスを別の言葉に言い換えると、

 

①補助金を使ってどんな事業を行いたいのか、補助金の趣旨目的と合っているか?を審査

②事業計画書で説明された経費の中身は確かなのか、対象外の費用は含まれてないかを審査

上記の①と②がOKなら、経費を使ってOK(補助金はまだ支払われない)

④領収書や請求書などをチェックし、実際に使用した額で補助金額が確定するための審査

上記の①~⑤が全てOKなら、補助金が支払われる

 

となります。こうして並べてみると、もし①と②を経ずに先に使った費用を「補助金申請」してよいとなった場合、事業計画や経費の中身の審査が”事後”になるため、後から確認して不適切な場合に「NG」となってしまう可能性が高くなることが分かります。

経営者様にとっても、補助金の対象として認められるかどうか分からない段階で大きな投資の判断を行うことはかなりのリスクを伴うため、「補助金の対象として適切な事業の内容であることがハッキリしてから購入契約や発注を行う方が望ましいのではないでしょうか。

 

ということで、

 

交付決定前に事業開始された場合は、原則として補助金の交付対象とはならない。

 

という原則が”大前提”となりますので、どうか正しく認識していただきたくお願いします。

 

そしてこの後は「原則あるところに例外あり」です。

例外となる「事業再構築補助金の事前着手申請」について解説したいと思います。

 

補助金は領収書を失くすな!とよく聞く理由

補助金の交付を受けて事業を行っている経営者やコンサルタントから、「補助金申請は領収書を失くすと対象にならないから気を付けるように!」という話を聞いた方、いらっしゃるかもしれません。

それを聞いて「補助金申請において、採択される(最初の関門をクリアする)ためには領収書を揃えておく必要がある」「つまり先に経費を使ってから補助金を申請する」と誤解された方がいても不思議ではないと思います。

しかし、ここまでの記事をお読みいただければその認識が正しくないことはご理解いただけるとかと思います

ではなぜ「領収書を失くすと大変」といわれるのでしょうか。

 

実績報告では「発注・注文書」「領収書」「請求書」等々の書類が必要となります。

そして、当ブログでも何度も取り上げていますが、経営者の皆様はとても多忙でいらっしゃるため、どうしても管理が行き届かないなどの理由でこの帳票が揃わずにあとで困ることがよくあります。

もちろん、これは領収書に限らず、交付申請に必要な見積関連の帳票も同じです。

 

そこで支援する側が特に強調して伝えるのが「補助事業に関する帳票は全て保管しておいて下さい!」という依頼です。

領収書に限った話ではありません。補助金申請し採択されてから最後に補助金が支払われるまでの期間を通して、関係帳票は全てPDFファイルにスキャンし整理して格納しておくなど、専任の担当者を立てるなどして、しっかりと管理を徹底して下さい。

 

例外とは?事業再構築補助金の「事前着手申請」

繰り返しになりますが、補助事業の開始(購入契約・発注等)は、交付決定後に行うことを原則としており、交付決定前に事業開始された場合は、原則として補助金の交付対象とはなりません。

ただし、「事業再構築補助金」は新型コロナウィルス感染拡大にあえぐ事業者の救済を目的に生まれたという成り立ちも背景にあるため、早期の事業再構築を図るために必要となる経費については、補助金の交付決定前であっても補助対象経費として認められています

 

具体的に言えば、事務局から「事前着手の承認」を受けた場合は、令和 3 年 12 月 20 日以降に購入契約(発注)等を行った事業に要する経費も補助対象経費とすることができるという制度です。

 

事前着手申請とは

事前着手申請とは、以下を条件として、採択・交付決定前に補助事業の経費に含めることを認める制度です。

①事務局から「事前着手の承認」を受けていること
②令和 3 年(2021年) 12 月 20 日以降に購入契約(発注)を行った経費であること

 

①事務局から「事前着手の承認」を受けていること

事前着手申請は、本事業の申請とは別に「事前着手のための申請」を jGrants にて申請下さい

URL:https://www.jgrants-portal.go.jp/subsidy/a0W2x000006EpDgEAK

事前着手の承認の可否を決定後、結果が通知されます。
通常、申請から 10 日~2週間程度を目安に通知を行う予定ですが、内容や申請状況によってはさらに期間を要する場合があるようなので、ご注意ください。

 

②令和 3 年(2021年) 12 月 20 日以降に購入契約(発注)を行った経費であること

過去をどこまでも遡れるわけではないことは納得できるかと思いますが、それではいつからが対象か?というと、2021年12月20日以降に購入契約・発注を行った経費であるとされています。

 

また、事前着手申請の制度を利用する際の注意点を挙げます。

 

事前着手申請の注意点

①交付決定以降に事業を開始される事業者の方については、本申請は不要です。

②事前着手申請の申請期間は、各公募回の公募開始日から 交付決定日まで

③交付決定前に事業着手が承認された場合であっても、補助金の採択を約束するものではありません。 

④事前着手の承認を受けた場合でも、交付申請手続きは必要です。また、事前着手承認後に発注等を行った経費であっても、交付申請時に事務局にて申請経費の内容等を確認した結果、補助対象とならない場合がありますので、あらかじめご了承ください。

 

注意点③にある通り、事前着手申請が承認されたからといって採択が約束されるわけではないのでご注意下さい。

事前着手で補助事業を行うということは、先述した『経営者様にとっても、補助金の対象として認められるかどうか分からない段階で大きな投資の判断を行うことはかなりのリスクを伴う』という点を十分に理解した上で、採択ならびに交付決定前に補助事業の購入契約・発注等を行うものです。

実際に、事前着手申請を行う場合の事業計画書には、
「なお、本補助事業計画は当社にとって緊急性と必要性が高い取り組みであるため、仮に採択されなかった場合でも予定通りに覚悟をもって実施する所存です。」
といったことが記載されることがよくあります。

 

また、注意点④ですが、事前着手申請が承認された事業の場合は採択後、交付申請を行う時点で既に、見積もり~注文~納品~検収~請求書~振込支払い等の手続きが済んでいることもありますが、その場合でも見積関連の帳票による交付申請は必要とされます。

各申請段階における申請内容に大きな齟齬が無いよう十分にご注意下さい。

 

以上、事前着手申請制度のご紹介でした。

事業再構築補助金を検討される際は、交付申請前に経費を使用するこの制度を活用するかどうかをご検討の上、制度を利用する場合は手続きの面で漏れがないよう十分にご注意下さい。

 

事前着手承認制度に関する資料

【第 6 回以降】事前着手承認制度について
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/download/jizenchakushu_seido006.pdf

【第 1 回~第 5 回】事前着手承認制度について
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/download/jizentyakusyu_syoninseido_01_05.pdf

【第6回以降】事前着手申請システム操作マニュアル
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/download/jizenchakushu_manual006.pdf

 

ここまで記事をお読み下さりありがとうございました。
最後に、本記事に関連する記事をご紹介します。ぜひご参考下さい!

 

 

おわりに

今回は「補助事業の開始(購入契約・発注等)は、交付決定後に行う」という原則を解説しました。

言い換えると「交付決定前に事業開始された場合は、原則として補助金の交付対象とはならない」ことを意味します。

また、この原則の例外となる「事業再構築補助金における事前着手申請の制度」も併せて確認しました。

この事前着手申請の存在や「補助金申請は領収書をそろえることが大事」という説明を聞いて混乱してしまうことがありますが、ものづくり補助金やIT補助金なども含めてあくまでも原則を念頭に入れて取り組まれるようにご注意下さい。

 

この記事によって、上で取り上げたような勘違いによって補助金申請を断念せざるを得ないような事例が1件でも減ることを願います。

 

事前着手申請に限らず、事業再構築補助金に関するお問い合わせやご相談は、補助金活用支援会/HKSまでご連絡下さい。

 

 

関連記事

コメントは利用できません。