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8分でわかる「経営革新計画」~概要と承認取得のメリット~
今回のブログでは、「ものづくり補助金」の加点項目リストの筆頭に記載され、「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)」でも加点項目となっている、「経営革新計画」の承認取得について取り上げます。
「経営革新計画」とはどのような計画なのか、どうすれば承認を取得できるのか、補助金の加点以外のメリットがあるか、といった疑問に答えます。
今回お伝えしたいポイント1. 「経営革新計画」とは、「自社にとって新しく、業界あるいは地域のなかで一般的でないレベル」の新たな事業活動の計画です。
2.「経営革新計画」の承認取得に挑戦する場合、まず都道府県のウェブサイトにアクセスして情報を入手しましょう。
3.「経営革新計画」が承認されると、資金支援、販路開拓支援、都道府県の独自支援メニューが利用できます。
「経営革新計画」とは
「経営革新計画」は、「中小企業等経営強化法」という法律に規定された、中小企業の新たな事業活動を後押しする支援策です。
中小企業等経営強化法によれば、「経営革新」とは「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」を指します。
事業者が「経営革新計画」を策定し、都道府県知事等の承認を得ると、計画を実現するための様々な支援措置を利用できます。
「新事業活動」の類型と新しさのレベル
「経営革新計画」で求められる「新事業活動」とは、次の①~⑤のような取組です。
① 新商品の開発又は生産
② 新役務の開発又は提供
③ 商品の新たな生産又は販売方法の導入
④ 役務の新たな提供方式の導入
⑤ 技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動
事業者は、5類型のいずれか(複数でもよい)に当てはまる新事業活動の計画を立てることが期待されています。
事例としては、次のようなものが挙げられます。
(出典)中小企業庁「2022年版 経営革新計画 進め方ハンドブック」より作成
事例から分かるように、「経営革新計画」でいう取組の新規性(革新性)は、世界初、日本初が求められているわけではありません。
「2022年版 経営革新計画 進め方ハンドブック」には、次のように書かれています。
(出典)中小企業庁「2022年版 経営革新計画 進め方ハンドブック」
「自社にとって新しく、業界あるいは地域のなかで一般的でないレベル」が必要と要約できます。
「経営の向上」を測る指標
「経営革新計画」では、「経営の向上」の程度を測る指標と基準が、次のとおり定められています。
(出典)中小企業庁「2022年版 経営革新計画 進め方ハンドブック」より作成
事業者は、計画期間(3~5年で設定)の付加価値額(または、一人当り付加価値額)の伸び率が年平均3%以上、給与支給総額の伸び率が年平均1.5%以上となる数値計画を作る必要があります。
申請できる事業者の範囲
「経営革新計画」の承認を申請できる企業(または個人事業主)は、業種別に従業員数の上限を定められた「特定事業者」です。
具体的には次のとおりですが、中小企業基本法に定められた中小企業の定義に比べ、多めの上限設定になっています。
(出典)中小企業庁「2022年版 経営革新計画 進め方ハンドブック」より作成
承認を取得するメリット
「経営革新計画」の承認が得られると、資金面や販路開拓などの支援を受けることができます。
ただし、支援を受けるにはそれぞれ個別の審査があり、希望する支援が確約されているわけではありません。
主な支援措置は、以下のとおりです。
1.融資・保証の優遇 | |
日本政策金融公庫の特別利率による貸付 | 経営革新計画の実行に必要な設備資金と運転資金を、日本政策金公庫から、優遇金利で借り入れることができます。 具体的な内容はコチラ |
信用保証の特例 | 経営革新計画の実行に必要な資金を金融機関から借り入れる際、信用保証協会から通常枠とは別枠で信用保証を受けることができます。 具体的な内容はコチラ(出典:「2022年版 経営革新計画 進め方ガイドブック」) |
2.海外展開に伴う資金調達の支援 | |
スタンドバイ・クレジット制度 | 中小企業者の外国関係法人等が、現地(海外)の金融機関から長期資金を借り入れる際、日本政策金融公庫が信用状を発行し、その債務を保証します。 具体的な内容はコチラ |
海外投資関係保証の限度額引き上げ | 中小企業者が国内の金融機関から海外直接投資事業に関する資金の融資を受ける場合、海外投資関係保証の限度額が引き上げられます。 具体的な内容はコチラ(出典:「2022年版 経営革新計画 進め方ガイドブック」) |
3.販路開拓の支援 | |
販路開拓コーディネート事業 | 専門家による、マーケティング企画のブラッシュアップや、首都圏・近畿圏におけるテストマーケティングの支援を受けることができます。 具体的な内容はコチラ |
新価値創造展 | 新価値創造展は、中小企業やベンチャー企業が開発した優れた製品・技術・サービスを紹介し、ビジネスマッチングの機会を提供する展示会です。 書面審査で出展者を決定する際、経営革新計画の承認企業は評価されます。 具体的な内容はコチラ |
承認を得た「経営革新計画」に対しては、都道府県が独自の支援メニューを用意している場合もあります。
静岡県の「経営革新補助金」制度をご覧になりたい方はコチラ
申請から承認までの流れ
1.都道府県の申請要項を確認
「経営革新計画」は国の支援制度ですが、中小企業者が単独で申請する場合、申請先は登記上の本社がある都道府県です。
審査も都道府県で行われます。
よって、「〇〇県(都・道・府) 経営革新計画」でウェブ検索し、分からない点を都道府県の担当部局に問い合わせることが、最初のステップです。
たとえば、埼玉県の「経営革新計画」のウェブページはコチラ
2.計画の策定・必要書類の準備
申請には各都道府県の様式を使用する必要があるので、各都道府県のウェブサイト等から入手する必要があります。
また、各都道府県の担当部局や中小企業センター、商工会・商工会議所等では、申請書の書き方や計画の策定の仕方等のアドバイスが受けられます。
3.申請書の提出
申請書の提出先、提出ルート、提出方法は都道府県によって異なりますので、それぞれの指示に従う必要があります。
承認後の支援策を受けたい事業者は、計画申請と並行して、支援策の実施機関と連絡を取る必要があります。
4.都道府県知事等による承認
都道府県による審査により「経営革新計画」が承認(不承認)されます。
申請から承認まで、通常2~3か月かかります。
承認までかかる日数は、都道府県の審査会等の日程に左右されるため、申請する場合は、予め問い合わせをお願いします。
「ものづくり補助金」との関係
「経営革新計画」の承認取得は、「ものづくり補助金」の加点項目です。
では、「経営革新計画」と「ものづくり補助金」では、申請/応募できる事業者や、取組内容、事業計画の要件は同じでしょうか?
「ものづくり補助金」の概要を知りたい方はコチラ
1.取組の新規性の要件
「ものづくり補助金」の公募要領には、「新製品・新サービスの革新的な開発となっているか」が技術面の審査項目であると書かれています。
そして、何をもって「革新的」とするかは、中小企業庁が運営する補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」の「補助金虎の巻」のコーナーで次ぎのように説明されています。
(出典)中小企業庁補助金・総合支援ウェブサイト「ミラサポplus」
ミラサポplusの該当ページはコチラ
「経営革新計画」が求める取組の新規性については、「『新事業活動』の類型と新しさのレベル」の節で記載したとおりですが、新規性に関して両者はほぼ同じことを求めていると考えられます。
2.事業計画の数値指標の要件
「『経営の向上』を測る指標」の節でみたとおり、「経営革新計画」では、付加価値額(または、一人当り付加価値額)の伸び率と給与支給総額の、事業計画期間の伸び率で「経営の向上」の程度を測ることとなっており、それぞれ、年平均3%、1.5%の基準が設けられています。
「ものづくり補助金」も同じ指標と基準を採用していますが、これらに加えて、事業場内最低賃金の基準のクリアを応募者に要求しています。
(出典)「ものづくり補助金」公募要領(16次締切分)より作成
「ものづくり補助金」公募要領はコチラ
3.申請/応募できる対象者の要件
「経営革新計画」を申請できる企業(または個人事業主)は、「申請できる対象者の範囲」の節でみたとおり、従業員数で上限を区切られた「特定事業者」です。
一方、「ものづくり補助金」の方は、企業(または個人事業主)が応募する場合、下表のとおり、「中小企業者」か「特定事業者の一部」であることが必要です。
「ものづくり補助金」には応募できるが「経営革新計画」を加点に使えない場合や、「経営革新計画」は承認されても「ものづくり補助金」に応募できない場合があることに、留意が必要です。
(出典)「ものづくり補助金」公募要領(16次締切分)より作成
おわりに
「経営革新計画」と「ものづくり補助金」の応募に必要な計画は共通点が多く、だからこそ、「経営革新計画」の承認の取得が「ものづくり補助金」の加点項目になっているといえるでしょう。
「経営革新計画」は承認取得に時間がかかることに留意する必要がありますが、資金面・販促面の支援措置もあるため、多くの公的支援を利用して新規事業を育てたい事業者の方は取り組んでみてはいかがでしょうか。
このブログで「経営革新計画」が気になった方は、下のリンクのガイドブックに目をとおしてみてください。
「『経営革新計画』進め方ガイドブック」はコチラ
承認取得に向けては、ヌケ・モレのない計画策定のために、「認定経営革新等支援機関」に指定された支援機関に相談されるのも有効な手段です。
「認定経営革新等支援機関」とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。
HKS(補助金活用支援会)は、中小企業診断士で構成された「認定経営革新等支援機関」ですので、「経営革新計画」や「ものづくり補助金」に興味を持たれた事業者さんは、お気軽にご相談ください。
HKSパートナー、中小企業診断士
ひとこと:HKSブログを通じて、補助金の勘どころを分かりやすくお伝えして参ります!