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人手不足時代、労働生産性の向上に役立つ補助金で稼げる企業へ!
人手不足が切実な問題となっている今日、注目したい経営の指標が、労働生産性です。
今回のブログでは、労働生産性について解説し、中小の事業者さんの人手不足対応と労働生産性の向上を後押しする補助金・助成金をご紹介します。
今回お伝えしたいポイント1. 労働生産性について理解していますか?
2.労働生産性の向上に向け、補助金や助成金を上手く活用しましょう。
3.労働生産性をみなさんの経営のモノサシにしませんか?
人手不足の現状
まず、みなさんが感じておられる人手不足の現状を客観的なデータで確認してみましょう。
次の図表は、2024年度版の中小企業白書に掲載された「中小企業の売上高DI・従業員過不足DIの推移」を表すグラフです。
売上高DIとは、今期の売上額が前期の売上額から増加したと答えた企業の割合(%)から、減少したと答えた企業の割合(%)を引いたものです。従業員過不足DIとは、従業員の今期の水準が過剰と答えた企業の割合(%)から、不足と答えた企業の割合(%)を引いたものです。
これをみると、コロナ禍からの需要回復を受けて売り上げが回復する一方で、人手の不足感がコロナ前と同水準、過去15年の最高水準まで高まっていることが分かります。
事業者さんの悩みごと
中小企業の採用は難しさを増しており、事業者さんそれぞれに、次のような悩みを抱えているのではないでしょうか。
① 限られた人手で業務を遂行するため、従業員の残業が常態化し、従業員から不満がでている。
② 離職・退職によって従業員が減少し、受注を減らさざるを得ない。
③ 求人を掲載したが応募がなく採用できないため、受注を増やせない。
必要な人材を採用できるように、企業の魅力を高める努力は必要です。
しかし、人を増やしたくても増やせない前提で、売り上げと利益をあげ続けられる業務体制や事業の形を構築することが、これまで以上に重要になっています。
労働生産性とは
労働生産性とは、企業が事業活動によって、投入した労働力(INPUT)に対して、どれだけの成果(OUTPUT)を産み出しているかを表す指標です。
数値が高いほど、少ない労働力で多くの成果を獲得していることを示します。
人手不足の時代には、より少ない労働力で、より多くの成果を獲得できるよう取り組むこと、つまり、労働生産性を高める経営が必要です。
労働生産性の計算方法
労働生産性には、成果を何で測るかにより2種類の表し方があります。
ひとつが物的労働生産性、もうひとつが付加価値労働生産性です。
物的労働生産性
物的労働生産性は、投入した労働力に対して、生み出された成果を、商品やサービスの生産量を用いて表す方法です。
計算式は次のとおりです。①は労働者1人当たりの労働生産性、②は労働時間1時間当たりの労働生産性です。
こちらは、成果が商品やサービスの生産量で表されているので、分かりやすいですね。
事業活動の分析に利用するのは、こちらです。
10人が1日8時間働いて800個生産するのであれば、労働生産性は次のとおりとなります。
付加価値労働生産性
付加価値労働生産性は、投入した労働力に対して、生み出された成果を、企業活動から得られた付加価値額を用いて表す方法です。
計算式は次のとおりです。①は労働者1人当たりの労働生産性、②は労働時間1時間当たりの労働生産性です。
財務分析をする場合や、補助金申請をする場合に使われるのはこちらです。
ここで、付加価値額には、控除法と加算法という2種類の計算方法があります。
控除法による付加価値額
控除法の計算式を示すと、次のようになります。
企業が生み出した価値は、粗くいえば自社が産み出した商品やサービスの対価である売上高で測ることができます。
しかし、売上高のなかには、材料費など他社が産み出した商品やサービスの価値が含まれています。そのため、それらを引き算するのが控除法の考え方です。
加算法による付加価値額
一方、実際によく使われるのは加算法です。計算式は次のとおりです。
この計算式には、企業が産み出した付加価値を、利益と、それを産み出す要素となった自社内の費用(外部購入価値でないもの)の合計としてみる、という考え方が表れています。
足し算する項目は損益計算書等の財務諸表から抜き出して計算しますが、どの項目を取るかで加算法にはさまざまなバリエーションがあります。
補助金で使われる労働生産性
経済産業省の補助金で最も多く使われている労働生産性の計算方法は、以下のとおりです。
分母の労働者数には従業員数を用い、分子の付加価値額には加算法のバリエーションのひとつである次の計算式を利用します。
付加価値額を、事業活動による利益(営業利益)と、人に関する経費(人件費)と設備に関する経費(減価償却費)の合計値として捉えています。
減価償却費は、設備投資にかかった金額を、設備が使用できる期間にわたり分割して費用に計上したものと考えることができます。
労働生産性を向上させる方法
では、人手不足の環境下で、どうすれば労働生産性向上を実現できるのでしょうか。
代表的な方法としては、以下の5つが考えられます。
① 省力化設備を導入し、人による作業から機械・設備による作業に転換する。
② ITツールやITシステムの導入により、人が携わる業務を効率化する。
③ 顧客に価値を認めてもらえるよう、商品やサービスの高度化、差別化を行う。
④ 既存市場から、収益が期待できる新市場へ事業の軸足を移し、新市場に商品・サービスを供給する。
⑤ 教育・訓練の機会を設け、より多くの成果を産み出せるよう従業員の能力を向上させる。
労働生産性の向上に役立つ補助金・助成金
事業者のみなさんが、以上のような取組をするうえで、資金面で力強い後押しとなるのが、国や自治体が実施している補助金・助成金です。
これらの補助金・助成金は、労働生産性を高める観点で、「どのように役に立つか」の違いから次の3つのタイプに分けられます。
① 労働力の投入を増やさないための補助金
② 成果の拡大を図るための補助金
③ 労働力の質の向上を図り、成果の拡大を図るための助成金
ここでは、2024年度、国が実施している代表的なものを簡単にご紹介します。
ご紹介した補助金・助成金を申請される方は、それぞれの補助金・助成金のポータルサイトにアクセスし、「公募要領」に目を通すようにしてください。
労働力の投入を増やさないための補助金
省力化設備やITツール・ITシステムを導入することができれば、残業を減らし、新たに従業員を採用しなくでも業務を回せる可能性があります。
2024年度、政府は人手不足に悩む中小企業の省力化の支援策として、2種類の補助金を新設しました。
「省力化投資補助金」と「ものづくり補助金・省力化(オーダーメイド)枠」です。
「省力化投資補助金」は、人手不足解消に効果があるロボット等の汎用製品をカタログから選択して導入できるようにし、その費用の一部を国が補助します。
事業者さんが比較的簡易に取り組むことができる省力化を支援する補助金です。
一方、「ものづくり補助金/省力化(オーダーメイド)枠」は、自社の業務の実情に即した省力化を、オーダーメイドの設備で実現する取組に対する補助金です。
デジタル技術を用いた省力化であることが条件となっています。
ITツール・ITシステムの導入支援策としては、「IT導入補助金」があります。
こちらも導入したいITツール・ITシステムをカタログから選択する形式の補助金になっています。
これらの補助金では、申請の際に提出する事業計画において、指定された水準以上の労働生産性の向上を織り込むことが要件になっています。
ものづくり補助金/省力化(オーダーメイド)枠
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省力化投資補助金
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IT導入補助金/通常枠
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成果の拡大を図るための補助金
人手不足の環境下でも、新規の技術・商品・市場に関する取組により、新たな事業展開を図り、売上げと利益を拡大することができれば、付加価値額が増加し労働生産性は向上します。
ここに紹介する補助金は、労働生産性の観点では、付加価値額の増加に重点を置いた補助金となります。
「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が自ら作成した経営計画に基づき、商工会議所や商工会の支援を受けながら行う販路開拓等の取組や、販路開拓の取組と合わせて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援する補助金です。
「ものづくり補助金/製品・サービス高付加価値化枠」は、従来の「ものづくり補助金」を再編して新しく設定された申請枠です。
通常類型、成長分野進出類型の2つの申請類型が用意されており、前者は革新的な製品・サービス開発のケースに、後者は特にDX、GXの分野で革新的な製品・サービス開発をするケースで利用が可能です。
「事業再構築補助金」は、新商品・新市場への進出による事業再構築で、ポストコロナ時代への経済環境への対応や、コロナ影響からの回復の加速化を図る事業者を支援する補助金です。
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事業再構築補助金/成長分野進出枠(通常類型)
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労働力の質の向上を図り、成果の拡大を図るための助成金
従業員さんが業務に関する知識を深め、スキルを磨くことのできる研修の機会を設けることも、従業員さんの職務能力の向上を通じて、労働生産性向上につながる可能性があります。
省力化投資により、人が担ってきた工程を機械設備が担う工程に置き換えるケースでは、それまでその工程を担ってきた従業員さんに、リスキリングの機会を設ける必要があるかもしれません。
厚生労働省は、人材開発の支援をするための助成金「人材開発支援助成金」を設けています。
さまざまなパタンの人材開発の取組が助成され、特に新事業を展開するためのリスキリングの取組は支援が手厚くなっています。
人材開発支援助成金/人材育成支援コース
人材開発支援助成金/事業展開等リスキリング支援コース
労働生産性を経営のモノサシに
多くの補助金では、申請が採択され交付を受けると、設備投資などの補助事業を実施後、3~5年の間、補助事業の成果(補助金の効果)が事業計画に沿って実現しているか、年に1度、補助金事務局にフォローアップの報告が求められます。
補助事業を実施した企業は、労働生産性や付加価値額の数値の推移をウォッチし、報告する必要があります。
労働生産性や付加価値額に関する数値は、給与や営業利益のように損益計算書に記載されておらず、馴染みの少ない指標かもしれません。
しかし、営業利益に人件費や減価償却費を合算した金額を自社が産み出す価値と捉え、従業員一人が産み出す価値を向上を目指すというのは、人手不足の時代において重要な考え方です。
人件費は過去の利益に対して使われた費用であると同時に、明日の利益を生み出す人材を自社に確保するための費用です。
また、減価償却費は資金の支出を伴わない費用として、その分の資金は利益とともに、明日の設備投資に使うことも可能です。
補助金の報告のためだけではなく、経営を適切な方向に進めるための管理の指標(モノサシ)として、労働生産性を活かしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
今回のブログでは、人手不足が深刻化する時代において、重要性が高まっている経営指標「労働生産性」と、労働生産性の向上に役立つ補助金・助成金を取り上げ解説しました。
いかがでしたでしょうか?
当社(補助金活用支援会合同会社、略称HKS)は、中小企業診断士が集い、中小企業の事業者さんの補助金支援をはじめとする経営支援を行う団体です。
補助金・助成金だけでなく、経営管理についてもご質問がありましたら、お気軽にお声をおかけください。
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。
HKSパートナー、中小企業診断士
ひとこと:HKSブログを通じて、補助金の勘どころを分かりやすくお伝えして参ります!