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経営課題としてのビジネスケアラー対策 「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」をご紹介します。

今回は、経営課題としてのビジネスケアラー対策の指針となる「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」についてご紹介します。

今回お伝えしたいポイント1.   ビジネスケアラーとは?

2.「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」の概要と仕事と介護の両立支援の進め方

3.仕事と介護の両立に関する助成金はどのようなものがあるか

2024年3月、経済産業省は、仕事をしながら家族の介護に従事する「ビジネスケアラー」を取り巻く諸課題への対応として、より幅広い企業が仕事と介護の両立支援に取り組むことを促すため、「企業経営層向け」に両立支援の進め方などをまとめたガイドラインを公表しました。

ビジネスケアラーとは?

ビジネスケアラーとは、仕事をしながら家族を介護する人のことを指します。仕事と介護の両方にエネルギーを注ぎ込む必要があるため、労働生産性の低下や介護離職につながってしまうことがあります。
ビジネスケアラーの増加は日本全体における経済的損失にもつながり、2030年には約318万人に達すると推計されています。

■ビジネスケアラーに関する将来推計

出所:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」

「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」の概要

「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」では、仕事と介護の両立支援について、以下の構成で解説しています。

・ガイドライン策定に当たっての背景

・仕事と介護の両立に取り組む意義

・仕事と介護の両立に関する従業員や企業の現状・課題

・仕事と介護の両立支援の進め方

 

仕事と介護の両立に取り組む意義

ガイドラインでは、企業経営として仕事と介護を両立できる環境を整備することは、「従業員のキャリア継続」だけでなく、中長期的な企業価値向上に向けて、人的資本経営の一環として取り扱うこと、つまり経営戦略と連動した人材戦略の一部として位置づけていくことが重要となっています。また、事業・組織運営上、人材不足に対するリスクマネジメントを行う観点から、企業経営上、仕事と介護の両立支援を取り組む意義は大きいと説いています。

■「人的資本経営等の取組における「仕事と介護の両立支援」の位置づけ」と「年齢階層別のビジネスケアラー人数と人口に占める割合(2022年10月時点)」

出典:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン(入門編)」

企業における仕事と介護の両立支援の進め方

ガイドラインでは、企業が取り組むべき取り組むべき事項として、「経営層のコミットメント」「実態の把握と対応」「情報発信」の3つのステップを示しています。

STEP1 経営層のコミットメント

仕事と介護の両立支援において全社的に取り組む意向を示します。

・経営者自身が知る

「介護」を知り、企業活動への影響の可能性を認識しているか?

・経営者からのメッセージ発信

仕事と介護の両立施策推進に向けて、ポリシーを発信しているか?

・推進体制の整備

担当役員設置/担当者の指名。管理職層の巻き込みができているか?

STEP2 実態の把握と対応

組織内での仕事と介護の両立における影響とリスクを把握し、人材戦略を具体化します。

・アンケート・聴取

社内の介護に関する状況をしっかりと把握できているか?

・人材戦略の具現化

介護を行う従業員が活躍できるよう人材戦略を設計できているか?

・適切な指標の設定

仕事と介護の両立支援に関して適切な指標を設定できているか?

STEP3 情報発信

企業がプッシュ型の情報発信を行うことで、従業員個人の将来的なリスクを低減します。

・基礎情報の提供

介護保険制度などの基礎情報をプッシュ型で提供できているか?

・研修の実施

全社員向けにリテラシー向上の研修や管理職向けの両立支援推進に関する研修の機会を提供できているか?

・相談先の明示

社内での相談先・プロセスを社員向けに明示的に伝えられているか?

 

また、社内だけではなく、ステークホルダーや地域などの外部との対話・接続により、両立支援を促進していくことを説いています。

出典:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」

仕事と介護の両立に関する助成金

仕事と介護の両立支援に関する支援施策として、育児・介護休業法で定められた介護休暇、介護休業、所定時間外労働・時間外労働・深夜労働の制限、短時間・短日勤務、フレックスタイム制などがありますが、以下のような助成金も用意されています。

両立支援等助成金(厚生労働省)

【目的】
働き続けながら子育てや介護を行う労働者の雇用の継続を図るための就業環境整備に取り組む事業主に対して両立支援等助成金を支給することにより、職業生活と家庭生活の両立支援に対する事業主等の取組を促進し、労働者の雇用の安定を図るものです。

【介護離職防止支援コース】
介護離職防止支援コースは、介護休業や介護両立支援制度を利用する労働者に対して、両立支援等助成金を支給する制度です。
「介護支援プラン」を策定し、プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主、または介護のための柔軟な就労形態の制度を導入し、利用者が生じた中小企業事業主に支給します。

① 介護休業:対象労働者が介護休業を合計5日以上取得し、復帰した場合、
休業取得時、支給額30万円、職場復帰時、支給額30万円
②介護両立支援制度:介護のための柔軟な就労形態の制度(*)を導入し、原則として、合計20日以上利用した場合、支給額30万円

(*)介護のための在宅勤務、法を上回る介護休暇、介護フレックスタイム制、介護サービス費用補助
※休業、両立支援制度それぞれで1年度5人までです。

 

東京都の取り組み

東京都は、2030年に37万人がビジネスケアラーとなることが予想されており、介護離職や介護発生に伴う物理的、精神的負担等によって引き起こされる労働生産性損失は、推計1兆481億円と都道府県別では突出しています。現在、実施されている東京都独自の関連施策を一部ご紹介します。

・介護休業取得応援奨励金(東京都)

「介護休業取得応援奨励金」は、従業員に介護休業を取得させるとともに、職場環境を整備した都内中小企業等に奨励金を支給することで、介護休業の取得を促進し就業継続を後押しするものです。
合計15日の介護休業取得で27.5万円、合計31日以上となると最大55万円迄の奨励金を支給しています。
※申請は1事業者につき、一事業年度に1回までです。

 

・育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金(東京都)

「育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金」は、育児・介護と仕事の両立支援を契機とした都内中小企業等のテレワーク導入を促進するため、就業規則の見直しやテレワーク環境構築に係る費用を助成しています。

■育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金の助成限度額・助成率

中小企業向け支援拠点の整備へ

政府は、中小企業を対象とする「介護両立支援ハブ」を整備する方向で進めています。普段から中小企業と設定を持つ地方銀行などが拠点を運営し、経営者の意識づけや従業員への情報提供を行うことを想定しています。
経済産業省は、今年度、中小企業における仕事と介護の両立支援に向けた「介護両立支援ハブ」モデル実証実験を実施する予定で、運営事業者を募集しています。事業の効果やどの程度の財政支援が必要か見極めた上で、支援拠点を整備していくようです。

参考)経済産業省「令和6年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(地域のおけるヘルスケア産業推進事業)」

「中小企業における仕事と介護の両立支援に向けた「介護両立支援ハブ」モデル実証事業 公募要領」

さいごに

今回は「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
仕事と介護の両立支援の取り組みとして、まずは、経営者が全社的に取り組む姿勢を示すことから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、HKS には100人以上の多彩なバックグラウンドを持つ中小企業診断士が所属しています。経営計画書や事業計画書のブラッシュアップ、各種補助金申請等の支援において、多くの支援実績がございますので、よろしければご相談下さい!

今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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