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補助金受給における不正行為は絶対NG! 不正行為の具体例とそのリスクを知る

近年、政府が提供する各種補助金において、不正受給が深刻な問題となっています。特に、IT導入補助金や中小企業事業持続化補助金など、多くの中小企業が利用する補助金での不正が多数発覚しており、政府は今後、こうした不正行為に対して厳格な対応を取る方針を示しています。

そこで、今回はこれから補助金申請を検討している中小企業の経営者の皆様に向けて、不正行為のリスクの高さと、そのような行為に手を染めないことの重要性について、具体的な事例を交えてお伝えします。

今回お伝えしたいポイント1.   不正行為とはどのようなことを指すか?

2.不正行為がもたらすリスク

3.不正行為に手を染めないために

不正行為とはどのようなことを指すか?

補助金の申請時や利用中に行ってはいけない行為があります。代表的な例として以下が挙げられます。

(1)虚偽申告・虚偽報告:
実際には存在しない事業内容や経費を申請書類に記載し、助成金・補助金を不正に受け取る行為です。例えば、実際には購入していない設備を「購入した」と偽り、補助金を申請するケースが該当します。また、架空の取引先との契約書・請求書を作成し、あたかも正当な取引があったかのように装う手口も見られます。

(2)経費の水増し・架空計上:
実際の支出額よりも多くの金額を計上したり、存在しない経費を計上したりして補助金を多く受け取る行為です。経費の水増し・架空計上のような不正は会計帳簿や領収書の改ざんにより行うケースが多くあります。

(3)二重申請・受給:
同一の事業や経費に対して複数の助成金・補助金を重複して申請・受給する行為です。例えば、同じ設備投資に対して国の補助金と地方自治体の助成金の両方に申請し、二重に受給するケースが該当します。多くの助成金・補助金制度では他の公的支援との併用を禁止している場合があり、違反すると不正受給とみなされます。

(4)対象外経費の申請:
補助対象ではないツール(例:補助金対象外のハードウェアやソフトウェア)導入経費を、あたかも対象内経費であるかのように名目を変えて記載する行為です。このような場合、会計監査で発覚すると補助金の返還命令や追徴金が科される可能性があります。

(5)手続きのなりすまし:
他人やITベンダーにすべてを任せ、申請者自身が手続きを行わないことは不適切とされます。最近の補助金申請は、電子申請が主流ですが、中小企業のID、パスワードを他人に貸し出し、申請を代行してもらうことも不正行為となります。

不正行為の具体的な事例

昨今では、中小企業向け補助金の中で、申請数・採択数ともに多い中小企業のITツール導入を支援する「IT導入補助金」における不正行為について大きな問題になっています。具体的には、「IT導入補助金」において、システムを納入した事業者から資金がキックバックされるケースが多数報告されています。会計検査院の調査*1によれば、調査対象の383事業のうち、14%にあたる55事業で不適切な行為が認定されました。
*1)https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/6/pdf/061021_2.pdf

例えば、福岡市の美容関連企業では、3つの登録ベンダーからECサイトなどのITツールを導入し、約1500万円の経費がかかったとして922万円の補助金を受給しました。しかし、ベンダーからのキックバックにより、自己負担分を実際には負担しておらず、さらに不当な利益も得ていました。このケースでは、ベンダーが虚偽の情報を使って補助金を申請し、ソフトウェアの管理画面などの偽の画面や偽造した預金通帳の写しなどを提出していました。

不正行為がもたらすリスク

不正受給が発覚した場合、補助金適正化法*2に基づき、以下のような厳しい措置が取られます。
*2)補助金適正化法(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)は、国や地方自治体が交付する補助金の適正な執行を確保するための法律。不正受給を防ぐために、補助金を受けた企業や個人に対して厳格な義務を課し、違反があった場合には罰則を適用します。

(1)補助金の返還:
不正に受給した補助金は、全額返還を求められます。さらに、不正受給が発覚した場合、返還額に加えて加算金が科されることがあります。

(2)加算金(ペナルティ):
補助金適正化法第29条に基づき、不正受給が判明した場合、返還額に加えて不正受給額の1.1倍~1.5倍の加算金が課されることがあります。例えば、500万円の不正受給があった場合、最低でも550万円、場合によっては750万円を返還しなければなりません。

(3)延滞金:
返還を求められた補助金について、期限内に返還しなかった場合、年3%程度の延滞金が発生します。返還が遅れるほど、企業の財務負担が大きくなります。

(4)刑事罰:
詐欺罪(刑法第246条):10年以下の懲役が科される可能性があります。実際に、不正受給を行った経営者が詐欺罪で逮捕・起訴された事例もあります。偽造罪・虚偽申告罪:補助金の申請時に虚偽の書類を提出した場合、公文書偽造罪や私文書偽造罪(刑法第155条、第161条)が適用される可能性があります。

(5)企業名の公表:
不正受給が発覚すると、企業名や代表者名が公表されることがあります。企業の社会的信用が大きく損なわれ、取引先や顧客からの信頼を失うリスクがあります。
例として、IT 導入支援事業者の登録取消について、IT導入補助金2025ホームページ*3にて毎年公表されています。
*3)https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/deregistration_list.pdf

(6)今後の補助金申請の制限:
不正受給が発覚した場合、一定期間(例:5年間)の補助金申請が制限される可能性があります。

不正行為に手を染めないために

中小企業の経営者として、以下の点に留意し、適切な申請を行うことが重要です。

(1)信頼できるコンサルタント、ベンダー等の選定
「実質無料」などの甘い言葉で誘導するコンサルティング会社やベンダーには注意が必要です。信頼できるコンサルティング会社・ベンダーを選定した上、契約内容を十分に確認しましょう。

(2)申請内容の正確性の確保:
売上高や経費などの申請内容は、正確かつ真実に基づく情報を提供することが重要です。虚偽の情報を提供することは不正受給につながります。

(3)自主返還の検討:
万が一、誤って申請を行い、給付金を受給してしまった場合は、速やかに自主的な返還を検討しましょう。中小企業庁が調査を開始する前に自主的な返還の申し出を行い、返還を完了した場合、原則として加算金・延滞金は課されません。

まとめ

政府の補助金は、中小企業の成長や持続的な発展を支援するための重要な制度です。しかし、その制度を悪用する不正行為は、企業自身の信用を失墜させるだけでなく、厳しい罰則や経済的損失を招きます。経営者として、法令遵守の姿勢を持ち、適切な手続きを踏んで補助金を活用することが、企業の健全な発展につながります。

不正行為に手を染めることなく、正々堂々と事業を推進し、社会から信頼される企業を目指していきましょう。

なお、HKSではコンプライアンスの遵守を徹底した上で、多くの補助金申請支援の実績がございますので、ぜひご相談ください!

 

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