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もの補助19次・20次の違いと申請時の注意点

ものづくり補助金(もの補助)は、中小企業が革新的な新製品・サービスを開発するための大切な支援制度です。特に19次と20次では申請ルールや審査ポイントが一部変わり、グローバル枠の記載要件や加点条件が厳格化されています。
本記事では初心者にも分かりやすく、公募要領の変更点と、採択されやすい事業計画書作成のコツを整理しました。
これから申請する方は、最新のルールを正しく理解し、審査で評価される計画を練り上げましょう。
今回お伝えしたいポイント1. 19次と20次で「グローバル枠」の記載要件が変更
2.「ニッチ分野トップの潜在性」審査項目が20次で削除
3.「地域未来牽引企業」など地域貢献要素が評価対象に
4.成長加速化マッチングサービスの条件が厳格化
5.計画書は全社計画と一貫性を持ち、根拠データを明記する
「ものづくり補助金」とは何か?(基本をおさらい)
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:もの補助)は、国が中小企業や小規模事業者の「新しい挑戦」を後押しする大切な補助制度です。
近年、原材料高騰、人手不足、賃上げ圧力など経営環境が厳しくなる中で、中小企業が「自社独自の新製品や新サービスを生み出し、利益を増やし、賃金を上げていく」ための投資を国が一部負担してくれる仕組みです。
【例】
例1:製造業がAIロボットを導入して、不良品を減らす新しい生産ラインを構築
例2:食品メーカーが海外市場向けに新ブランドを立ち上げ、輸出販路を開拓
例3:小規模な宿泊施設が外国人観光客向けにオンライン予約システムを導入
これらに必要な設備費、システム構築費、専門家の指導料などが補助対象となります。
補助金の額は、会社の規模や取り組み内容に応じて変わりますが、多くの場合は 補助率1/2(小規模事業者や条件付きで2/3) です。
詳細は公式サイトもぜひ確認してください。
19次と20次の公募の違いをやさしく解説
申請にあたって大切なのは、最新のルールをきちんと押さえることです。
19次と20次では、過去の公募から少しずつ見直され、より申請の質が問われるようになっています。
ここでは初心者にもわかりやすいように、ポイントを絞って解説します。
① 事業計画書の書き方がよりシンプルに
これまでは「3.3 事業計画書への記載事項」と「4.1 書面審査項目」に内容が重複していました。
20次ではこれが整理され、審査項目に一本化されて、より「何をどのように書けば評価されるのか」がわかりやすくなりました。
➡️ アドバイス
どこに何を書くべきか迷いにくくなった反面、項目ごとに漏れなく書くことが必須です。
② グローバル枠のルールが厳格化
19次では「広告宣伝・販売促進費を計上する場合だけマーケティング戦略を詳細に書いてください」という条件でした。
20次では、広告宣伝費を計上しなくても、グローバル枠に申請する企業は必ずマーケティング戦略を詳細に書くことが求められています。
➡️ アドバイス
輸出計画だけでなく、誰をターゲットに、どの国のどの層に売るのかを数字付きで説明しましょう。
③ 政策面審査の一部変更
19次の審査項目には、「ニッチ分野でグローバル市場トップの地位を築く潜在性」という一文がありましたが、20次では削除されています。
代わりに20次では、「地域未来牽引企業」など地域に根ざした先進企業は評価されるようになりました。また、「アトツギ甲子園地方大会」出場企業も評価されるようになっています。
➡️ アドバイス
地域貢献や事業承継に関する取組があれば、必ず計画書に書いておきましょう。
④ 加点項目の条件がより明確に
19次では、「成長加速化マッチングサービス」への登録が加点要件でしたが、20次では 「登録済みだけでなく、『掲載中』になっている課題だけが有効」 と明記されています。
➡️ アドバイス
登録しただけで安心せず、ステータスを「掲載中」にしているかを必ず確認してください。
審査項目・加点項目・減点項目を深掘り
以下、審査項目・加点項目・減点項目を深掘りをしていきます。
✅ 書面審査項目:5つの要点
1)課題認識の明確化
なぜこの事業が必要か。現状の問題点を数値や具体例で示す。
2)解決策の独自性
他社と違うポイント、技術面の新規性、独自ノウハウを丁寧に書く。
3)実現可能性
スケジュールやリスク管理を具体的に示す。
4)効果と波及性
売上・利益増加や地域経済への貢献を数値で表す。
5)政策適合性
国の重点政策に沿っているか(例:DX推進、賃上げ、人材育成)。
✅ 加点項目:忘れないように気を付けて
代表例:
• 賃上げ計画の策定
• 先端設備等導入計画の認定取得
• 地域未来牽引企業の認定
• 成長加速マッチングサービス(掲載中の課題が必須)
• アトツギ甲子園出場歴
これらを漏れなく書き込み、証拠資料を添付しましょう。
✅ 減点項目:これだけは避けたい!
• 同じ内容の事業を複数回申請
• 他の補助金と経費が重複
• 虚偽や過大な売上計画
一度問題があると、次回以降の申請制限が課されることがありますので、誤魔化しは絶対にNGです。
採択されるための計画書作成5つの鉄則
① 全体構想を明確に
計画の冒頭で「誰が、何を、どうやって、どのように儲けるのか」を一文で言い切れるように整理してください。
② 根拠データを盛り込む
「売れるはず」だけでは説得力がありません。市場データや取引先の意向、過去の実績を積極的に使いましょう。
③ リスク対策を書く
トラブルや予定変更があった場合の代替策を必ず盛り込みます。「何があっても計画を達成できる」印象を与えます。
④ チェックシートを活用
自身でチェックシートを作成し、抜け漏れがないように記入しながら計画を作りましょう。
⑤ 専門家に必ず見せる
採択率向上のため、最後の仕上げとして、認定経営革新等支援機関に必ずチェックしてもらいましょう。
おわりに
ものづくり補助金は、中小企業にとって成長の大きなチャンスです。しかし、ルールや記載内容を誤ると時間をかけても不採択となってしまいます。
今回ご紹介した19次と20次の違いを押さえ、ポイントをしっかり理解して、信頼できる専門家と一緒に準備を進めましょう。
ものづくり補助金申請の道のりは複雑に思えるかもしれませんが、地方の雇用創出、顧客への付加価値の提供、御社の事業拡大の「きっかけ作り」となることを心から願っています。どんなに小さな疑問や不安も、専門家が解決の手助けをいたします。
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

HKSパートナー 博士(工学)、中小企業診断士、認定経営革新等支援機関
ひとこと:補助金という言葉は聞いたことあるかもしれませんが、具体的にどう申請したらよいのか、どんな点に注意したらよいのか、まったく見当がつかない方も多くいらっしゃるかと思います。そんな方のために丁寧な説明を心がけたいと思います。