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今からでも間に合う!2025年8月以降に申請できる中小飲食店向けインバウンド対応の補助金

インバウンド観光客(以下、インバウンド客)が、コロナ前を超えて過去最高更新するニュースを毎月耳にします。全国の観光地では大勢のインバウンド客でごった返し、場所によっては、オーバーツーリズムが社会問題化しています。今回は、中小飲食店がインバウンド対応に活用できる、今(2025年8月以降)から申請可能な補助金を紹介いたします。
今回お伝えしたいポイント1. 中小飲食店におけるインバウンド対応での課題と有効な対策とは
2. 2025年8月以降でも申請可能な、中小飲食店でのインバウンド対応に活用できる主な補助金
インバウンド需要の回復と中小飲食店への影響
新型コロナウイルスの影響を受けて一時的に減少していたインバウンド客数は、2024年以降大きく回復し、2025年にはコロナ前の水準を既に超えています。日本政府観光局の2025年7月16日の発表数値によると、2025年6 月のインバウンド客数は推計値は 3,378千人で、前年同月比では 7.6%増、同月過去最高を更新しました(図1)。上半期の累計では 2,152万人となり、2024 年同期を 370 万人以上上回るとともに、過去最速となる 6 か月で 2,000 万人を突破しました。特に韓国、台湾、東南アジア諸国からの旅行者が急増しており、個人旅行(FIT:Foreign Independent Tour)を中心とした「グルメ」や「体験」を重視する訪日スタイルが定着しつつあります。
特に、「グルメ」については、高級料理店と同じくらい、庶民的で地元色あふれる中小飲食店への期待も大きく、中小飲食店は、こうしたインバウンド客の需要を取り込めるチャンスを迎えているといえます。一方で、インバウンド客を迎えるには、多言語対応やキャッシュレス化、宗教・文化への配慮といった対応力が求められるため、初期投資負担やノウハウ不足等が課題となっています。
図1
出典:日本政府観光局(JNTO)報道発表資料(2025年7月16日)
中小飲食店で実践したいインバウンド対応5選
ところで、一般的に飲食店におけるインバウンド対応の施策として、以下の5つが有効と言われています。
1.ホームページ・メニュー・店内表示等の多言語化:
日本語の他に、英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語等の主要言語でのホームページ、看板、メニュー等を作成することは必須になります。またそうした翻訳はAI任せにせず、ネイティブのチェックによる正しい翻訳であることも、インバウンド客からの安心感・信頼感を得ることができます。店内表示には、文字よりも視覚に訴えるピクトグラムを使う方法もあります。
2.無料Wi-Fiの設置:
インバウンド客にとって、店内に入ってからも料理のメニュー、食べ方等を調べるためにスマホは手放せませんので、店内でスムーズなネットアクセスが可能な無料のWi-Fiが使えれば、大変喜ばれます。店内無料Wi-Fi設置の狙いはそれだけではありません。Wi-Fiを使えば、店内でスマホで撮影した料理や食事の時の楽しい写真をSNSにその場でアップロードいただくことが可能です。インバウンド客の誘致にはSNSの口コミが大変効果的ですので、その場でSNSに写真をアップロード頂いたお客様には割引を行うという施策で成功している中小飲食店があります。
3.翻訳アプリや従業員教育による外国語対応力の強化:
日本語と外国語の音声や文字を変換するアプリや翻訳機は数多くあり、インバウンド客の方から翻訳アプリを利用して注文したりすることも多いです。翻訳アプリ、注文用の指差しシート等のツール導入に加え、それを使う従業員への教育(語学力・インバウンド客へのおもてなしマインドの醸成含む)も並行して実施する必要があります。
4.キャッシュレス・モバイル決済の導入:
主要クレジットカードへの対応はもちろんのこと、中国大陸のAliPay、韓国のKakao Pay、台湾のLINE Pay、欧米圏のVisa/Apple Payなど、国別に主流な決済方法を把握し、インバウンド客が使いやすい環境を整えることが重要です。
5.ハラール・ベジタリアン対応メニューの導入:
ハラールやベジタリアン対応のメニューを準備しておくことで、インバウンドの来店客の中に、イスラム圏出身の方やベジタリアンの方がいる場合にも対応が可能です。メニューの作成には、、専門家からの支援や専門機関からの認証取得により、インバウンド客にも安心して利用してもらえます。
2025年8月以降でも申請できるインバウンド対応に活用できる主な補助金
インバウンド客の増加が見込まれる2025年度(令和7年度)において、国(国交省・経産省等)及び地方自治体それぞれが、自治体、DMO(Destination Management/Marketing Organization:観光地域づくり法人)、民間事業者のインバウンド誘致・対応を支援事業を推進するための予算を確保しています。
1.国の補助金
国交省観光庁は、2025年度のインバウンド対応に関する予算として、前年度比5%増の530億円を計上しており、地方誘客の促進、デジタル・ノマド(リモートワークをしながら旅行する人々)の誘致、インバウンド受入環境整備、インバウンド受入環境整備、安全・安心対策に重点的に活用される計画です。また、経済産業省中小企業庁が主管する補助金も、インバウンド対応に活用できます。以下、2025年8月以降申請可能な主な補助金を3つ紹介いたします。
(1) 国交省観光庁「観光振興事業費補助金(インバウンド受入環境整備高度化事業)」
本補助金は、インバウンド受入環境を整備する地方自治体、DMO、民間事業者が、幅広く活用が可能です。既に公募申請は開始されており、第1回の締め切りが2025年7月25日になりますが、第2回締め切りとして同年8月29日まで申請が可能です。なお、本補助金は、複数の事業の実施か、同一事業を複数個所で実施することが原則ですので、注意が必要です。
目的 | 訪日外国人旅行者の周遊の促進・消費の拡大を図るため、訪日外国人旅行者の来訪の増加が見込まれる市区町村に係る観光地において、公共交通機関の駅等から個々のスポットに至るまでの散策エリアにおける「まちあるき」や広域的な周遊に係る環境整備を一体的に進める事業を実施し、ストレスフリーで快適に旅行を満喫できる環境の整備を図る。 |
補助対象者 | 高度化計画に記載されたインバウンド受入環境整備高度化事業を実施する者(市区町村、都道府県、DMO、民間事業者等) |
補助対象事業 | A.賑わい環境の創出 B.新たなニーズへの対応・新技術の活用(飲食店等を対象としたロボット等の導入等) C.ストレスフリー・快適な旅行環境の整備(公衆無線LAN環境の整備、飲食店等の多言語対応、先進的決済環境の整備等) D.ユニバーサル対応 E.拠点機能の整備・改良 ※上記A~Bの事業を複数実施又は同一の事業であっても複数箇所において実施することを基本とするが、既に以下の受入環境整備が完了している又は整備予定である場合は単独での事業の実施を妨げない。 |
補助対象経費 | A.使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費 B.補助金交付決定後に、契約・発注により発生した経費 C.証拠書類・見積書等によって契約・支払金額が確認できる経費 |
補助率 | 1/2以内 |
補助限度額 | 非公開(実際は、事業の適正費用の評価、観光庁の予算状況等を鑑み、事務局により決定される) |
申請期間 | 【二次公募期間】2025年6月27日(金)~8月29日(金)(第1回締め切り7月25日)※予算が無くなり次第、公募受付を終了。 |
WEB | https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo08_00044.html |
(2) 経産省中小企業庁「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(グローバル枠)」
本補助金は、単価50万円以上の設備と単価50万円以上の設備投資が必須要件でありハードウェアの導入に向いています。インバウンド対応として、多言語セルフオーダーメニュー・券売機システムの構築、多言語サイネージの設置等への活用が可能です。
目的 | 中小企業・小規模事業者の、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等に要する経費の一部を補助を行うことにより、中小企業者等の生産性向上を促進し経済活性化を実現する。 |
補助対象者 | 中小企業・小規模企業者、小規模事業者等 |
補助対象事業 | インバウンド対応に関する事業(製品・サービスの開発・提供体制を構築することで、海外からのインバウンド需要を獲得する事業等) ※販売先の1/2以上が訪日外国人となること、インバウンド市場調査報告書等の提出の要件あり。 |
補助対象経費 | ①機械装置・システム構築費(単価50万円以上の設備投資が必須)、②運搬費、③技術導入費、④知的財産権等関連経費、⑤外注費、⑥専門家経費、⑦クラウドサービス利用費、⑧原材料 |
補助率 | 中小企業:1/2、小規模企業・小規模事業者:2/3 |
補助限度額 | 上限3,000万円(下限額100万円) |
申請期間 | 20次:2025年7月25日公募締切、21次以降:スケジュール未発表※ ※同補助金は過去各年度4~5回の公募を実施した経緯を考慮すると、2025年度もあと2回程度公募が行われる可能性が高い。 |
WEB | https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html |
(3) 経産省中小企業庁「小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)」
本補助金は、常時使用する従業員が5名以下の小規模な飲食店でのインバウンド対応含む販路開拓への支援として活用できます。具体的には、多言語WEBサイト・メニュー・サイネージの製作等があります。
目的 | 小規模事業者等が取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図る |
補助対象者 | 小規模事業者(飲食業の場合、常時使用する従業員数5名以下) |
補助対象事業 | 以下、①~③を全て満たす事業: ①「販路開拓等」又は販路開拓等の取組と併せて行う「業務効率化(生産性向上)」の取組み ②商工会・商工会議所の支援を受ける取組み ③補助事業実施期間内に補助事業が終了。 |
補助対象経費 | ①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、⑤旅費、⑥新商品開発費、⑦借料、⑧委託・外注費 |
補助率 | 補助対象経費の2/3(賃上げ特例のうち赤字事業者は3/4) |
補助限度額 | 上限50万円(インボイス特例:50万円上乗せ、賃上げ特例:150万円上乗せ) |
申請期間 | 第18回:2025年10月3日~同11月28日 |
WEB | https://www.jizokukanb.com/jizokuka_r6h/shinsei.html |
2.地方自治体の補助金
地方自治体は、その地域の中小企業のインバウンド対応ニーズに応えるような、より広範囲なインバウンド対応への補助金を提供しています。以下、例として、東京都の「インバウンド対応力強化支援事業補助金」「アドバイザーを活用した観光関連事業者支援事業補助金」「ベジタリアン・ヴィーガン認証取得支援補助金」を取り上げます。申請期間として、年度内2025年4月1日~2026年3月31日迄、補助金申請額が予算上限に達するまで申請が可能です。ちなみに、申請期間について、事務局に問い合わせたところ、2024年度までの実績では、申請期間途中で予算上限に達して受付終了となったことはないとのことでした。
(1) 東京都「インバウンド対応力強化支援事業補助金」
中小飲食店のインバウンド対応の各施策について、包括的に活用できる補助金です。開業前の事業者も補助対象となる点も魅力的です。
目的 | 東京都内の宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設等が、訪都外国人旅行者のニーズに対応した利便性・快適性の向上を目的に実施する、新たな取組を支援する。 | ||||||||||||||||||
補助対象者 (飲食店の場合) |
東京都内で許可を受けて営業している飲食店(資本金5,000万円以下または従業員50名以下) ※開業を予定するものも補助対象者になります。 |
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補助対象事業・経費 |
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補助率 | 補助対象経費の1/2以内(①多言語対応は2/3以内) | ||||||||||||||||||
補助限度額 | 1施設・店舗・営業所あたり、上限300万円(団体、グループあたり上限1,000万円) | ||||||||||||||||||
申請期間 | 2025年4月1日~2026年3月31日迄(補助金申請額が予算上限に達した時点で受付終了) | ||||||||||||||||||
WEB | https://www.tcvb.or.jp/jp/project/infra/welcome-foreigner/ |
(2) 東京都「アドバイザーを活用した観光関連事業者支援事業補助金」
本補助金は、アドバイザーからの助言を前提とした補助金で、内容的にインバウンド対応で活用できるものが多く含まれています。(1)と比べ、こちらは1年以上の営業実績が必要になります。
目的 | 東京都内の観光関連事業者が、アドバイザーの助言を受けて行う経営改善や新しい事業の展開に向けた取組を支援することにより、観光関連事業者の経営力を向上させ、安定した受入環境の実現を図る。 | ||||||||||||||
補助対象者 | 東京都内で登記簿上の本店又は支店を有し※、東京都内で旅行者向けに観光関連事業(宿泊業、旅行業、飲食業、小売業、観光バス事業・タクシー事業等)を、令和7年4月1日現在で1年以上営んでいる者。※個人事業主の場合は開業届で納税地が東京である者。 | ||||||||||||||
補助対象事業 | 補助対象者が、令和7年4月1日以降に受けたアドバイザー(東京観光アドバイザー等)の助言をもとに実施する、係る以下の取組みが対象: (1) 経営の改善や生産性向上の取組 (2) 新サービス・商品開発等新事業の展開の取組 (3) 経営戦略の見直し等を行う際に必要なコンサルタントを受ける取組 ※ご自身が申請されたい内容について支援証明書に沿ってアドバイザーから助言を受け、その内容を反映した取組を申請することが必須。 |
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補助対象経費 |
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補助率 | 補助対象経費の2/3以内 | ||||||||||||||
補助限度額 | 1事業者 上限200万円(広告宣伝費、コンサルタント経費の補助金予定額は 上限100 万円) | ||||||||||||||
申請期間 | 2025年4月1日~2026年3月31日迄(補助金申請額が予算上限に達した時点で受付終了) | ||||||||||||||
WEB | https://www.tcvb.or.jp/jp/project/infra/welcome-foreigner/ |
(3) 東京都「飲食事業者向けベジタリアン・ヴィーガン認証取得支援補助金」
本補助金は、東京都内の飲食店が、ベジタリアン・ヴィーガン向けの取り組みを行い、その取り組みをしかるべき認証機関からの認証取得のためにかかる費用等を補助するものです。
目的 | 東京都内の飲食店等に対して、ベジタリアン及びヴィーガンに関する認証取得を支援することにより、訪都外国人旅行者の安心感・満足感の向上を図り、新たな客層による観光消費の増加につなげる。 |
補助対象者 | 東京都内で飲食店を営む事業者(東京都多言語メニュー作成支援ウェブサイト「EAT東京」の「外国語メニューがある飲食店検索サイト※」の掲載店舗である必要)※https://www.menu-tokyo.jp/index.php?lang=jp |
補助対象事業 | ベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店としての認証(ベジタリアン・ヴィーガン飲食店認証)を新たに取得するとともに、ベジタリアン・ヴィーガン料理の提供方法に関する方針を店内で明示する取組み。 |
補助対象経費 | 審査料、報償費謝金等、登録料・認定ロゴ等使用料、入会費・会員費等、研修費、その他費用 |
補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
補助限度額 | 1店舗あたり上限20万円 |
申請期間 | 2025年4月1日~2026年3月31日迄(補助金申請額が予算上限に達した時点で受付終了) |
WEB | https://www.tcvb.or.jp/jp/project/infra/vegetarian-vegan/ |
おわりに
今回は、中小飲食店がインバウンド対応で活用できる、2025年8月以降でも申請できる、国・地方自治体の主な補助金を紹介させていただきました。ただ、同一事業に対して、複数の補助金申請を行うことができない場合がありますので、申請前に公募要領等の十分な確認が必要です。
HKSでは、上記インバウンド対応に関する補助金活用に向けた採択支援から、採択後の事業フォローまで、経験豊富な専門家が対応いたします。補助金のご相談はぜひ、HKSまでご相談ください。
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

中小企業診断士、補助金活用支援会(HKS)パートナー、30年以上ICT業界に身を置き、企業のDX導入支援やグローバル事業展開の実践経験があります。地域の中小企業の皆様の発展のために全力で支援させて頂きます。