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最新の生成AI活用調査から読み解く中小企業の「勝ち筋」

今回の記事では、2026年1月27日のシンポジウム「日本のAI計画と国際協調」の基調講演で発表された「生成AIの普及とその効果推定」を読み解き、中小企業の「勝ち筋」を探りたいと思います。
現在、多くの日本企業が生成AIの導入を模索していますが、特にリソースが限られる中小企業にとって、その活用が「利益に直結するかどうか」は死活問題です。国際大学GLOCOMが実施した最新の調査報告「生成AIの普及とその効果推定」に基づき、中小企業が生成AIを導入し、具体的な成果を上げるための戦略を探っていきたいと思います。なお、本調査報告の特徴は、生成AIの効果を徹底してユーザへのアンケート調査によって推計したことです。仕事がどれくらいAIに代替されるか、効率は何倍になるかなどについて一部の有識者の意見ではなく、実際に使っている人々の実体験と意見をもとにした推定であることに特徴があります。
今回お伝えしたいポイント1. 生成AIは「魔法」ではないが、「強力な武器」になる
2.「どの業務」から着手すべきか:高い投資対効果を狙う
3.中小企業が陥る「裁量まかせ」の罠
4.成功を左右する「経営者の意志」と「外部の知恵」
5.特定業界における「爆発的効果」:インバウンドとコンテンツ産業
6.デジタル基盤の整備:クラウド利用がAI活用を加速させる
7.地方の中小企業にこそチャンスがある!!
8.明日から取り組むべき3ステップ
9.おわりに
生成AIは「魔法」ではないが、「強力な武器」になる
出典:「生成AIの普及とその効果推定」(国際大学GLOCOM)に基づき筆者作成
まず、生成AIの利用実態を見ると、業務で利用している層はまだ一部ですが、その効果は極めて具体的に現れています。調査によると、生成AIの主たる利用用途は、アイデア出しや壁打ち、検索・調査、文章・資料作成の補助など多岐にわたります。
中小企業の経営者が注目すべきは、その「能力向上効果」です。生成AIを導入することで、作業能力が平均で約16%、最大で23%程度向上するという試算が出ています。これは、限られた人数で多くの業務をこなさなければならない中小企業にとって、実質的に「数人分の労働力」を上積みすることに等しいインパクトを持ちます。筆者の体感からも適切な訓練により、これらの試算を遥かに超える能力向上効果があると断言できます。
「どの業務」から着手すべきか:高い投資対効果を狙う
出典:「生成AIの普及とその効果推定」(国際大学GLOCOM)
生成AIはすべての業務に均一に効くわけではありません。調査によれば、利用率と効果が顕著に高いのは以下の業務です。
- 研究開発・商品開発(利用率41%)
- 企画・マーケティング(利用率44%)
これらの「対情報の業務」(PCの画面を見て行う仕事)は生成AIとの親和性が非常に高く、作業能率の向上が著しいことがわかっています。一方で、接客や生産・物流といった「対人・対物の業務」での利用率は1割以下に留まっています。
中小企業へのアドバイス: まずは現場の作業ではなく、バックオフィスや販促企画、新商品開発のフェーズから導入を開始するのが「勝ち筋」です。具体的には、SNSの投稿案作成や、新サービスのコンセプト立案、競合調査の要約などから始めると、効果を実感しやすいでしょう。
中小企業が陥る「裁量まかせ」の罠
出典:「生成AIの普及とその効果推定」(国際大学GLOCOM)に基づき筆者作成
ここが今回の調査で最も重要な発見の一つです。多くの経営者は「AIを導入したから、あとは現場で自由に使いこなしてくれ」と考えがちですが、これは効果を半減させます。
調査結果によれば、「会社から具体的な指示を受けて利用する場合」の方が、社員の裁量に任せるよりも時間短縮効果が2倍近く大きい(指示受け:1時間程度 vs 裁量:0.5時間)ことが示されています。作業能率の向上率で見ても、指示受け利用は15〜20%向上するのに対し、裁量利用では8%程度に留まります。
中小企業へのアドバイス: 「自由に使え」ではなく、「この業務の、この工程で、こう使え」という具体的な利用方法(指示)を提示することが、成功への最短ルートです。経営層やDX担当者が先行してプロンプト(指示文)のテンプレートを作成し、それを現場に配布するような「トップダウンの具体的介入」が求められています。
成功を左右する「経営者の意志」と「外部の知恵」
出典:「生成AIの普及とその効果推定」(国際大学GLOCOM)に基づき筆者作成
生成AIの導入効果を最大化するためには、単にツールを入れるだけでなく、組織としての対応が不可欠です。能力向上に有意な影響を与える要因として、以下の項目が挙げられています。
- 経営者の強い意志: 経営者がAI活用を経営課題として明確に位置づけていること
- 業務プロセスの見直し: AI導入に合わせて、これまでの仕事のやり方そのものを変えること
- 研修とトレーニング: 社員に基本的な使い方の教育を行うこと
- 外部コンサルタントの助言: 自社にない専門知見を取り入れること
特に「経営者の強い意志」は、あらゆる用途において能力向上にポジティブな影響と品質の向上をもたらします。
特定業界における「爆発的効果」:インバウンドとコンテンツ産業
出典:「生成AIの普及とその効果推定」(国際大学GLOCOM)に基づき筆者作成
もし貴社がインバウンド(訪日外国人観光)関連やコンテンツ制作に携わっているなら、生成AIの導入を一日も早く進めるべきです。
- インバウンド産業: 翻訳、多言語でのメニュー作成、外国人客の嗜好分析など、用途を問わず時間短縮効果が4割に達するという驚異的なデータが出ています。顧客満足度の面でも、8割近い利用者が「効果あり」と回答しています。
- コンテンツ制作(アニメ・ゲーム): シナリオ制作やキャラクター設定、プログラミング補助などで高い効果を発揮しています。特筆すべきは、単なる効率化だけでなく、「月あたり2〜3回の新しい気づきや発見」をもたらしている点です。
これらの業界では、AIはもはや「補助」ではなく「競争力の源泉」となっています。
デジタル基盤の整備:クラウド利用がAI活用を加速させる
生成AIを導入する前の「前提条件」も明らかになりました。「クラウド利用」と「デジタル記録」を行っている企業ほど、生成AIを積極的に活用し、その恩恵を受けている傾向があります。特にクラウド利用の影響は大きく、未導入企業に比べてAI利用率が約10ポイントも高まっています。
これは、社内のデータがデジタル化され、AIがアクセスしやすい環境にあることが、活用を促すためと考えられます。AIを使いこなしたいなら、まずは社内の「紙文化」を脱却し、クラウドストレージやデジタルツールの導入を進める必要があります。
地方の中小企業にこそチャンスがある!!
「AIは東京の大企業のもの」という考えは誤解です。調査によれば、個人のAI利用能力においては都市部と地方で大きな差はありません。むしろ、個人の作業効率化という点では、地方の利用者の方が効果的に使いこなしている側面すらあります。
問題は「企業内での普及率」です。都市部の企業では周囲に使いこなしている同僚が多いため、組織的な普及が進みやすいのに対し、地方企業では個人のスキルが組織に波及しにくい現状があります。
中小企業へのアドバイス(地方企業): 貴社の社員の中には、すでに個人的にAIを使いこなしている「隠れた天才」がいるかもしれません。その個人のスキルを組織全体に広めるための「具体的な指示」と「経営者の後押し」があれば、地方からでも都市部の大企業に十分対抗できる生産性を手に入れることが可能です。
明日から取り組むべき3ステップ
この資料から導き出される、中小企業が取るべきアクションは以下の3つです。
- 「クラウド化・デジタル化」を急ぐ: AIが動くための「土壌」を作ること
- 経営者が「自ら」使い方を決め、指示する: 現場任せにせず、具体的な業務工程にAIを組み込むこと
- まずは「企画・マーケティング」から: 最も効果が出やすい分野で成功体験を作り、横展開すること
生成AIの活用において、早期に始めたユーザーほど作業能率の向上が著しいという「先行者利益」も確認されています。大規模な投資は必要ありません。まずは経営者自身が「AIを使って業務を変える」という強い意志を持つことから、すべてが始まります。
おわりに
今、我々は歴史的転換点にいます。時代の大きなうねりに取り残されないために、まずは小さな一歩から始めることをお勧めします。現業に忙殺され、時代の流れへのキャッチアップが先延ばしになっていないでしょうか?
本記事が、時代の流れに取り残されるのではないかと、なんとなく日々不安を抱えている中小企業経営者の方のヒントになれば幸いです。DX化やAI導入に関するご相談など補助金以外のご相談もお気軽にお声がけください。私たちは中小企業の皆さまの伴走パートナーとして、具体的な解決策をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

HKSパートナー 博士(工学)、中小企業診断士、G検定、E資格、認定経営革新等支援機関
ひとこと:補助金という言葉は聞いたことあるかもしれませんが、具体的にどう申請したらよいのか、どんな点に注意したらよいのか、まったく見当がつかない方も多くいらっしゃるかと思います。そんな方のために丁寧な説明を心がけたいと思います。AIツール販売の営業支援、顧客への導入支援なども行っています。




