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事業再構築補助金の加点だけでは勿体ない!「健康経営」を活用しよう!
前回の記事では第10回 事業再構築補助金の公募要領から新たに加点項目として導入された「ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点」
について解説いたしました。
今回は新たな加点項目のひとつである「健康経営優良法人の認定」について説明したいと思います。
今回お伝えしたいポイント1. 健康経営・健康経営優良法人とは何か?
2.健康経営優良法人に認定されるには?
3.健康経営にはどんなメリットがあるの?
健康経営って何だろう?
健康経営とは、従業員等の健康管理・増進を「コスト」ではなく「投資」と捉え、経営的な視点で考えて、戦略的に実行する新しい経営手法の考え方です。
かつて、従業員の健康管理は企業の「コスト」と捉えられてきました。医療費や福利厚生費など「抑えれば抑えるほどよい」という考え方です。ところが近年、出口の見えない深刻な人手不足が顕在化したことで、経営資源である「ヒト」の価値が再認識されるようになりました。従業員の健康は資産であり、健康管理を「投資」として捉え直す経営者が増加しています。「お金をかければ、それに見合ったリターンが得られる」という考え方によるものです。
それでは健康に「投資」することで期待できる「リターン」とはいったい何でしょうか?
健康経営の取り組みは、生産性向上・業績向上・従業員の活力向上・組織の活性化・企業価値向上・採用応募者数増加など様々なリターンをもたらします(資料を用いて後述します)。これらに加えて、労務管理や労働安全対策の視点から、法令遵守・リスクマネジメントの手法として活用できることも注目されている一因です。
健康経営とは、経営理念に基づき、従業員等の健康保持・増進に積極的に取り組むことで、従業員の活力・生産性の向上などを通して組織を活性化し、業績や企業のイメージ向上、採用増加へ繋げていく、これからの時代に合った経営手法といえます。
健康経営優良法人って何だろう?
「健康経営優良法人認定制度」とは、地域の健康課題に即した取り組みや、日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度です。
この認定により、健康経営に取り組む優良な法人が見える化されます。認定を受け、見える化された会社がステークホルダー(従業員、取引先、金融機関、就職を考える学生など)から社会的な評価を受けられる環境をつくることを目標としています。
従来、会社の価値は提供する商品やサービス、時価総額などで計られてきました。健康経営では「従業員等の健康状態、健康を維持向上させようとする姿勢」を会社の価値を計るための新たな尺度として掲げているところが画期的と考えられます。
我が国では少子高齢化が進み、労働人口が減少しています。ニーズ・市場が緩やかに減退する社会において、人(社員・経営者を含む)を大切にすることが企業のブランディングの一助となることは自明と考えられます。
「健康経営優良法人の認定」が加点対象となる補助金
「健康経営優良法人」の認定をうけることで、事業再構築補助金以外にも以下のような補助金において加点を受けることが可能です。
- 事業再構築補助金 第10回
- ものづくり補助金 第15次
- IT導入補助金 2023
- 事業承継・引継ぎ補助金 5次公募
補助金は「政策課題を解決するために、国による民間事業者への投資」とも考えられます。健康経営優良法人の認定を受けている会社の方が受けていない会社に比べ、経営資源である「ヒト」を大切に扱っていることが示されていることから、前者の方が補助事業の遂行能力・実現可能性が高いと判断され、加点が得られるものと考えられます。
健康経営優良法人の認定を受けるには?
それでは、健康経営優良法人の認定を受けるにはどのようにすればよいのでしょうか?事業再構築補助金の申請を思い立ってから、すぐに(1~2か月で)認定を受けられるのでしょうか?以下に手順をまとめます。2022年度の申請に関して、「健康経営優良法人の申請について」(経済産業省)やポータルサイト「ACTION!健康経営」もぜひご参照ください。
①健康宣言事業への参加
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②健康経営に取り組みます
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③自社の取り組み状況を確認、「ACTION!健康経営」ポータルサイトへ
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④認定委員会で審議、日本健康会議が「健康経営優良法人」を認定 |
認定までの流れは上の通りですが、認定のタイミングは年に1回しかありません(2023年は3月8日に発表)。また、申請ができるのも年に1回、限られた時期となります(2022年は8月22日から10月21日までの間)。
申請から認定まで半年かかり、認定されるタイミングも年に1回であることから、「補助金の申請を思い立ってから取りに行くような認定ではない」ということがお分かりいただけるかと思います。「じゃあ健康経営優良法人は取らなくてもいいか・・・」と思われた方も多いのではないでしょうか。
それでも健康経営に挑戦してほしい理由
先にお伝えしたとおり、健康経営優良法人に認定されるまでの道のりは長く、「補助金の加点」という視点ではあまり魅力がないかもしれません。しかし、ここまで多くの補助金の公募要領に記載されている加点要素は他にはなかなかありません。「賃金の引き上げ」などと同様、「健康経営」はそれだけ国が重要視している経営手法であると考えて間違いないでしょう。マンパワー不足や生産性向上を課題とされているようであれば、補助金申請の有無にかかわらず、取り入れておいて損はないと考えます。取得までの期間が長いこともあり「他社がなかなか手を出さないからこそ、挑戦してみる(=他者との差別化につながる)」という考え方もあるかと思います。
「健康経営」は今後登場する新たな国の支援策への申請や、金融機関からの資金調達などにおいて御社を有利なポジションへと導いてくれる重要な要素になる、と私は考えています。直近、数か月後に申請する補助金には間に合わないかもしれませんが、事業を安定的に継続・成長させるためにもぜひ挑戦してみていただきたいと考えています。
健康経営を行うことにより、どのようなメリットがあるかについては、経済産業省ヘルスケア産業課から興味深い資料(「健康経営の推進について」令和4年6月)が発表されています。
健康経営を行うメリット
離職率が減る
(「健康経営の推進について」令和4年6月 p.38)
健康経営を行う会社の離職率が全国平均に比べ、有意に低いことが読み取れます。離職が発生すると、残された従業員への負担の増加、採用や教育・研修などの時間・コストの発生など、企業のトータルコストが大きくなります。健康経営により、今いる従業員の健康に配慮することで、これらのコストやリスクを低減・回避することが可能です。
企業業績が上がる
(「健康経営の推進について」令和4年6月 p.41ー47)
こちらは上場企業の株価をもとに分析された資料です。健康経営の取組により、労働生産性、売上高営業利益率が改善・向上し、結果として企業価値の向上へと繋がっていることが分かります。
ステークホルダーの評価が高まる
(「健康経営の推進について」令和4年6月 p.49)
健康経営優良法人に認定された会社へ、認定後の変化や効果について質問したアンケート結果です。従業員、顧客、取引先へ好影響を与えており、特に中小企業においてはイメージアップへの貢献が期待できます。
労働市場で有利に活用できる(採用活動に有利!)
(「健康経営の推進について」令和4年6月 p.52)
就職活動を行う学生、就職活動を行う学生の親を対象に行われたアンケート結果です。知名度や給与水準などを抑え「従業員の健康や働き方に配慮している」という項目が就活生、就活生の親とも高いポイントを獲得しています。
現在の労働市場は、賃金もさることながら「健康や働き方」に感度が高い会社を求めています。「高い給料を払わないと人が来てくれない」「高い給料を払うと言っているのに人が来てくれない」とお悩みの社長さんがいらっしゃいましたら、ぜひ「健康経営」を検討してみてください。
おわりに
事業再構築補助金を申請するための事業計画書には「体制(人材、事務処理能力等)」「現在の自社の強み(人材)の活用」「従業員の解雇を行う場合」など、経営資源の「ヒト」に言及するところがいくつも登場します。健康経営の手法を用いて、「ヒト」をさらなる強みにすることで、再構築事業の成功を確かなものにしてみてはいかがでしょうか。
HKSでは、事業再構築補助金をはじめ、様々な補助金の申請・活用方法を提案しサポートを行っております。ぜひご相談ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
補助金活用支援会(HKS)パートナー、中小企業診断士、健康経営エキスパートアドバイザー。
ひとこと:経営者の皆様が本当にやりたい事業ができるよう、各種補助金を活用してお手伝いします。