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従業員を守るために ― カスハラ防止と東京都カスハラ防止推進事業

今回は「カスタマーハラスメントの現状」と「東京都で行われている取組みである令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業」についてご紹介いたします。

今回お伝えしたいポイント1. カスタマーハラスメントの現状

2. 中小企業におけるカスハラ対策実施状況

3. 東京都の取組み

4.令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業

近年、従業員が顧客から受ける悪質なクレームや暴言などの「カスタマーハラスメント」(以降:カスハラ)が、日本社会で深刻な問題として注目を集めています。
特に中小企業では人員や体制が限られる中で、現場の従業員が顧客対応に苦慮するケースも少なくありません。
本記事では、カスハラの現状と対策状況、東京都が行っているカスハラ防止事業についてご紹介いたします。

カスタマーハラスメントの現状

厚生労働省によると、カスハラとは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されております。

2024年に行われたパーソル総合研究所の調査レポートによると、カスハラの被害を経験した従業員の割合は35.5と一定数存在することがわかります。

 

出典:パーソル総合研究所_日本におけるカスタマーハラスメントの現在地

直近3年間におけるカスハラ被害の増減についても、増加したと答えた割合が32.6%と、減ったと答えた割合と比較して約2.5倍多くなっており、カスハラ被害が増加しているとみられます。

 

出典:パーソル総合研究所_日本におけるカスタマーハラスメントの現在地

また、帝国データバンク「カスタマーハラスメントに関する企業の意識調査」によると直近1年以内にカスハラなどの被害を受けた企業は小売業を筆頭に多くの業界に及んでいます。

出典:帝国データバンク_カスタマーハラスメントに関する企業の意識調査

さらに、東京商工リサーチ調べによると、カスハラを受けた結果、休職・退職が発生した割合が中小企業で13%となっており、10社に1社の割合でカスハラが原因で、休職・退職につながっているとみられます。

出典:東京商工リサーチ

中小企業におけるカスハラ対策実施状況

企業側のカスハラ対策の整備状況を見ると、多くの中小企業では未だ十分な対策が講じられていないのが実情です。東京商工リサーチが2024年に実施した企業アンケートによれば、全体の71.5%の企業が「特に対策を講じていない」と回答しました。規模別に見ると、中小企業では実に73.4%がカスハラ対策を「未実施」であり、何らかの対策を行っている企業は4社に1社程度(26.6%)にとどまります。一方、従業員数の多い大企業でも「未対策」は過半数の54.4%を占め、規模の大小にかかわらず多くの企業で対策が遅れている現状が浮き彫りになりました。

 

出典:東京商工リサーチ

以上のことから、近年カスハラが業種問わずに増加傾向にあるものの、対策が進んでいる企業はほとんどないのが現状です。さらに、カスハラにより従業員の休職・退職につながるケースもあるため、職場の心理的安全性を確保するためにも、カスハラ対策の必要性が高まっております

東京都の取組み

東京都では全国で初となる、カスタマー・ハラスメントの防止に関する施策の基本的な事項を定める「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を制定しました(令和7年4月1日施行)。
本条例の施行に伴い、「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」、およびマニュアルの共通事項や策定上のポイントを提示する、「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」を策定し、カスハラ防止に向けた動きが活発化しています。

令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業

公益財団法人 東京しごと財団では、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を企業へ浸透させるため、「令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業(以降:本事業)」が実施されています。
本事業は令和7年4月1日以降に、カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの作成に加え、カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組を実施した都内中小企業等に対し、奨励金が支給されます。

以下、本事業についてご紹介します。

本事業の詳細はこちら

■奨励金支給額

40万円

■実施期間・申請件数
実施期間は、令和7年6月30日(月)から令和8年3月31日(火)であり、令和7年度の申請受付は年3回、各回1,000件の予定です。
第1回は終了済み。第2回は9月頃の予定です。

■対象事業者の要件
主な要件は以下の通りです。
①常時雇用する従業員の数が300人以下の企業であること
②都内で事業を営む中小企業等または個人事業主であること
③都内の事業所で継続的に1年以上事業を行っていること
④都内の事業所で実質的に事業を行っていること
⑤本奨励金をすでに受給(受給予定も含む)していないこと

■取組要件
令和7年4月1日以降に、「カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの作成」に加え、「カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組」を実施したことが対象となります。

出典:令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業HPより

■申請の流れ

本事業は、国(デジタル庁)が提供する電子申請システム「jGrants」により申請を受け付けます。

*Jグランツを利用するには、法人共通認証基盤アカウント「GビズID」(gBizIDプライム)の取得が必要です。

出典:令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業HPより

さいごに

今回は「カスタマーハラスメントの現状」と「東京都で行われている取組みである令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業」についてご紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。

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また、令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業に関する無料相談も受け付けております。

今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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