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棚卸——「ただ数える」が、最強の経営改善だった。



棚卸から始まる利益改善のイメージ

決算前だけの“面倒な作業”と思われがちな棚卸。

しかし実際は、利益の確定と会社の信頼を支える、重要な確認作業です。

▍ この記事の3つのポイント
1
棚卸は、資産の実態を確かめるための重要な確認の場!
在庫が「本当にある」「正しい金額で計上されている」を確かめることが、正しい利益確定の第一歩です。
2
棚卸は、不正の発見と抑止にもつながる!
在庫の差異を丁寧に追うことで、横領・隠蔽などの不正を早期に発見し、「見られている」という抑止力を生みます。
3
棚卸で発見された差異こそ、改善の宝!
「どこでずれたか?」「次回までに何を変えるか?」——差異の原因を追うことが、現場改善と利益改善の直接のきっかけになります。

なぜ、棚卸はそんなに大事なのか

決算期や月末が近づくと、現場から「また棚卸か……」という声が聞こえてくることがあります。

生産や出荷を一時止めて行う棚卸は、現場にとって手間のかかる作業です。しかし、経営者の立場で見ると、棚卸は単なる作業ではありません。

会社の利益を正しく確定し、資産の実態を確かめるための、重要な確認の場です。

帳簿の上では利益が出ていても、その前提となる在庫が実際には存在しない、傷んで使えない、所在が曖昧——そんな状態であれば、その利益は実態を伴っていないことになります。

棚卸は、「会社にあるはずの財産が、本当にそこにあり、使える状態か」を確かめる機会です。


棚卸は「3つを一致させる」仕事

棚卸というと、「在庫を数えること」と思われがちです。もちろんそれは大事ですが、本当の意味での棚卸はそれだけでは終わりません。

「現物」「入出庫帳」「会計帳簿」の3つが一致しているか。ここまで確認して、初めて棚卸が完了します。

【図】棚卸は3つを一致させる仕事

箱

現 物
目視・計数で実態を確認

帳簿

入出庫帳
入庫・出庫の日次記録

グラフ

会計帳簿
金額・単価・評価額の管理
3つが一致して、初めて棚卸は完了する
棚卸は、現物・入出庫帳・会計帳簿の3つを照らし合わせて確認する作業です。

棚卸は、3段階で進めると整理しやすい

棚卸は次の3段階で考えると、現場でも共有しやすくなります。

段 階 何をするか 主な確認ポイント
1
現物を数える
現物を目視でカウント 「あるはず」ではなく実際に確認。場所・ロット・状態も記録する。
2
入出庫帳と照合する
記録と数量を突き合わせ 差異があれば必ず原因を追う。記録漏れ・転記ミスを確認する。
3
会計帳簿と照合する
金額・単価を確認 評価損の発生有無、不良品・陳腐化品の金額見直しまで確認する。
「数える→照合する→金額まで確認する」の3段階を事前に共有しておくと、現場のミスが減ります。

「棚卸資産はこれだけあります」と説明するための4つの確認

株主や金融機関など外部の関係者に対して説明するためには、次の4点を押さえておく必要があります。

【図】棚卸資産の4つの確認ポイント
01
実在性
帳簿にある在庫が、現場に本当に実在するか?
帳簿に載っていても、紛失・使用済みになっていることがある。
02
網羅性
現場の在庫が、漏れなく帳簿に計上されているか?
計上漏れがあると、在庫も利益も正確に見えなくなる。
03
評価の妥当性
在庫の金額は、実態に合っているか?
古い在庫・不良品・陳腐化品を定価のまま計上していないかを確認。
04
所有権の確認
その在庫は、本当に自社のものか?
預り品・委託品・取引先への預け在庫は、自社在庫と明確に区別する。
「あるか」「漏れていないか」「金額は妥当か」「自社のものか」——この4点を押さえるだけで、棚卸の質は大きく変わります。

棚卸の現場では、エラーや見落としが起こりやすい

棚卸の現場では、どうしても次のようなミスや見落としが発生しやすくなります。

数え間違い
記入・転記ミス
別倉庫や預け在庫の数え漏れ
良品と不良品の混在
入出庫記録との不一致

こうしたエラーは、事前の準備と確認方法の標準化によってかなり減らすことができます。

大切なのは、「差が出ないこと」ではなく、「差が出たときに必ず理由を確認すること」です。そこに、会社の管理水準の差が表れます。

棚卸は、不正の発見と抑止にもつながる

棚卸には、もう一つ重要な役割があります。それは、不正の発見と抑止です。

売上の隠蔽や横領など、多くの不正はどこかで帳簿のつじつまを合わせようとするときに、在庫の数字へしわ寄せが出やすい構造になっています。

つまり、棚卸を丁寧に行い、差異の原因をきちんと確認することは、不正の早期発見につながります。さらに、「棚卸では差異の理由まで確認される」「経営者も目を通している」という事実が現場に伝われば、不正の抑止力にもなります。

だからこそ、棚卸は現場任せにせず、社長自身が関心を持って関与することに大きな意味があります。


社長が押さえておきたい4つのポイント
① 準備が8割
在庫場所の事前整理
本社・工場・内部倉庫・外部倉庫・取引先への預け在庫など、どこに在庫があるかを事前に整理することが基本です。
② 重点管理
重点品目は二重チェック
業務上欠かせないもの、金額の大きいもの、売却しやすいもの、再入手に時間がかかるものは重点的に確認します。
③ 状態・金額
「数量」だけでなく質も見る
数量が合っていても、実際に使えるか・売れるか・計上金額は妥当かまで確認しなければ、正しい棚卸とはいえません。
④ 抜き打ち
社長の確認は効果大
社長がときどき現場を見るだけで、現場の緊張感は大きく変わります。ミスの防止にも、不正の抑止にも直結します。

社長が現場を見ること自体に意味がある

上場企業であれば、監査役・監査法人・内部監査など複数の目で棚卸を確認します。中小企業でそこまでの体制を整えるのは難しくても、社長自身がときどき棚卸に立ち会うことは、棚卸の精度をあげ不正防止につながる有効な手段です。

📋 社長の抜き打ちチェックリスト   現場確認の5項目
棚札の番号に飛びがないか
重点管理品の実数は帳簿と一致しているか
長期滞留品(○ヶ月以上動きなし)が放置されていないか
カウント完了後に無断で在庫が動いていないか
不良品・返品品が正常品と混在していないか
社長が現場を見ること自体が、「棚卸を会社として重視している」という強いメッセージになります。
こうした確認をするだけでも、現場の意識は確実に変わります。

おわりに

現物・入出庫帳・会計帳簿の3つがいつもぴったり一致している——。実際には、それは決して簡単なことではありません。

だからこそ、棚卸で差異が出たときに大切なのは、「今回も仕方ない」で終わらせないことです。

なぜ差が出たのか。どこでずれたのか。次回までに何を変えるのか。

こうした確認と改善を積み重ねることで、棚卸は単なる確認作業ではなく、現場改善と利益改善のきっかけになります。

棚卸は、会社の管理レベルを映す鏡です。ぜひ次の棚卸を、「ただ数える日」ではなく、「会社の実力を点検する日」として活用してください。

本記事が、決算や内部統制など会社のルールについて、「うちは大丈夫かな」と不安を抱えている中小企業経営者の方のヒントになれば幸いです。月次決算の導入、コスト意識の社内浸透など管理実務のご相談など補助金以外のご相談もお気軽にお声がけください。私たちは中小企業の皆さまの伴走パートナーとして、具体的な解決策をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。

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今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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