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棚卸——「ただ数える」が、最強の経営改善だった。
決算前だけの“面倒な作業”と思われがちな棚卸。
しかし実際は、利益の確定と会社の信頼を支える、重要な確認作業です。
決算期や月末が近づくと、現場から「また棚卸か……」という声が聞こえてくることがあります。
生産や出荷を一時止めて行う棚卸は、現場にとって手間のかかる作業です。しかし、経営者の立場で見ると、棚卸は単なる作業ではありません。
会社の利益を正しく確定し、資産の実態を確かめるための、重要な確認の場です。
帳簿の上では利益が出ていても、その前提となる在庫が実際には存在しない、傷んで使えない、所在が曖昧——そんな状態であれば、その利益は実態を伴っていないことになります。
棚卸は、「会社にあるはずの財産が、本当にそこにあり、使える状態か」を確かめる機会です。
棚卸というと、「在庫を数えること」と思われがちです。もちろんそれは大事ですが、本当の意味での棚卸はそれだけでは終わりません。
「現物」「入出庫帳」「会計帳簿」の3つが一致しているか。ここまで確認して、初めて棚卸が完了します。
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現 物
目視・計数で実態を確認
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⇔ |
入出庫帳
入庫・出庫の日次記録
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⇔ |
会計帳簿
金額・単価・評価額の管理
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棚卸は次の3段階で考えると、現場でも共有しやすくなります。
| 段 階 | 何をするか | 主な確認ポイント |
|---|---|---|
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1
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現物を目視でカウント | 「あるはず」ではなく実際に確認。場所・ロット・状態も記録する。 |
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2
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記録と数量を突き合わせ | 差異があれば必ず原因を追う。記録漏れ・転記ミスを確認する。 |
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3
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金額・単価を確認 | 評価損の発生有無、不良品・陳腐化品の金額見直しまで確認する。 |
株主や金融機関など外部の関係者に対して説明するためには、次の4点を押さえておく必要があります。
棚卸の現場では、どうしても次のようなミスや見落としが発生しやすくなります。
| — | 数え間違い |
| — | 記入・転記ミス |
| — | 別倉庫や預け在庫の数え漏れ |
| — | 良品と不良品の混在 |
| — | 入出庫記録との不一致 |
こうしたエラーは、事前の準備と確認方法の標準化によってかなり減らすことができます。
棚卸には、もう一つ重要な役割があります。それは、不正の発見と抑止です。
売上の隠蔽や横領など、多くの不正はどこかで帳簿のつじつまを合わせようとするときに、在庫の数字へしわ寄せが出やすい構造になっています。
つまり、棚卸を丁寧に行い、差異の原因をきちんと確認することは、不正の早期発見につながります。さらに、「棚卸では差異の理由まで確認される」「経営者も目を通している」という事実が現場に伝われば、不正の抑止力にもなります。
だからこそ、棚卸は現場任せにせず、社長自身が関心を持って関与することに大きな意味があります。
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① 準備が8割
在庫場所の事前整理
本社・工場・内部倉庫・外部倉庫・取引先への預け在庫など、どこに在庫があるかを事前に整理することが基本です。
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② 重点管理
重点品目は二重チェック
業務上欠かせないもの、金額の大きいもの、売却しやすいもの、再入手に時間がかかるものは重点的に確認します。
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③ 状態・金額
「数量」だけでなく質も見る
数量が合っていても、実際に使えるか・売れるか・計上金額は妥当かまで確認しなければ、正しい棚卸とはいえません。
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④ 抜き打ち
社長の確認は効果大
社長がときどき現場を見るだけで、現場の緊張感は大きく変わります。ミスの防止にも、不正の抑止にも直結します。
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上場企業であれば、監査役・監査法人・内部監査など複数の目で棚卸を確認します。中小企業でそこまでの体制を整えるのは難しくても、社長自身がときどき棚卸に立ち会うことは、棚卸の精度をあげ不正防止につながる有効な手段です。
| 📋 社長の抜き打ちチェックリスト 現場確認の5項目 | |
| 棚札の番号に飛びがないか | |
| 重点管理品の実数は帳簿と一致しているか | |
| 長期滞留品(○ヶ月以上動きなし)が放置されていないか | |
| カウント完了後に無断で在庫が動いていないか | |
| 不良品・返品品が正常品と混在していないか | |
| 社長が現場を見ること自体が、「棚卸を会社として重視している」という強いメッセージになります。 | |
現物・入出庫帳・会計帳簿の3つがいつもぴったり一致している——。実際には、それは決して簡単なことではありません。
だからこそ、棚卸で差異が出たときに大切なのは、「今回も仕方ない」で終わらせないことです。
なぜ差が出たのか。どこでずれたのか。次回までに何を変えるのか。
こうした確認と改善を積み重ねることで、棚卸は単なる確認作業ではなく、現場改善と利益改善のきっかけになります。
本記事が、決算や内部統制など会社のルールについて、「うちは大丈夫かな」と不安を抱えている中小企業経営者の方のヒントになれば幸いです。月次決算の導入、コスト意識の社内浸透など管理実務のご相談など補助金以外のご相談もお気軽にお声がけください。私たちは中小企業の皆さまの伴走パートナーとして、具体的な解決策をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

舘 俊輔(たち しゅんすけ)
経営者に「それ、早く言ってよ」と思わせない——再生支援の現場でそう誓ったことが、創業の原点。月次決算・内部統制・事業計画を軸に、知っていれば防げた問題を減らす支援を行っている。オンライン講座・プロジェクト型コンサルを中小企業が導入しやすい形で、経営管理の実務知を提供。2026年6月より、HKSにて中小企業診断士向け「月次決算の仕組構築サービス」講座を開講予定。