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我慢の経営から選ばれる経営へ:賃上げ・コスト高騰時代を乗り切る価格転嫁の処方箋

「原材料費や燃料費の高騰が止まらない…」

「人手不足を防ぐために賃上げをしたいが、原資がない…」

「長年の取引先に値上げを切り出したら、仕事を切られるのではないか…」

今、全国の中小企業経営者からこうした悲鳴にも似た悩みが寄せられています。

長年続いていたデフレマインドからインフレ局面へと社会構造がシフトする中、自社の努力だけでコスト上昇分を吸収する我慢の経営は、すでに限界を迎えています。

価格転嫁は、単なる取引先へのお願いや一方的な値上げではありません。従業員の雇用を守り、自社の持続可能性を高め、ひいては日本のサプライチェーン全体を維持するために必要な戦略です。

本記事では、価格転嫁に向けたマインド、公的制度やそれを支援するツール、相談できる公的機関等について解説します。

なお、価格転嫁を数字の側面で解説したこちらの記事もぜひご一読ください。

今回お伝えしたいポイント1. コスト上昇分のうち価格転嫁できている割合(価格転嫁率)は約5割。つまり、未だコスト上昇分の約半分は価格に反映できていない。

2.国・自治体が様々な制度・ツールで後押し。是非ともご活用を!

3.困ったときは公的機関や中小企業診断士へご相談を!

数字で見る現実:なぜ今、価格転嫁が「経営課題の筆頭」なのか?

まず、中小企業を取り巻く「価格転嫁の現在地」をデータで確認してみましょう。

中小企業庁が実施している「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査(2026年3月)によると、中小企業の価格転嫁率(コスト上昇分をどれだけ価格に反映できたか)は全体で約5割を超えたところです。

つまり、コストが100円上がっても、そのうち半分弱は、いわば自社の持ち出しで耐えているのが実態といえます。

出所:中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果

特に深刻なのが労務費(人件費)やエネルギー費の転嫁です。コスト要素別の状況を見ると、労務費の価格転嫁率は原材料費の転嫁率55.7%を下回る50.0%、エネルギー費は48.9%で、より交渉の難易度が高いことがうかがえます。

出所:中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果」

しかし、人手不足が深刻化する中で賃上げができなければ、従業員の離職や採用難を招き、事業の継続そのものが危うくなります。自社努力の限界を超えたコスト増に対し、正当な価格転嫁を行うことは、もはや避けて通れない経営課題です。また、中東情勢の変化等によるエネルギー費の上昇はコスト圧迫要因になっており、これを自助努力でカバーすることには限界があるといえます。

制度やツールの紹介

このように、コストを適正に転嫁していくことは非常に重要です。しかしながら、価格転嫁の交渉を自社が自力で行っていくことは簡単ではありません。

そこで、価格転嫁の推進に活用できる様々な制度やツールがありますので紹介いたします。

パートナーシップ構築宣言

「パートナーシップ構築宣言」とは?

サプライチェーン全体の共存共栄を目指し、大企業と中小企業が対等な立場での適正取引(下請取引の適正化や価格転嫁)を行うことを、企業のトップが公式に宣言・公表する制度です。

単なるポーズではない!経営者が享受できる実利

「宣言しても、ポーズだけで終わるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、中小企業経営者にとってこの宣言には見逃せない実用的なメリットがあります。それが、各種公的補助金における加点や評価です。以下の補助金では、この宣言が加点項目や審査上の評価要素になっています。

補助金制度名 対象・公募回 要件・注意点など

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

(旧ものづくり補助金・旧新事業進出補助金が統合)

第1回公募

政策加点

・申請締め切り時点で公表済みであること。

・令和8年(2026年)1月1日に更新された新ひな形による宣言が加点要件

中小企業成長加速化補助金 第3回公募 ・審査項目のうち、波及効果の例として記載あり。(直接、加点との記載はありません)

他の補助金も加点対象になるものがあります。詳しくはパートナーシップ構築宣言のポータルサイトをご覧ください。

なお、現在公募が行われている新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、「令和8年1月 1 日に更新されたひな形を利用して宣言を公表している事業者」であることなどが要件になっているため、過去に宣言を行った場合も、改めて加点項目として有効か、ご確認されることをお勧めします。

パートナーシップ構築宣言について、詳しく解説した記事はこちらです。併せてご覧ください。

 

各種公的機関によるツール

取引先に対し、「とにかく大変なんです」では、相手も社内を説得が難しいと思います。そこに、客観的な事実と信頼できる公的データを活用すると、説得力が増すのではないでしょうか。

そこで、活用できる国や自治体が提供している無料のツールやデータを紹介いたします。

①中小企業庁「適正取引支援サイト」

中小企業庁が運営する「適正取引支援サイト」は、単なる情報閲覧にとどまらず、自社の状況に合わせた学びや相談ができる公的ポータルサイトです。

・受講料無料の価格交渉講習会:対面(リアル)およびオンラインで開催される実践的な講習会です。交渉の切り出し方や想定問答の準備など、営業現場で即役に立つノウハウを無料で学べます。

・自分のペースで学べるeラーニング:「業務の合間に効率よく学びたい」という経営者や社員向けに、価格交渉や下請法の基礎知識をいつでも学べる無料動画コンテンツが用意されています。

・自社に近い取り組み事例の検索:「他社はどうやって交渉を成功させているのか」を業種や企業規模ごとに検索可能。自社と近い状況の成功事例を参考にすることで、具体的な交渉イメージが湧きます。

・取引かけこみ寺:取引上のトラブルや買いたたきなどの悩みに対し、専門の相談員や弁護士に無料で相談できる公的な相談窓口(電話・オンライン・対面)です。

②中小企業庁「価格交渉・転嫁の支援ツール」

中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブックや中小機構「価格転嫁検討ツール」、「儲かる経営 キヅク君」など、国が提供する様々な活用ツールが紹介されています。

価格交渉の根拠材料として有用な資料が多数紹介されていますので、きっとお役に立つものがあると思います。

③自治体等の実践的ツール(例:東京商工会議所「価格転嫁ナビ」や埼玉県の「価格交渉支援ツール」)

自治体や公的支援機関でも、実践的なツールが提供されています。

例えば、東京商工会議所の価格転嫁ナビでは、マンガでわかる「はじめての価格転嫁」など、役立つツールが掲載されています。

出所:日本商工会議所ウェブサイト(PDFで開きます)

埼玉県が公式Webサイトで無料配布している価格交渉支援ツールや収支計画シミュレーターは、全国の事業者にとっても非常に参考になる優れものです。

価格交渉支援ツールは、表計算ソフトを使用し、例えば材料価格の推移を示す資料を簡易に作成でき、実態を見える化できます。収支計画シミュレーターは、適切な価格転嫁をしない場合、今後の収益にどの程度影響を与えるのかを分析できるツールです。

【収支計画シミュレーターの資料イメージ】

出所:埼玉県ウェブサイト「価格交渉に役立つ各種支援ツール」

ツールの活用は、埼玉県の企業に限らず可能です。

 

公的窓口や相談先

①全国47都道府県のよろず支援拠点(価格転嫁サポート窓口)

国が設置している無料の経営相談窓口「よろず支援拠点」には、2023年7月から全国47都道府県に価格転嫁サポート窓口が設置されています。

ここには中小企業診断士をはじめとする専門家が常駐しており、様々な側面の支援を受けることができます。

中小企業庁「ミラサポplus」でよろず支援拠点の価格転嫁サポートに関する利用方法等について、詳しく解説されています。ぜひご覧ください。

 

②中小企業診断士をパートナーに

公的窓口の活用とあわせておすすめしたいのが、経営支援の国家資格者である「中小企業診断士」への個別相談です。

中小企業診断士は企業の経営全般(財務・営業・労務・取引構造)を分析した上で、貴社に提案を行うことができます。

公的な制度やツールをどう自社に落とし込むか迷った際は、中小企業診断士をはじめとする専門家に直接相談し、自社の参謀として伴走してもらうことも強力な選択肢となります。

中小企業診断士の活用については、こちらの記事もご覧ください。

さいごに

今回は価格転嫁に関する制度やツール、各種窓口を紹介いたしました。いかがでしたでしょうか?

HKSでは、中小企業診断士が、価格転嫁を含め、様々な中小事業者様の悩みに応えるサービスを提供しています。無料相談もございます。

ご興味がある事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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