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結局いつもらえるの? 補助金を受け取るまでの期間にご用心!

有効な資金繰りツールである一方、制度が複雑で、仕組みをすんなり理解しづらいのが補助金。初めて補助金の利用を検討される事業者様からは、しばしば下記のようなご質問をいただきます。

・補助金って、結局いつもらえるの?

・採択されれば、すぐ受け取れる?

企業支援が目的の補助金だから、事業実施時にすぐもらえるだろうとお考えになるのも、無理はありません。しかし、実際には、採択から補助金の支払いまで、1年以上を要するケースが存在します。この時間差をきちんと理解していないと、資金調達のために補助金を活用したのに、「交付待ち」の期間に資金がひっ迫するという本末転倒な事態を招くおそれがあります

この記事では、結局補助金はいつもらえるのか、という素朴な疑問にお答えするとともに、そこから生まれる補助金利用時の留意点についても解説します。

 

補助金を受け取るまでのフロー(事業再構築補助金を例に)

補助金のホームページには公募要領や手引きといった書類が公開されており、多くの場合、申請から交付までのフロー図が掲載されています。

ここでは、3月24日(木)に第5回公募が締め切られた事業再構築補助金を例に、補助金を受け取るまでの間にどのようなイベントが控えているのか見ていきます。

(令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 第5回公募要領 21ページより一部抜粋)
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様々な手続きが掲載されていますが、赤枠で囲った「採択通知」「交付決定」「確定検査」が、特に大切なイベントです

 

採択通知
事業計画書とともに補助金の申請を行い、補助金事務局から補助金を受け取る事業者として選ばれること。この時点で補助金を受け取る権利は獲得できますが、もらえる金額は確定していません。

交付決定
採択通知受領後、補助金の交付申請を行い、補助金事務局から正式に事業経費を認められること。ここで交付決定通知を受け取り、ひとまず、受け取れる補助金の額が確定します。

確定検査(交付額の確定)
申請した事業の終了後、事務局が申請内容どおりに補助事業が実施され、経費が適正に支出されたかを確認する手続き。「補助事業完了報告書」や支払の証拠を提出し、検査に合格したら晴れて正式に補助金を受給できます。

 

上記の解説の内、下線を引いた2箇所の記述がとても重要です。つまり、補助金は事業終了後の「後払い」。採択や交付決定のタイミングではなく、計画していた事業をすべて終え事務局のお墨付きをもらってやっと金銭を受け取れるのです

補助金を受け取るまでにかかる期間(事業再構築補助金を例に)

補助金は「後払い」であるということを、フロー図とともに見てきました。では、具体的に、どの程度の期間が必要なのでしょうか。

補助金事務局に申請した事業の実施や実績報告には、期限が設けられています。例えば、前項で例示した事業再構築補助金の場合、大まかに下図のようなスケジュールが決まっています。

 

(経済産業省:事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促事業) より一部抜粋)
※画像クリックで拡大

 

「採択」から「実績報告」までの期間(補助事業期間)は、最長で14ヶ月間と定められています。
さらに、事務局による確定検査にも最低1ヶ月程度の期間が必要となるため、「採択」から補助金受領までは最大で15ヶ月、実に1年3ヶ月近い期間を要する可能性があります

補助金の種類や公募回によって期間は異なりますが、採択や交付決定から補助金受領までに時間差があるのは、他の制度(ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金など)も同じです。基本的に、事業期間が長ければ長いほど、実際に補助金をもらえる時期は遅めになると考えてよいでしょう。

なお、事業再構築補助金やものづくり補助金には、補助金額の一部を先払いしてもらえる概算払い請求という制度があります。一刻も早く資金を調達したい時に有用な仕組みですが、その場合もやはり、支払済みの経費が対象であり、実績報告と同等の書類提出が必要である点にご留意下さい(※)。
※ 本記事公開時点の取り扱いであり、年度・公募回によって変更となる可能性があります。

補助金を受け取るまでの期間に潜むリスク

事業再構築補助金を例に、補助金の採択・交付決定から補助金受領までに、1年3ヶ月近い期間を要する可能性があることを見てきました。

これを踏まえ、補助金の利用を検討される事業者様が、補助金を受け取るまでの期間中、留意しておくべき2つのリスクについてご説明します。

(1)事業期間中の資金繰り

補助金は「後払い」なので、事業を実施するための資金調達、補助金を受領するまでの間の資金繰りが、事業計画策定における重要課題となります。

特に、期間が約1年にわたるような大規模な事業では、申請段階から金融機関等と相談し、資金調達と手元資金推移に目途を立てておくことが重要となります。

せっかく採択されても、肝心の資金調達をスムーズに行えなければ、計画が行き詰まってしまう可能性があります。事業計画の現実性を高める上でも大切な視点なので、入念な準備が必要です。

(2)証憑書類の長期・適切な管理

補助金を使った事業は、中間検査・実績報告など、補助金を受け取るまでの間に実施状況のチェックを受けます。また、補助金受領後も引き続き、会計検査院等の検査を受ける可能性が残ります。

そこで重要になるのが、証憑書類の管理です。見積もり、契約、請求、支払いに至るまで、資金の流れを子細に追える書類を保管する必要があります。事業期間が長期間で、関係者・項目が多岐にわたる事業であっても、1つひとつの支払いに対する証憑を整理整頓し、「いつでも」「正確に」参照できることが必要です。

仮に証憑書類に不足があった場合、最悪の場合、補助金の交付決定自体が取り消される事態になりかねません。手間はかかりますが、証憑書類の適切な管理は補助金利用の大前提です。

おわりに

補助金は、返済不要の資金をテコに新規事業や大胆な施策を進められるメリットがある一方、補助金額相当の資金繰りが先行して生じるデメリットも併せ持ちます。

ご利用の際に大切なのは、正確な情報収集と現実的な計画策定です。しかし、補助金の制度設計や要件を正しく理解し、それらを満たす事業計画書を作成するのは、簡単ではありません。

補助金活用の専門家であるHKSは、事業者様のお悩み・疑問にお応えし、補助金の経営活用を後押し致します。制度があるのは知っているけど、使い方がよくわからない。このようなお悩みをお持ちの事業者様は、どうぞお気軽にご相談下さい。どのような疑問でも結構です。

 

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  1. 2022年 8月 19日
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