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事業再構築補助金(令和4年度第二次補正予算)の概要をスッキリ解説!
令和4年度第2次補正予算の成立に伴う、事業再構築補助金の継続については、昨年11月20日のHKSブログでお伝えしました。
12月に事業再構築補助金の概要を説明する資料が、経済産業省から公表されていますので、その内容を解説します。
(詳細はオリジナル資料をご覧ください。また、最終的な内容、要件は公募要領に記載されたものになりますので、応募に際しては公募要領をご確認ください。)
(経済産業省の資料はこちら。)
※本ブログでは、図表はクリックすると大きく拡大できます。
新たな事業再構築補助金は、政策誘導型に変身
3年目となる新たな事業再構築補助金の予算額は、5,800億円。
今回もかなりの予算額が準備されました。
下の図表が、経産省の資料に掲載されている令和4年度第二次補正予算(=第10回以降)の事業再構築補助金の全体像ですが、第9回までとは様相がかなり変わります。
コロナや物価高騰で打撃を受け、業況が厳しい事業者向けの枠もありますが、軸足は成長や賃上げに置かれています。
また、斜陽産業に属する事業者が成長産業で事業再構築を行うことの後押しをする枠(産業構造転換枠)や、製造業の国内回帰を促す枠(サプライチェーン強靭化枠)が新設され、政策の目指す方向へ事業者を誘導する色彩が濃いものとなっています。
次の図表は、各枠の補助内容や、事業者の置かれた状況の要件、取組む事業の要件について、第10回以降と第9回までを、それぞれまとめたものです。
全体的な要点は、以下のとおりです。
◆第9回まではグリーン成長枠を除いて、業況が厳しいこと、つまり、売上高の減少が要件になっていました。第10回以降は、物価高騰対策・回復再生応援枠、最低賃金枠を除いて、売上高の減少は求められていません。
◆一方、第10回以降の成長枠と、グリーン成長枠、サプライチェーン強靭化枠では、給与支給総額の増加が要件となりました。
◆第10回以降は、事業者が置かれた状況や、事業者が取り組む事業の範囲を、事務局が指定する枠が多くなっています(公募開始時に事務局ホームページで公開予定)。成長枠やサプライチェーン強靭化枠では、原則「市場が10%以上拡大する業種・業態」に、取り組む事業が属していなければなりません。
◆第10回の補助上限額と補助率は総じて第9回よりも低下傾向です。ただ、成長枠、グリーン成長枠にはインセンティブが用意されており、中小企業等から卒業するか、大規模な賃上げを実現するのであれば、補助率や補助上限額を上げられる仕組みになっています。
◆補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%以上の増加(または従業員1人あたり付加価値額の年率平均3.0~5.0%以上の増加)が必須です。増加比率は申請する枠により異なります。
では、枠ごとの補助内容と要件をみていきましょう。
成長枠(旧通常枠)の創設
《補助金のねらい》成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者を支援。
第9回までの通常枠が見直され、成長枠に生まれ変わりました。売上高の減少要件は撤廃され、給与支給総額の増加要件が付くなど、補助金の性格が変更になっています。
資料には書かれていませんが、給与支給総額の増加要件が実際に達成できなかった場合は、他の補助金と同様、補助金を返還する必要があるものと予想されます。
取り組む事業は、「過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属している」必要があります。
対象となる業種・業態は、事務局で指定し、公募開始時に事務局ホームページで公開の予定です。
それまでは、事業者の皆さんが考える事業の構想が、要件を満たすかどうか、分からないことになります。
補助率は、中小企業の場合、2/3から1/2に引き下げられました。
しかし、大規模な賃上げの場合は、補助率の引上げができます(後段で解説)。また、上乗せ枠の同時応募も可能です(これも、後段で解説)。
グリーン成長枠の拡充
《補助金のねらい》グリーン分野での事業再構築を通じて、高い成長を目指す事業者への支援を継続。
グリーン成長枠は、経済産業省のグリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題解決に資する取組が対象です。
第10回からは、これが「エントリー」と「スタンダード」の2種類に分けられました。
(経済産業省の「グリーン成長戦略」の解説ページはこちら)
第9回まであったグリーン成長枠はグリーン成長枠・スタンダードとなりました。取り組む事業分野の研究開発・技術開発または人材育成の要件と、付加価値額増加要件を緩和して創設されたのが、グリーン成長枠・エントリーです。
成長枠同様、大規模な賃上げの場合は、補助率の引上げがあります(後段で解説)。
また、上乗せ枠の同時応募も可能です(これも、後段で解説)。
大幅賃上げ・規模拡大のインセンティブ
《補助金のねらい》
○成長枠又はグリーン成長枠に申請する事業者に対し、上乗せ枠として、卒業促進枠・大規模賃金引上促進枠を設ける。
○大幅な賃上げを行う場合、成長枠・グリーン成長枠の補助率を引上げる。
成長枠とグリーン成長枠には、補助金額の上乗せ枠が用意されています。(上乗せ枠の補助率は、申請のもとになる枠と同じ)
大規模賃金引上促進枠では、給与支給総額に加えて、事業上内最低賃金を一定以上に引上げ、従業員数も増やすことが求められます。
注意が必要なのは、補助金の支払時期です。
要件達成後に実績報告書を提出し、事務局が確認してから補助金が支払われますので、資金計画上、注意が必要です。
成長枠とグリーン成長枠は、早期に(=補助事業期間内)に給与支給総額を増加させ、事業上内最低賃金を一定以上に引上げることによる補助率の引上げが、インセンティブとして設けられています。
ただ、このインセンティブには返還の条件が、経済産業省の概要資料に記載されています。
「給与支給総額を早めに引き上げた場合も、事業終了後の年率平均2%引上げの条件が免除されるわけではない」というのが、その意味合いと取れますが、詳細は公募要領を待つ必要がありそうです。
産業構造転換枠の創設
《補助金のねらい》国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者に対し、補助率を引き上げる等により、重点的に支援。
コロナや物価高騰に関係なく、属する業種・業態や地域産業が構造的に厳しい状況にある事業者への補助金枠が、産業構造転換枠として設けられました。
「市場規模が10%以上縮小する衰退産業に属している事業者」か、「中心となる大企業が撤退した企業城下町の市町村で、その大企業と取引があった事業者」が対象となっています。
対象となる業種・業態や市町村は、業界団体や自治体の申請に基づき事務局が決めることになっています。
事業者の皆さんが、この枠で申請できるかどうかは、公募開始まで待たねばなりません。
サプライチェーン強靭化枠の創設
《補助金のねらい》海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化、および地域産業の活性化に取り組む事業者(製造業)を対象として支援。
成長産業に関連する部品等の製造に関して、製造拠点の国内回帰の促進をねらった補助金枠として、サプライチェーン強靭化枠が設けられました。
ただ、「製造拠点を国内回帰すること」にどのような取組が含まれるのか、事業再構築の各類型で求められる「製品等の新規性要件」をどう捉えるのか等、分からないことが多いため、詳細は公募要領を待つ必要がありそうです。
(事業再構築の各類型の要件に関しては、こちらを参照してください)
業況が厳しい事業者への支援
《補助金のねらい》
○コロナや物価高等により依然として業況が厳しい事業者に対して、支援を継続。
○第9回公募までの、回復・再生応援枠と緊急対策枠を統合し、新たに「物価高騰対策・回復再生応援枠」として措置。
従来の事業再構築補助金の流れを組み、直面する業況の厳しさへの対応を支援するのが、物価高騰対策・回復再生応援枠です。
売上高の減少、または再生計画等の提出が、事業者が置かれた状況の要件となっています。
中小企業の場合、補助率が、補助金額中の低額部分が3/4、高額部分が2/3であるのは第9回までと同様です。
《補助金のねらい》最低賃金引上げの影響を強く受ける事業者を引き続き強力に支援すべく、最低賃金枠を継続する。
最低賃金枠は、要件や補助上限額・補助率ともそのまま継続になっています。
売上高の減少と、全従業員に占める最低賃金に近い従業員の割合が多いことが要件です。
複数回採択、事前着手制度の変更
複数回採択に関する規定、事前着手制度に関する規定が従来から変更になっていますので、ご注意ください。
【事前着手制度に関して】
成長枠では、事前着手制度は使えませんので、ご注意ください。
スケジュール
1月中下旬公募開始、3月中下旬応募締切で第9回の公募が始まりますが、これは第8回までと同様の内容です。
今回ご説明した、令和4年度第二次補正予算に基づく補助金は、令和5年3月下旬頃公募開始予定で、令和5年度末までに3回程度の公募が予定されています。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
令和4年度第二次補正予算のもと、事業再構築補助金は補助対象事業者の範囲が公募開始まではっきりしない補助枠も多く、初回は取り組み難い面があると思います。
ただ、新分野で事業再構築を実行し、事業が生み出す付加価値を増加させるという、補助金の基本構造は変わっていません。
できる準備は早めにしましょう。
補助金活用支援会(HKS)は、中小企業診断士が集う認定経営革新等支援機関として、これまも事業者のみなさんに寄り添い、事業再構築補助金の事業計画の策定を支援して参りました。
第9回公募が間もなく開始されますが、第9回に挑戦するのか、第10回をねらうのか、お悩みの事業者の皆さんも多いのではないでしょうか。
そのようなお悩みも含め、事業再構築補助金のご利用でお聞きになりたい点がありましたら、お気軽にお声をおかけください。
HKSパートナー、中小企業診断士
ひとこと:HKSブログを通じて、補助金の勘どころを分かりやすくお伝えして参ります!