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小規模事業者持続化補助金「賃金引上げ枠」活用のポイントを解説します

2023年も2月に入り、労働組合による春闘(春季労使交渉)が始まっています。

日本を代表するトヨタ自動車労働組合では、足元のエネルギー価格・物価高騰を背景に、賃金改善を要求しており、3年ぶりのベースアップを求める方針です。対象は正社員はもちろんのこと、期間従業員やパート従業員の水準底上げも要求する方針であり、日本を代表する企業の動向は日本全体に影響を与えるでしょう。

さらに、念頭の1月5日に岸田首相は、経団連など経済3団体の新年祝賀会で2023年春闘(春季労使交渉)に関し、「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と要請し、「能力に見合った賃上げこそが企業の競争力に直結する」と訴えています。

こうした背景から、従業員の賃金引上げは中小企業の皆様にとっても、大きな課題と考えられます。その解決手段として、小規模事業者持続化補助金の「賃金引き上げ枠」の活用を検討されてはいかがでしょうか。

この記事では、小規模事業者持続化補助金「賃金引上げ枠」活用のポイントと申請時の注意点を解説します。

小規模事業者持続化補助金「賃金引き上げ枠」とは

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等が自ら経営計画を策定し、広告・宣伝や新商品・新サービスの導入など、地道な販路の拡大や、設備導入などによる効率性の向上を通じて、事業者の経営改善を支援する補助金です。また、補助金を通じて、小規模事業者への経営環境に対する課題解決を支援する側面も持っています。平成26年度(2014年度)補正予算で導入され、時代背景に合わせ制度改定を加えながら現在まで実施されています。

賃金引上げ枠は、令和3年度小規模事業者持続化補助金<一般型>で、2022年3月22日に公開された第8回公募から設定された特別枠です。
賃金の引上げは、第7回公募までは補助金申請の審査における加点項目でありましたが、第8回から特別枠として設定されました。通常枠と比較し、補助上限額が50万円から200万円まで増額され支援が拡充されています。さらに、特別枠として優先採択の対象となっています。
賃金引上げは国としての政策課題であり、経済産業省が管轄する小規模事業者持続化補助金においても優先対応となっていることが分かります。
その他、特別枠として、①成長を後押しする「卒業枠」、②事象承継を支援する「後継者支援枠」、③新規事業によるイノベーションを活発にする「創業枠」、④インボイス制度導入に伴う環境改善として「インボイス枠」が設定されています(※)。

(※)インボイス枠については、今回2023年2月20日締切りの公募以降の、令和4年度第2次補正予算としては、特別枠としてはなくなり、代わりに「インボイス特例」としてインボイス転換事業者に対して50万円の上乗せに変わります。
中小企業庁「令和4年度第2次補正予算・令和5年度当初予算案関連」-持続化補助金

補助率や補助上限額は下表をご参照ください。

 

小規模持続化補助金の補助率・補助上限額

(出所:小規模事業者持続化補助金事務局 小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック)

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の皆様にとって心強い補助金ですが、特に「賃金引上げ枠」は優先的に採択され補助上限額が大幅に増額赤字事業者については補助率も拡大、とありがたい内容となっています。経営の改善と賃金の引上げにお悩みの事業者様には、「賃金引き上げ枠」の活用により収益力を向上させ、その果実を従業員の皆様に分配することを目標に、活用をぜひご検討頂きたいと思います。

賃金引上げ枠の内容については、補助金活用支援会(HKS)のブログでも以前紹介していますのでご覧ください。

 

申請の要件(賃上げ額)

小規模事業者持続化補助金「賃金引上げ枠」のメリットが多いことをご理解頂いたところで、申請する際の要件について、説明します。公募要領の以下の記載内容をご確認ください。

(出所:小規模事業者持続化補助金事務局 小規模事業者持続化補助金<一般型>公募要領 P.8)

「賃金引上げ枠」ですので、当然ながら、従業員の賃金を引上げることが条件となっています。
具体的な額として、補助金による支援による事業の拡大により、「事業場内最低賃金」を「地域別最低賃金」より「+30円以上」とすることが必要です。つまり、パートタイム等非正規雇用者を含む全従業員に対して、事業場別(店舗別)に時間単価での最低賃金を計算し、事業場内の最低賃金を算出します。その最低賃金が、事業所が存在する地域の都道府県ごとに定められている、地域最低賃金の30円以上となるように、賃金を引上げる必要があります。具体的なイメージは下図の通りです。

令和4年度の地域別最低賃金は、以下のURLから確認できます。

厚生省:地域別最低賃金

正社員のみでパートタイムなど非正規雇用者の方がいないなど、既に事業場内最低賃金が地域別最低賃金よりも+30円以上となっている事業者の方もあると思います。その場合は、次のイメージのように、現時点よりもさらに30円以上、賃金を引上げる必要があります。事業場別(店舗別)ですので、各事業場ごとに最低賃金を引上げる必要があります。複数の事業場を持つ事業者様は見落としやすいポイントですので、注意しましょう。

 

 

申請時の注意事項

次に補助金を申請するに際して、あらかじめ検討が必要な注意事項について解説します。

<注意点①> 申請時点において従業員がいること

飲食業、サービス業を経営の事業者様は、アフターコロナでの需要の回復や、補助金による事業の拡大に合わせて従業員の新規雇用を予定している方も多いかと思いますが、公募要領には、「申請時点において、従業員がいない場合は、本枠の対象となりません」との記載がありますので、申請時点で予め従業員の雇用が完了している必要があります。

 

<注意点②> 賃金台帳を用意すること

補助金の申請時に、賃金支払いの証憑として、申請時の直近1カ月の賃金台帳を提出する必要があります。賃金台帳は、社員だけでなく、パートやアルバイト等を含めた全従業員について、労働基準法に定められた10項目すべてを記載した、正式なものを提出する必要があります。

(出所:小規模事業者持続化補助金事務局 賃金台帳の注意事項)

上記の項目を参考に、賃金台帳をあらかじめ準備しておく必要があります。

おわりに

小規模事業者持続化補助金「賃金引上げ枠」の解説はいかがでしたでしょうか。販路の開拓など地道な経営改善活動に活用ができ、補助上限額も200万円と活用しやすい補助金ですので、積極的に活用頂き、従業員の皆様にも喜んで頂ければ幸いです。
HKSでは小規模持続化補助金に関する情報をこれまでにも発行してきていますので、併せてご紹介します。

▼小規模持続化補助金に関連する過去記事はこちら▼
・小規模持続化補助金のご質問にお答えします

・小規模持続化補助金 事前に知っておきたい「基礎審査」と「加点審査」
・【飲食店向け】あなたのニーズにこの補助金
・創業間もない会社の持続化補助金活用の注意点
・令和3年度版 持続化補助金(一般型)の全貌がついに!?第8回公募要領が公開されました!

 

HKSでは小規模事業者持続化補助金だけでなく、事業者様の経営をサポートするための補助金の活用方法をご提案し、サポートを行っております。ぜひご相談ください。

 

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