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事業再構築補助金 第10回の審査項目を解説 ポイントはここ!

事業再構築補助金の第10回公募は、6月30日が締め切りです。
採択をねらう事業者のみなさんは、事業計画書づくりのためさまざまな検討を行っている最中かと思います。
第10回では「成長枠」等の新たな枠が設定され、事業再構築補助金の政策目的がポストコロナ社会も見据えたものに変化しています。

第10回公募の変更点の概要解説ブログはコチラ
第10回新設枠の新たな応募要件の解説ブログはコチラ

こうした補助金の目的の変化や、(推測ですが)応募された事業計画書に多く見られる課題を踏まえて、事業計画書の審査項目が第9回からいくつかの点で変更になっています。

今回のブログでは、第10回の審査項目(第10回以降もおそらく適用される)のうち全ての申請枠に共通して適用され、事業計画(書)の質に係わる「事業化点」と「再構築点」を解説します。

審査項目には、他に「政策点」や、特定枠に限定適用される項目がありますので、申請のために事業計画書を作成する方は、必ず公募要領の審査項目のページをご確認ください
また、事業計画書づくりの指南書として、補助金事務局が「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック」(以下「ガイドブック」と記載)をポータルサイトに公開しています。このブログでも参照していますが、たいへん参考になりますので、補助金申請をお考えの方は、ぜひ一読されることをお奨めします

このブログでお伝えしたいポイント1.   公募要領の審査項目を押さえて、検討項目に抜け漏れのない事業計画書を作成することが採択を引き寄せます。

2.審査項目の要求に応え、評価される事業計画書を作るためのヒントは、補助金事務局が公開している「ガイドブック」にあります。

3.第10回公募では申請枠の変更がありますが、審査項目も変更になっているので、リベンジ申請を狙っている方は要注意です。

第10回の公募要領はコチラ
「事業計画書作成ガイドブック」はコチラ

1.事業化点

事業化点としては、次の4点の審査項目があげられていますので、それぞれについて解説していきます。

①ユーザー、マーケット、ニーズの把握
②競争戦略(差別化戦略)
③事業化に向けた課題検証と実行計画
④補助事業の実行可能性

① ユーザー、マーケット、ニーズの把握

【公募要領にはこう書かれています
① 補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。

事業者のみなさんは新たな事業について、ユーザー、マーケット、ニーズのイメージを持っていると思いますが、では、どの程度把握していれば「市場規模が明確」で、「市場ニーズの有無が検証できている」といえるのでしょうか。
「ガイドブック」には、事業環境に関する調査のポイントが記載されています(p12)
市場規模・トレンドの把握については、「なるべく自社と近い製品/地域の市場データが望ましく、一次情報の収集も含めて検討」とあります。
また、顧客ニーズの変化については「既存/潜在顧客の生の声が最も重要なので、商圏内の顧客ニーズを足で稼ぐことも有効」とあります。事業者さんが自ら調査をすることが推奨されています。

<引用資料「ガイドブック」p12 >

② 競争戦略(差別化戦略)

【公募要領にはこう書かれています】
② ターゲットとするマーケットにおける競合他社の状況を把握し、競合他社の製品・サービスを分析し、自社の優位性が確保できる計画となっているか。

特に、価格・性能面での競争を回避し継続的に売上・利益が確保できるような差別化戦略が構築できているか。
(オープン/クローズ戦略等を通じた知財化戦略や標準化戦略による参入障壁の構築、研究開発やブランディング・標準化を通じた高い付加価値・独自性の創出、サプライチェーンや商流の上流・下流部分を自社で構築するなど他社が模倣困難なビジネスモデルの構築、競合が少ない市場を狙うニッチ戦略等)

審査では、①競合他社の状況が把握されているか、②競合他社の製品・サービスが分析されているか、③そのうえで自社に優位性があるといえるか、がチェックされます。
新製品・新サービスを投入する新市場では自社が後発となる可能性が高いため、既存の製品・サービスに対して差別化戦略をとることが審査の前提となっています。
単純な価格面・性能面の優位性では比較的短期間で競合他社に追いつかれ、さらにリードしようとすれば消耗戦となり収益が圧迫される恐れがあるため、価格面・性能面の競争は回避することが求められています。
差別化戦略のさまざまなパターンがカッコ内に列挙されていますが、継続的に売上と利益を確保するための戦略を、事業計画書で説明する必要があります。

《第9回公募までとの違い》
●これまでは、競合他社の製品・サービスの分析は求められていませんでした。
●これまでは、競争戦略として示す必要があったのは、補助事業の成果に価格的・性能的な優位性や収益性があることでした。

③ 事業化に向けた課題検証と実行計画

【公募要領にはこう書かれています】
③ 事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。
また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。

新規事業の営業開始に向けて、中長期の課題に検討が及んでいるか、短期の実行計画が具体的に立てられているかが審査項目となっています。
中長期の課題としては、例えば5年後に売上の大幅な増加を見込む場合、事業によっては販売品種を増やし、新たな人材を獲得する必要がありますが、そのような対応の検討がなされているかが問われていると考えられます。
「ガイドブック」では、遂行方法とスケジュールに関して具体化すべきことは、「目標から逆算し、時系列と担当者を明確にした事業の詳細計画」とされています(p20)

《第9回公募までとの違い》
●「中長期での補助事業の検証」は、従来はなかった審査内容です。

<引用資料:「ガイドブック」p20>

④ 補助事業の実行可能性

【公募要領ではこう書かれています】
④ 本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。
また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

審査では、体制面(人材、業務遂行能力)や財務面からみた補助事業の実行可能性が採点されます。
「ガイドブック」では、体制に関して具体化すべきことは、「人材面の強みを明確にした社内外を含む役割体制」とされているため(p20)、体制を社外の提携パートナーも含めたものとして捉えることができます。
財務面では、金融機関からの資金調達の見込みが審査対象であることに留意が必要です。
補助金と自己資金で事業資金を賄えない事業者さんは、申請前に金融機関に相談に行く必要があるでしょう。

2.再構築点

事業再構築点の審査項目は、次の5点です。こちらも一項目ずつ解説していきます。

①取組み内容の導出方法
②事業再構築指針への適合
③費用対効果
④地域やサプライチェーンのイノベーションへの貢献
⑤時代への適応と感染症等の危機に対する強靭性

① 取組み内容の導出方法

【公募要領にはこう書かれています】
① 自社の強み、弱み、機会、脅威を分析(SWOT 分析)した上で、事業再構築の必要性が認識されているか。
また、事業再構築の取組内容が、当該分析から導出されるものであるか、複数の選択肢の中から検討して最適なものが選択されているか。

社内の環境を強みと弱みに分け、社外の環境を機会と脅威に分けて事業環境を分析する手法をSWOT分析といいます。
審査項目に従えば、事業再構築の必要性も、その取組み内容も、SWOT分析の結果から導かれていることが必要です。
また、補助事業の取組み内容は、複数の案を比較検討した結果、最適なものとして選ばれた案でなければなりません。
成功確度の高い取組みとして選択すべきは、既存事業で育まれた強みを活かし、市場分析で裏付けられた事業機会を活かした取組みです。

《第9回公募までとの違い》
●これまでは、新型コロナウイルスや足許の原油価格・物価高騰等の影響で深刻な被害が生じていることから、事業再構築の必要性を示す必要がありました。第10回より売上高減少を要件としない「成長枠」などが新設されたため、このような形に変わったと思われます。
●事業案として複数の選択肢を検討したことを示す必要があるのは、今回からです。

SWOT分析の解説ブログはコチラ

② 事業再構築指針への適合

【公募要領にはこう書かれています】
② 事業再構築指針に沿った取組みであるか。特に、業種を転換するなど、リスクの高い、大胆な事業の再構築を行うものであるか。

「事業再構築指針」には、事業再構築のパタンとして「新市場進出」「事業転換」「業種転換」「事業再編」「国内回帰」の5類型が示されています。
それぞれの類型には、類型への適合を判断するためのいくつかの要件があります。
事業計画書では、取り組む事業がどの類型に当てはまるかを、要件への適合を示すことで説明する必要があります。
また、この補助金は「思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援」するものであるため、既存事業とは異質な事業に挑む大胆な取組みが評価されることに留意が必要です。

《第9回公募までとの違い》
●第10回は、事業再構築の類型が従来から変更になり、「事業再構築指針」の改訂が行われています。各類型の要件に関しても、事業計画書で示す内容が変更になっています。

「事業再構築指針の手引き」はコチラ

③ 費用対効果

【公募要領にはこう書かれています】
③ 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。
その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。

国にとって補助金は一種の投資であるため、費用対効果の観点から事業計画書の審査が行われます。
費用対効果の高さは、付加価値の増加額の大きさや生産性指標の向上の度合いで測られます。
「ガイドブック」では、投資計画を関して具体化すべきことは「売上/利益計画に基づく投資回収期間の妥当性」としています(p20)
投資回収期間とは、投資額が何年かけて利益となって戻ってくるのかを示す指標です。
事業計画書においては、投資回収期間を示し、早期回収できることを示す必要があるでしょう。
新規事業に既存の人材、技術・ノウハウが活用でき、既存事業にもシナジー効果があれば、費用対効果の向上につながります。
「ガイドブック」によれば、過去の申請を統計分析した結果、生産性およびシナジーに関する記載漏れが多いそうです(p112)
検討のうえ必ず記載しましょう!

<引用資料:「ガイドブック」p112>

④ 地域やサプライチェーンのイノベーションへの貢献

【公募要領にはこう書かれています】
④ 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。

この審査項目では、新規事業による社会課題解決への貢献の内容と度合いが審査されます。新規事業が先端的デジタル技術の活用や新しいビジネスモデルの構築を含み、地域やサプライチェーンに何らかの革新をもたらすことが期待されています。
「ガイドブック」によると、公募の回を重ねるごとに「事業化点」「再構築点」の①②③では精度が上がってきていますが、採択と非採択の間で差がつくのは当項目=「再構築点」の④だそうです(p113)社会課題解決への貢献の視点から、自社の取組みの社会的意義をよく考える必要があります

<引用資料:「ガイドブック」p113>

《第9回公募までとの違い》
●これまでは地域への貢献が審査対象でしたが、サプライチェーンへの貢献も加えられています。今回「サプライチェーン強靭化枠」が設けられたため、追加されたと考えられます。

⑤ 時代への適応と感染症等の危機に対する強靭性

【公募要領にはこう書かれています】
⑤ 本補助金を活用して新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっているか。

新型コロナは感染症分類が第5類になりましたが、経済社会はコロナ以前から大きく変化し、元に戻らない部分があります。
第10回以降に応募する事業計画は、取り組む事業がポストコロナの時代にマッチし、コロナ対応に学び、感染症の影響を受けにくい事業であることを示す必要があるでしょう。

 

さいごに

いかがでしたでしょうか。第10回公募の審査項目のコアになる「事業化点」「再構築点」について第9回からの変更点とともに概要をお伝えしました。
採択される事業計画書は、新規事業の内容が自社の強みと事業機会をうまくマッチさせたものであるとともに、審査のポイントを押さえたものであることが必要です。
審査項目に対して抜け漏れがないように事業計画書を作成することは、新規事業を成功させるうえで抜け漏れのないように検討を尽くすことにつながります。
事業再構築補助金は今回を含め、2023年度末までに3回の公募が予定されています。補助金活用支援会(HKS)では事業再構築補助金において、多くの支援実績がありますので、よろしければご相談下さい!

 

今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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