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”攻めのカーボンニュートラル推進”に活用できる補助金のご紹介

以前の本ブログで「補助金活用のためのGX(グリーントランスフォーメーション)の基礎知識」と題して、政府のグリーン成長戦略について概観しました。

この戦略に沿って様々な政策が実行されていますので、今回は中小企業様が活用できる補助金について深掘りしていきたいと思います。

今回お伝えしたいポイント1.   中小企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットは何か?

2.カーボンニュートラル推進のための補助金にはどのようなものがあるか?

3.ものづくり補助金のグリーン枠とは?

中小企業が「カーボンニュートラル(CN)」に取り組むメリットは?

日本政府は2050年までにCO2等の温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を目標としています。そのような潮流において、中小企業にとってCNに取り組むメリットとは何でしょうか。経済産業省と環境省による「中小企業等のカーボンニュートラル支援策」には次の5点が掲げられています。

カーボンニュートラルに取り組むメリット
エネルギーコストの削減 設備投資や生産プロセス等の改善などによりエネルギー使用量が削減されるため、光熱費や燃料費を抑えることができます。
競争力の強化取引先や売上拡大 サプライヤーに対して排出削減を求める企業も増加しているため、そうした企業に対する自社や自社製品の訴求力向上につながります。既存の取引先と強固な関係性を構築できるだけでなく、新規取引先の獲得につながる可能性もあります。
知名度や認知度の向上 省エネや脱炭素に取り組んで排出削減を達成した企業は、メディアや行政機関等から先進的事例として紹介されたり、表彰対象となったりすることを通じて、自社の知名度・認知度の向上につながる場合もあります。
資金調達において有利に働く 投資や融資の際に、気候変動対応をどのように行っているかが重要視されるようになっており、金融機関において脱炭素経営を進める企業を優遇するような取組も行われています。
社員のモチベーションや
人材獲得力の強化
気候変動という社会課題に取り組む姿勢を示すことで、社員の信頼や共感を獲得し、社員のモチベーション向上につながります。また、気候変動問題への関心が高い人材からの共感・評価も得られ、人材獲得力の強化にもつながります。

出典:経済産業省・環境省「中小企業等のカーボンニュートラル支援策」

 

このように、カーボンニュートラルに積極的に取り組むことによって、自社の競争力強化につながることが強調されています。

カーボンニュートラル推進のための補助金にはどのようなものがあるか?

上記の「中小企業等のカーボンニュートラル支援策」には、カーボンニュートラル推進のための補助金として次の通り様々な補助金が紹介されています。

カーボンニュートラル推進のための補助金一覧
目的 補助金名 対象
排出量等の把握 IT導入補助金
https://www.it-hojo.jp/
排出量の見える化・使用エネルギー量の管理を行う排出量算定ツールやエネルギーマネジメントシステムの導入などの、生産性向上に資する取組
排出量等の把握/
排出量等の削減
SHIFT事業(工場・事業場における先進的な脱炭素化取組推進事業)
https://shift.env.go.jp/
工場・事業場における先導的な脱炭素化に向けた取組(削減目標設定、削減計画策定、設備更新・電化・燃料転換・運用改善の組合せ)を推進
排出量等の削減






ものづくり補助金(グリーン枠)
https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発
②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善などの、生産性向上に資する取り組み
事業再構築補助金(グリーン成長枠)
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
グリーン分野で事業再構築を行うために必要となる経費(建物費、機械装置・システム構築費など)
省エネ補助金
①【省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金】https://sii.or.jp/senshin04r/
②【省エネルギー投資促進支援事業費補助金】
https://sii.or.jp/shitei04r/
工場・事業場において実施されるエネルギー消費効率の高い設備への更新
CEV補助金【クリーンエネルギー自動車導入促進補助金】
http://www.cev-pc.or.jp/
電気自動車[EV]やプラグインハイブリット[PHEV]、燃料電池自動車[FCV]等の導入
脱炭素社会の構築に向けたESGリース促進事業
https://www.ossf.or.jp/
適格要件を満たした中小企業等が対象の脱炭素機器を指定リース事業者を通じてリース導入
太陽光発電導入補助金
https://jp-pc-info.jp/
需要家主導による新たな太陽光発電設備等の導入モデルの実現を支援
自家消費型太陽光発電・蓄電池導入補助金
https://www.eic.or.jp/eic/topics/2023/st_r04c/001/
自家消費型の太陽光発電・蓄電池の導入を支援

このように生産性の向上」「省エネの推進」「再生可能エネルギーの導入」「CO2排出量の削減」「環境負荷の低い設備への更新」「業態転換」に向けた様々なメニューが用意されています。

やはりCO2排出量の多さから、製造業などの工場や事業場向けの施策が主になっていますが、それ以外の業種でも活用できる補助金もあります。また、これら補助金の他に、設備導入時の借入金に対する利子補給や、投資促進税制(法人税などの減免)などの施策もありますので、詳しくは「中小企業等のカーボンニュートラル支援策」をご覧下さい。

 

次に、この中からものづくり補助金(グリーン枠)について詳しく見ていきたいと思います。

ものづくり補助金(グリーン枠)の概要

*以下、第16次公募要領に基づいて記述しております。

ものづくり補助金のグリーン枠とは、温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援するもので、第10次公募から新たに追加されました。

グリーン枠導入にあたり中小企業庁が公表した「令和3年度補正予算の概要」には、下記のグリーン枠の想定活用事例が示されています。

 

次に、グリーン枠の補助金額と補助率を見てみましょう。

 

ものづくり補助金(グリーン枠)の補助金額・補助率
エントリー類型 スタンダード類型 アドバンス類型 (参考)通常枠
従業員数  5人以下 100~750万円 750~1,000万円 1,000~2,000万円 100~750万円
 6人~20人 100~1,000万円 1,000~1,500万円 1,500~3,000万円 100~1,000万円
 21人以上 100~1,250万円 1,250~2,000万円 2,000~4,000万円 100~1,250万円
補助率 2/3 2/3 2/3 1/2
*小規模企業者、小規模事業者、再生事業者は2/3

グリーン枠には「エントリー類型」「スタンダード類型」「アドバンス類型」の3種類があり、段階的に補助金額が拡大する分、申請における様々な要件も追加されます。それについては後ほど詳しく解説します。グリーン枠の特徴としては、次の2点が挙げられます。

 特徴① 通常枠に比べて、補助金額が大きい(但し、「スタンダード類型」「アドバンス類型」の場合)。
 特徴② 補助率が、通常枠(1/2)に比べて、拡大(2/3)する

一方、「エントリー類型」については注意が必要です。通常枠と比べて補助金額は変わらずに補助率のみ拡大されるのですが、小規模事業者様等の場合は通常枠でも2/3の補助率が適用されるため、グリーン枠としてのメリットは特に無いといえます。グリーン枠の場合は次に述べるような追加要件があり、現状でもエネルギーの使用量やCO2排出量を把握していることが前提となっているため、多くの小規模事業者様にとってはグリーン枠ではなく通常枠で申請される方が負担が少ないと思われます。

ものづくり補助金(グリーン枠)の追加要件

グリーン枠で申請する場合は、ものづくり補助金の基本要件に加えて、類型に応じて細かく追加要件が定められています。公募要領を読んでも分かりにくいため、次のように表に整理してみました。

ものづくり補助金(グリーン枠)の追加要件
追加要件 エントリー類型 スタンダード類型 アドバンス類型
(1) 次の①又は②に該当する事業であること。
①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発
(例:省エネ・環境性能に優れた製品・サービスの開発、非石油由来の部素材を用いた製品・サービスの開発、廃棄物削減に資する製品・サービスの開発 等)
②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善
(例:生産工程の労働生産性向上を伴いつつ脱炭素化に資する設備投資、水素・アンモニアを活用する設備導入による燃焼工程と生産プロセスの最適化、複数ラインの作業工程を集約・高効率化 等)
(2) 3~5年の事業計画期間内に、事業場単位または会社全体での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること。
(3) 1.エネルギーの種類別に使用量を毎月整理している。また、補助対象の事業者あるいは事業所のCO2の年間排出量を把握している。
2.事業所の電気、燃料の使用量を用途別に把握している。
1,2のいずれかを満たす 1,2のすべてを満たす 1,2のすべてを満たす
(4) 3.本事業で開発に取り組む製品・サービスが、自社のみならず、業界・産業全体での温室効果ガス削減に貢献するものである。
4.電気事業者との契約で、一部でも再生可能エネルギーに係る電気メニューを選択している。
5.自社で太陽光やバイオマスなど再生可能エネルギーでの発電を導入している。
6.グリーン電力証書を購入している。
7.省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度(J-クレジット制度)があるがこの制度に参加し、自社での温室効果ガス排出量の削減取組についてクレジット認証を受けている
3~7のいずれかを満たす 3~7のうち2つ以上を満たす
(5) 8.通常版若しくは中小企業版SBT( Targets)の認証又は通常版若しくは中小企業版RE100に参加している。
9.エネルギーの使用の合理化等に関する法律(通称:省エネ法)における事業者クラス分け評価制度において、令和4年度定期報告書分評価が『 クラス』評価であること(原則、公募締切時点で資源エネルギー庁ホームページにて、『Sクラス』として公表されていることが確認できること)
10.2020年度以降に以下のいずれかの事業における省エネルギー診断を受診している、または、地方公共団体で実施する省エネルギー診断を受診している。
○一般財団法人省エネルギーセンター実施の「無料省エネ診断等事業及び診断結果等情報提供事業」又は「エネルギー利用最適化診断事業及び情報提供事業」
○一般社団法人環境共創イニシアチブ実施の「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業」、「地域プラットフォーム構築事業」又は「中小企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業」
11. GXリーグに参画していること。
参考: GXリーグ公式 サイト https://gx-league.go.jp/
8~11のいずれかを満たす

 

このようにグリーン枠は、既に環境対策で先進的な取り組みを行っている企業を対象としたものと考えられますので、そのような企業様にとっては補助金額や補助率の利点を享受できるチャンスとも言えます。一方、これからCO2排出量やエネルギー負荷の把握から始めたいというような企業様には、上記でご紹介した「IT補助金」や「SHIFT事業」の活用を検討されてはいかがでしょうか。

さいごに

今回は、カーボンニュートラルに向けた補助金の概要と、ものづくり補助金(グリーン枠)についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。事業再構築補助金の「グリーン成長枠」については、またの機会に詳しく見ていきたいと思います。

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今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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