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人手不足にお困りの事業者様へー省力化投資のご検討はいかがでしょうか?

昨年11月に経済産業省の令和5年度補正予算案が公開されました。以前の記事でもご紹介しましたが、2024年は「中小企業の省力化元年」と言っても過言ではありません。

昨今の人手不足の解消、ならびに生産性向上のカギとなる「省力化」について、政府が後押しのために用意している補助金について解説するとともに、政府がこれまでに発行した白書等から、省力化の内容についてご説明します。

今回お伝えしたいポイント1.   政府が省力化を推進する理由

2.省力化への支援内容は?

3.   省力化の具体例は?

政府が省力化を推進する理由

政府が省力化を推進する理由を、経済対策としての視点から見てみましょう。
岸田首相が2023年11月20日に発表した「総合経済対策」ではデフレからの完全脱却を目標としています。

●総合経済対策ー首相官邸

デフレからの脱却は、「賃金の上昇」⇒「購買力の向上」⇒「適度な物価上昇」の好循環をもたらすことで達成するとしています。

この総合経済対策の中で、省力化は「賃金上昇」と「購買力上昇」をもたらすための「賃上げ支援」及び「人手不足対策」に位置づけられており、具体的な施策としては前述の以前のブログ(「令和5年度補正予算案の概要から、中堅・中小企業支援の補助金をご紹介します!」)にて説明した
「中小企業省力化投資補助事業」として、省力化投資に関してカタログから選ぶような汎用製品の導入への簡易で即効性がある支援措置の実施
「中小企業生産性革命推進事業」として、中小企業等が行う革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等への支援
の2点が盛り込まれています。

中小企業への省力化は、岸田首相の「新しい資本主義実現会議」においても、持続的な賃上げ実現のための第2の施策として挙げられており、最重要と言ってもよいでしょう。

●新しい資本主義実現会議ー首相官邸

省力化の支援内容は?

それでは政府は中小企業の省力化推進のため、用意している支援策はどのようなものでしょうか。
先ほど説明した、①カタログ型の簡易で即効性がある省力化投資、②生産プロセス等の省力化に必要な設備投資への支援、について、それぞれの内容を違いに着目して説明します。

 

①カタログ型の簡易で即効性がある省力化投資

カタログ型の支援については、令和5年度補正予算にて新設される「中小企業省力化投資補助事業」で実施します。
事業概要としては、「IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を「カタログ」に掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある省力化投資を促進する。」となっています。

●経済産業省関係令和5年度補正予算の事業概要(PR資料) P.12より

「カタログ型」の名前の通り、省力化に効果がある製品・サービスがカタログとして登録され、カスタマイズすることなくそのまま導入することを補助対象としています。
公募要領はこれから発表されることになりますが、付加価値額の増加が成果目標とされることから、申請に当たっては、省力化投資により付加価値をどう高めるか、が審査の対象となると考えられます。また、具体的にどのような製品・サービスがカタログに登録されることになるか、については後ほどご説明します。

 

②生産プロセス等の省力化に必要な設備投資への支援

生産プロセス等の省力化については、「ものづくり補助金」の第17次公募から導入された、「省力化(オーダーメイド枠)」にて実施します。

●ものづくり補助金 第17次公募要領 P.14より

公募要領の説明では、「専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援します」と記載されています。また、「デジタル技術等を活用せず、単に機械装置を導入する事業については、本事業の対象とはなりません」とも記載があります。

すなわち、「オーダーメイド」が示す通り、中小企業が自社の業務に併せて専用に設計したシステムや機械装置の導入が支援対象となっており、カタログ型とは区別されていることが分かります。

ものづくり補助金の要件に従った設備投資が対象となるため、具体的には次の要件を満たす必要があります。
【ものづくり補助金 基本要件】
◆給与支給額の年平均成長率1.5%以上の増加

◆最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に引上げ

◆付加価値額を年平均成長率3%以上の増加

【省力化(オーダーメイド枠) 追加要件】

◆3~5年の事業計画期間内に、労働生産性が 2倍以上となる事業計画の策定

◆3~5年の事業計画期間内に、投資回収可能な事業計画を策定

◆3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約(必要な場合)

◆金融機関による事業計画の確認(資金の外部調達を予定している場合)

 

また、17次公募は「省力化(オーダーメイド枠」のみの募集であり、政府が省力化投資を非常に重視していることが分かります。

さらに、「17次締切の公募に応募する事業者は、18次締切りの公募には応募できない」との制約もついていますので、審査における採択率も従来よりも高く設定されているのものと想定されます。

 

③ 支援内容の比較

最後に、省力化支援として準備された、①カタログ型と②オーダーメイド型の制度について、比較してみましょう。

上記の表の通り、「②生産プロセス等の省力化」の方が補助上限額が大きく、小規模事業者については補助率も高く設定されていることが分かります。ただし、前述の通り、ものづくり補助金の基本要件及び追加要件を満たす必要があり、政府は申請が簡素で要件も緩やかである「①カタログ型」の支援との使い分けを想定しているものと考えられます。

省力化の具体例は?

前章では支援内容をご説明しましたが、具体的にどのような製品・サービスによる省力化が対象となるのでしょうか。
カタログ型については、補助対象の製品やサービスはこれから登録される状況です。生産プロセス等の省力化についても新設された枠であり、具体的な補助対象がやや不透明です。
そこで、これまでの政府の発表や、白書等の刊行物から、省力化の対象を推測するとともに、省力化に取り組みたい事業者様の検討の一助になればと思います。

①飲食業への支援
●国内投資拡大のための官民連携フォーラム

令和5年12月21日 「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」にて、岸田首相から以下の発言が記録されています。

「中小企業の省力化投資ですが、石野製作所のような製品・サービスを利用するような投資を、サービス産業を中心に、中小企業が実施することで、人手不足解決と労働生産性向上を同時に実現してまいります。」

石野製作所は、飲食業向けにオートウェイターやコンベア、自動皿洗浄、食品加工用バーナーなどの製品があり、省力化の対象として考えられていることが分かります。

②システム化による業務効率性の支援

●2023年度版 中小企業白書(概要)P.9

「2023年度版 中小企業白書」では、省力化投資を通じた生産性向上の事例として、半導体製造装置などの輸送を行う運送業者である株式会社ヒサノ(熊本県熊本市)の事例が紹介されています。
人手不足をきっかけに、配車業務をITコーディネーターとの連携でシステム化し効率化し、さらには倉庫業へも進出し倉庫管理情報をシステム連携し、総合物流サービス業への発展を図ったものです。
こうした、IT化等設備投資による生産性向上も支援対象として想定されていると考えられます。

③デジタル技術の活用による省力化や技術伝承の支援

●2022年度版 ものづくり白書(概要)P.20

「2022年度版 ものづくり白書」ではデジタル技術の活用により職人の技術を伝承し労働生産性を向上した事例(株式会社 内田染工場)や、計量にIoTを活用して品質の向上や作業効率向上を達成した事例(株式会社 ポリコール岩槻工場)が紹介されています。
製造業へのデジタル技術の活用やIoTの取り組みについては、「2020年度版 ものづくり白書」でも取り上げられています。
製造業向けの省力化支援として、デジタル技術による生産性向上やIoTを活用した機器の導入への支援がなされるものと考えられます。

④現場やバックオフィスの省力化

●令和2年度版 年次経済財政報告 第4章第2節

内閣府が公開した「令和2年度 年次経済財政報告」では「IT関連投資による省力化と労働生産性」について記載されています。ソフトウェア装備率が労働生産性に大きく影響していることが示され、並びに、具体的な事例として、現場やバックオフィスにおける省力化を意図したIT投資の事例が紹介されています。
紹介された事例としては、以下のものがあります。
◆スーパーにおけるセルフレジ・セミセルフレジ

◆運搬機械・産業用ロボット・マシニングセンター

◆RPA

さらには、現場の省力化を意図したIT投資(ロボットによるサポート・自動化等)とバックオフィスの省力化を意図したIT投資(WEB・IT関連のソフトやシステムの導入、RPA等)について触れられています。
ここで記載された事例についても対象になるものと考えられます。

政府の発表や刊行物から、省力化支援の対象の候補となる製品・サービスを紹介しました。
人手不足や生産性の向上に悩まれている事業者様も多いと思います。冒頭に申し上げた通り、政府の強い後押しにより、2024年は「中小企業の省力化元年」と言える状況ですので、ぜひご検討頂ければと思います。

 

HKS(補助金活用支援会)は、今回ご紹介した、省力化の補助金につきましても、申請の準備段階からご支援が可能です。ぜひご相談頂ければと思います。

 

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