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補助金の採択率に左右されない勝ち抜く経営戦略と申請のコツ

今回は、「直近の補助金採択結果から読み解く、2025年の補助金を活用した経営戦略」についてご紹介します。
今回お伝えしたいポイント1. 主要補助金(ものづくり補助金・事業再構築補助金・省力化投資補助金)の直近採択率と傾向の変化
2. 採択率低下の背景と、採択されやすいテーマ・キーワードの分析
3. 補助金を“経営戦略の一部”として位置付けるための具体的な視点
昨今、ものづくり補助金の採択率は31.8%と過去より大きく低下しています。一方、省力化投資補助金は60%台を維持しており、補助金ごとの明暗がはっきりしています。
そのような中、「どの補助金を狙うべきか分からない」「補助金をどう経営戦略に組み込むべきか」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、直近の採択傾向を踏まえた今後の申請戦略の考え方や、補助金を経営にどう活かすかのヒントをご紹介します。
この「採択結果の分析と戦略整理」は、補助金活用を検討する製造業・サービス業・建設業など幅広い業種の経営者の方にとって、今後の事業計画づくりの参考になるかと思います。
直近の補助金採択率の現状
2025年度の主要補助金は、これまで以上に厳しい競争の時代に入りました。
例えば「ものづくり補助金」(第19次公募)の採択率は 31.8%となりました。
以前は50%以上が珍しくなかった時期もありましたが、いまや3社に1社程度まで低下しています。
(出所:ものづくり補助金総合サイト)
背景には、申請件数の増加と審査基準の変化があると考えられます。
14次公募以降、申請数は5,000社を超えており、限られた政策予算の中では、採択率が低くなってしまうのは当然の流れとなっています。
さらに、事業再構築補助金などへの財政制度分科会の指摘を受け、審査基準が厳格化したとも考えられており、書類の完成度だけでは通らず、計画の実現性や政策適合性がより厳しく評価されるようになっています。
一方で、「省力化投資補助金」では、第1回が69%、第2回が61%と高い採択率を維持。(出所:中小企業庁)
その理由は明確で、「人手不足対策」「省人化設備導入」が政府の重点テーマに合致しており、かつ申請件数が他の制度より少ないためです。
つまり、政策テーマに合致した経営戦略の採択率が高まる傾向にあると考えられます。
これは必ずしも、「政策に合わせた戦略を構築する」ということを意味するのではなく、AIや最先端のデジタルツールといったトレンドにキャッチアップすることが、経営戦略上も重要であるということです。
最近の審査傾向と注目キーワード
直近の採択テーマを分析すると、以下のキーワードが頻出しており、審査で注目されやすいトレンドを反映しています。
特に、「DX/デジタル化」「AI」を始め、直近の環境規制などに対応する「脱炭素」などは、政策的な後押しも強く、差別化戦略や他テーマとの組み合わせで採択率への影響も一定程度あると考えられます。
その上、人員不足が加速し、取引先との関係上、環境規制対応が迫られる中小企業にとっても、緊急性・重要性ともに高いテーマであると考えられます。
<ものづくり補助金19次採択者一覧の頻出キーワード>
順位 | キーワード | 出現回数 | 主な文脈例 |
1 | DX / デジタル化 | 82件 | 業務効率化DX、販売管理システム導入、IoT活用など |
2 | AI | 54件 | AI画像解析、生成AIを活用した設計支援、AIチャットボット導入など |
3 | 省力化 / 自動化 | 48件 | 自動搬送装置導入、省人化製造ライン、自動検品装置など |
4 | 脱炭素 / カーボンニュートラル | 37件 | CO₂排出削減、再生可能エネルギー利用、省エネ設備導入など |
5 | 高付加価値化 | 35件 | 高単価商品の製造、プレミアムサービス開発、高機能素材利用など |
6 | 新商品開発 | 33件 | 健康食品開発、新規観光サービス企画、新メニュー開発など |
7 | 海外展開 / インバウンド | 27件 | 越境EC、外国人観光客向けサービス、輸出対応製品開発など |
8 | リスキリング / 人材育成 | 21件 | IT人材育成プログラム、技能継承研修、新規分野研修など |
9 | サブスク / 定額サービス | 18件 | 定額制メンテナンスサービス、サブスク型製品提供など |
10 | データ活用 / BI | 16件 | データ分析基盤構築、BIツール導入、顧客行動分析など |
さらに、中小企業庁が公表する「グッドプラクティス事例」にはキーワードに近しい、下記のような取り組みが「良い事例」として紹介されています。(出所:ものづくり補助金総合サイト 「令和6年度ものづくり補助金成果事例集」)
事例1:製造現場のDX化による生産性向上
株式会社秋谷鉄工所(兵庫県)
デジタル技術を活用して、アルミ金属加工の設計〜製造工程を一貫管理する体制を構築した事例。
関連する採択トレンド |
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主な取り組み |
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課題 |
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成果 |
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事例2:地域資源を活かした高付加価値商品開発
株式会社アイエス(愛知県)
関連する採択トレンド |
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主な取り組み |
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課題 |
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成果 |
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採択されにくい計画の共通点
一方で、不採択案件には、次のようなパターンが多く見られます。
これらをしっかりと意識した事業計画のもとで、「補助金をどう活用するか」の視点が必要になると考えられます。
- 数値根拠の不足
「効率化する」「品質を高める」などの抽象表現では審査員を納得させられません。
市場データや過去の実績を活用し、「作業時間を月80時間削減」「不良率を20%低減」といったKPIを設定します。 - 実行体制が不明確
導入する設備の選定理由や発注時期、設置スケジュール、外部ベンダーの役割を明記しないと、実現可能性に疑問を持たれます。 - 政策テーマとの接点不足
GX・DX・地域活性化などの重点テーマと関連性が弱い場合は不利になります。これは、各補助金の加点項目などを見て判断することを推奨します。 - 現実離れした計画
高度な技術導入や大規模投資を盛り込みながら、自社の実績や人員体制が伴わないと「絵に描いた餅」と判断されます。
なお、HKSの過去記事では不採択になった場合の対応についてもまとめていますので、合わせてご覧いただくと参考になるかと思います。
補助金を経営戦略に組み込む4つの視点
採択率を高め、補助金を経営成長につなげるためには、「補助金ありき」ではなく「経営戦略の一部」として活用する視点が必要です。
特に補助金申請においては「公募要領を読み込み」「自社の課題と戦略上、活用が得策かを判断」し、申請準備に入ることが重要です。
- 政策トレンドの先読み
経産省や中小企業庁の中期方針を確認し、省力化・自動化、GX、地域経済波及などの重点分野と自社課題を結びつけます。 - 経営課題の数値化
売上増加率、離職率、稼働率改善などを具体的な数値で示し、その根拠を過去データや第三者調査で裏付けます。 - 社会的意義の明確化
「新規雇用3名創出」「CO₂排出量を年間50トン削減」など、社会的効果を定量的に示します。 - 加点項目の事前準備
DX認定やパートナーシップ構築宣言は、申請の半年前から準備します。
さいごに
2025年度は、採択率が過去数年で最も低い水準となり、「選ばれる事業計画」の条件がより厳しくなっています。
採択されるためには、国の政策トレンドと自社の中長期戦略を融合し、補助金を「経営成長を加速する投資ツール」として活用することが不可欠です。
補助金はゴールではなく、経営を次のステージへ押し上げるための手段です。
なお、HKSでは各種補助金において、多くの支援実績がございますので、よろしければご相談下さい!
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

HKSパートナー、中小企業診断士。