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事業承継・引継ぎ補助金の第5次公募要領が開示されました!

2023年3月14日に、中小企業庁のホームページで、令和4年度第二次補正予算 中小企業生産性革新推進事業「事業承継・引継ぎ補助金」(5次公募)の公募要領が公表されています。HKSブログでは、前回(令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 4次公募)からの主な変化点についてお伝えしていきます。

事業承継・引継ぎ補助金とは

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継、事業再編及び事業統合を促進し、休業や廃業による経営資源の分散を回避するために設立された、事業引継ぎ及び引継ぎ後の新しい取り組みを後押しする補助金です。

具体的には、事業承継引継ぎ後の積極的な投資を促進するために、設備投資や販売開拓等の新たな取り組みに要する費用を一部補助します。また事業引継ぎ時の専門家活用費用などを支援します。

本補助金は、「経営革新事業(創業支援型、経営者交代型、M&A型)」、「専門家活用事業(買い手支援型、売り手支援型)」、「廃業・再チャレンジ事業」の3事業6類型に分類されており、それぞれ、支援対象者や補助経費が異なります。

3事業6類型の詳細については、それぞれの公募要領をご確認ください。

 

【参考リンク】

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5次公募の申請受付期間

5次公募の詳細スケジュールは公表されていません(3/19現在)が、交付申請は以下の日から受付開始予定となっています。

経営革新事業、廃業再チャレンジ事業:3/20(月)~

専門家活用事業          :3/30(木)~

経営革新事業の変化点

経営革新事業は、経営革新に取り組む中小企業・小規模事業者を「創業支援型」「経営者交代型」「M&A型」の3つの類型に応じて支援します。

  • 創業支援型(Ⅰ型)…廃業を予定している者等から経営資源を引き継いでの創業を支援
  • 経営者交代型(Ⅱ型)…事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者を支援
  • M&A型(Ⅲ型)…事業再編・事業統合を契機として、経営革新等に取り組む者を支援

 

主な変化点

  • 補助率に関する補助対象者の要件追加
  • 経営者交代型の同一法人内の代表者交代では、「未来の承継」も本補助事業の対象
  • 賃上げによる補助上限額の引上げ
  • 加点事由の追加

 

経営革新事業の補助上限額と補助率

(出所:事業承継・引継ぎ補助金事務局 公募要領(経営革新)(5次公募)を加工)

 

補助率に関する補助対象者の要件追加
【補助率に関する補助対象者の要件】に該当する場合は、補助率は2/3 以内となり、該当しない場合は、補助率は1/2 以内となります。

詳細は、公募要領(経営革新)「5.補助対象者」に定める【補助率に関する補助対象者の要件】(11)をご確認ください。

【補助率に関する補助対象者の要件】

【補助率に関する補助対象者の要件】
以下のいずれかに該当する補助対象者においては、補助率を2/3 以内とする。(以下に該当しない場合は、補助率は1/2 以内とする。)
① 中小企業基本法等の小規模企業者
② 物価高の影響等により、営業利益率が低下している者
具体的には、直近の事業年度(申告済み)及び交付申請時点で進行中の事業年度において、
(1)直近の事業年度(申告済み)と2 期前の事業年度(通年)
(2)直近の事業年度(申告済み)及び交付申請時点で進行中の事業年度のうち、それぞれ任意の連続する3 か月(当該期間の前年度同時期)の平均
上記(1)(2)の期間における営業利益率を比較した場合に低下していること。
③ 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者
④ 中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等からの支援を受けており(注1)、公募申請時において以下のいずれかに該当することを証明する書類を提出する者
1)再生計画等を「策定中」の者(注2)
2)再生計画等を「策定済」かつ公募終了日から遡って3 年以内の間(令和2 年5 月13 日以降)に再生計画等が成立等した者
(注1) 以下に掲げる計画に関する支援を受けている場合を指す(以下、「再生事業者」という。)。
(ア) 中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)が策定を支援した再生計画
(イ) 独立行政法人中小企業基盤整備機構が策定を支援した再生計画
(ウ) 産業復興相談センターが策定を支援した再生計画
(エ) 株式会社整理回収機構が策定を支援した再生計画
(オ) 「私的整理に関するガイドライン」に基づいて策定した再建計画
(カ) 中小企業の事業再生等のための私的整理手続(中小企業版私的整理手続)に基づいて策定した再生計画(令和4 年4 月15 日から適用開始)
(キ) 産業競争力強化法に基づき経済産業大臣の認定を受けた認証紛争解決事業者(事業再生ADR 事業者)が策定を支援した事業再生計画
(ク) 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資した中小企業再生ファンドが策定を支援した再生計画
(ケ) 株式会社東日本大震災事業者再生支援機構が同機構法第19 条の規定による支援決定を行った事業再生計画
(コ) 株式会社地域経済活性化支援機構が株式会社地域経済活性化支援機構法第25 条の規定による再生支援決定を行った事業再生計画
(サ)特定調停法に基づく調停における調書(同法第17 条第1 項の調停条項によるものを除く。)又は同法第20 条に規定する決定において特定された再生計画
(注2) (注1)で定義される「再生事業者」のうち、(ア)から(キ)のみが対象となる。
また、(ア)から(キ)における「策定中」の定義は以下のとおり。
(ア)から(ウ): 「再生計画策定支援(第二次対応)決定」以後
(エ): 企業再生検討委員会による「着手承認」以後
(オ): 同ガイドラインに基づく「一時停止の要請」以後
(カ): 同手続に基づく「一時停止の要請」以降
(キ): 事業再生ADR 制度の「制度利用申請正式受理」以後

 

経営者交代型の同一法人内の代表者交代では、「未来の承継」も本補助事業の対象
経営者交代型の同一法人内の代表者交代では、事業承継の要件、及び補助対象事業の要件をすべて満たす場合、事業承継対象期間以降の事業承継(以下、「未来の承継」という。)においても、本補助事業の対象となります。

詳細は、公募要領(経営革新)<経営者交代型において、「未来の承継」が対象になる場合>をご確認ください。

<経営者交代型において、「未来の承継」が対象になる場合>

<経営者交代型において、「未来の承継」が対象となる場合>
【事業承継の要件】
• 同一法人内の代表者交代による事業承継であること。
• 交付申請時点で、6.3 に定める要件を満たす将来経営者となることが十分見込まれる後継者(以下、「後継者候補」という。)が選定できていること。
• 当該法人の承継予定者である後継者候補が、該当法人に在籍していること。
• 別途提出を求める事業承継計画※から、補助事業期間が終了する事業年度から5 年後の事業年度末までに事業承継を完了する予定であり、その蓋然性が高いことが確認できること。
※認定経営革新等支援機関より、事業承継の蓋然性につき確認を受けた計画書に限る。
【補助対象事業の要件】
• 交付申請時の補助事業計画から、以下のいずれも満たすことを確認できること。
➢ 後継者候補が主導して取り組む事業であること。
➢ 承継予定の中小企業等における事業であること (事業計画期間(5 年)において当法人の存続を前提とすること)。
➢ 承継予定である中小企業の経営資源を有効活用した事業であること。
【未来の承継に関する留意事項】
• 申請時に提出した未来の承継に関し、補助事業期間終了後の後年報告において計画の未達(承継予定時期の承継未完了)が判明した際は再度承継計画の提出を求める事とし、提出に応じない事業者については、事業者名及び法人番号を公表する。ただし、天災などの事業者の責めに追わない理由がある場合はその限りではない。

 

賃上げによる補助上限額の引上げ
補助事業期間において、一定の賃上げを実施した場合は、補助上限額が800万円になります。詳細は、公募要領(経営革新)【補助上限額の変更に関する賃上げ要件】をご確認ください。

【補助上限額の変更に関する賃上げ要件】

【補助上限額の変更に関する賃上げ要件】
以下①②のいずれかを達成すること。
① 補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の賃上げ
② (①を既に達成している事業者は、補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金 30円以上の賃上げ
※比較する地域別最低賃金は、交付申請日時点の最新とする。
※対象とする事業場は、補助事業の実施先(被承継者を含むであること。
※賃上げの達成については補助事業完了後の実績報告時に確認するものとし、本報告時に補助事業期間終了日を含む支払期間の賃金台帳等の提出を求める。 実績報告時に本要件を未達の場合は、交付決定通知書に記した補助上限額の 変更800万円を600万円に減額)を行う。
※補助事業終了後も、後年の事業化状況報告書において、継続して賃金台帳の提出を求め、賃上げ状況が継続されない場合は返還を求める場合があるので注意すること。

また、補助金の内600万円以下の部分の補助率は2/3以内となり、600万円を超え800円万以下の部分の補助率は1/2以内となります。

<賃上げ要件充足時における、補助額ごとの補助率の考え方>

(出所:事業承継・引継ぎ補助金事務局 公募要領(経営革新)(5次公募)

 

加点事由の追加
審査において加点する事由として、「健康経営優良法人」認定、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用、「(連携)事業継続力強化計画」認定、「アトツギ甲子園」のファイナリストであること等が追加されています。
加点事由等の詳細は、公募要領をご確認ください。

専門家活用事業の変化点

専門家活用事業は、経営資源引継ぎ時の士業等専門家活用時の経費の一部を補助するものです。以下の2つの類型を対象とて支援します。

  • 「買い手支援型」…事業再編・事業統合等に伴う株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業・小規模事業者を支援
  • 「売り手支援型」…事業再編・事業統合等に伴い自社が有する株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業・小規模事業者を支援

 

主な変化点

  • 補助下限額を50万円に引き下げ
  • 売り手支援型の補助率に、要件追加
  • 賃上げ等加点事由の追加

 

専門家活用事業の補助上限額と補助率

(出所:事業承継・引継ぎ補助金事務局 公募要領(専門家活用事業)(5次公募)

 

補助下限額を50万円に引き下げ
補助下限額が従来の100万円から、50万円に引き下げられました。

 

売り手支援型の補助率に、要件追加
売り手支援型において、以下の要件①②のいずれかに該当する場合は補助率を2/3以内、該当しない場合は補助率1/2以内となりました。
【売り手支援型の補助率に関して】
以下①②のいずれかに該当する場合は、補助率を2/3 以内とする。
① 物価高等の影響により、営業利益率が低下している者
具体的には、直近の事業年度(申告済み)及び交付申請時点で進行中の事業年度において、
(1)直近の事業年度(申告済み)と2 期前の事業年度(通年)
(2)直近の事業年度(申告済み)及び交付申請時点で進行中の事業年度のうち、それぞれ任意の連続する3 か月(当該期間の前年度同時期)の平均
上記(1)(2)のそれぞれの期間における営業利益率を比較した場合に、低下していること。
② 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者
※上記①②に該当しない場合、売り手の補助率は1/2 以内とする。

 

賃上げ等加点事由の追加
審査において加点される要件にも変化点がありました。
【買い手支援型(Ⅰ型)・売り手支援型(Ⅱ型)共通】の加点事由として、「(連携)事業継続力強化計画」の認定を受けていることが追加されています。
【買い手支援型(Ⅰ型)のみ】の加点事由として、「健康経営優良法人」認定、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用、賃上げ要件等が追加されています。

<賃上げ要件>

以下①②のいずれかを達成する賃上げを実施すること。
① 補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の賃上げ
② (①を既に達成している事業者は、補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金+30円以上の賃上げ
※比較する地域別最低賃金は、交付申請日時点の最新とする。
※対象とする事業場は、経営資源引継ぎ対象(売り手)を含むものとする。
※賃上げの達成については補助事業完了後の実績報告時に確認するものとし、本報告時に補助事業期間終了日を含む支払期間の賃金台帳等の提出を求める。
※実績報告時に賃上げ要件が未達の場合は、事業者名及び法人番号を公表する。ただし、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合はその限りではない。

なお、【売り手支援型(Ⅱ型)のみ】にあった、直近決算期の営業利益または経常利益の赤字要件、および最新の事業年度の売上高減少要件はなくなりました。
※加点事由等の詳細は、公募要領をご確認ください。

廃業・再チャレンジ事業の変化点

廃業・再チャレンジ事業は、中小企業・小規模事業者が再チャレンジを目的として既存事業を廃業する際の費用の一部を補助します。他の事業(経営革新、専門家活用)との併用ができるところがポイントです。

※過去1回から4回までの申請実績合計112件中109件(97%)が併用申請です。

 

併用申請する場合の補助率

他の事業(経営革新、専門家活用)と併用申請する場合は、今回変更された各事業における事業費の補助率(2/3以内又は、1/2以内)に従うことになります。
廃業・再チャレンジ事業単独申請の場合は、従来通り、補助対象経費の2/3以内となっています。

 

廃業・再チャレンジ事業(単独申請)の補助上限額と補助率

(出所:事業承継・引継ぎ補助金事務局 公募要領(廃業・再チャレンジ事業)(5次公募)

おわりに

今回は、中小企業生産性革新推進事業「事業承継・引継ぎ補助金」(5次公募)の主な変化点についてお伝えしました。

今までは、実際の事業承継の進捗と申請受付期間が合わず、事業承継・引継ぎ補助金を活用するタイミングを逸してしまった事業者様もいらしたのではないでしょうか。経営者交代型の同一法人内の代表者交代では、「未来の承継」も、本補助事業の対象となりますので、事業承継をご検討の事業者様においては、本補助金活用を含めた早めの準備をおすすめします。

なお、HKSでは、事業承継・引継ぎ補助金はもちろん、様々な補助金において、多くの支援実績がございますので、よろしければご相談下さい。

今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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