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ものづくり補助金申請時には目を通しておくべき「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」とは?
はじめに
ものづくり補助金における事業計画の策定にあたっては、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」又は
「中小企業特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」を参考にすることを求められています。
今回は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に焦点をあてて解説します。
今回お伝えしたいポイント1. 「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」とは何か?
2.具体的にどんな生産性向上手法や施策が示されているのか?
3.ものづくり補助金とガイドラインの関係性はどんなものか?
中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドラインとは?
「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」とは、経済産業省が発表しているガイドラインであり、サービス業の9割以上を占める中小企業向けに、経営課題を解決する際の参考にされることを期待して、取り組みの方向性や具体的手法等を紹介しています。
平成27年1月に作成され、平成28年2月に事例追加の改訂が入った少し古い資料ではありますが、普遍的な内容であるため、今見ても生産性向上に向けた取り組みの道標となるようなガイドラインとなっています。ものづくり補助金の申請を検討していない事業者さんにとっても経営改善の一助となるようなガイドラインですので、一読しておくことをおすすめします。
目指すべき生産性の向上とは?
一般的に「生産性向上」という言葉は製造業などの業種との結びつきはイメージしやすいものですが、サービス業においては「生産性」という言葉は馴染みの薄いものかと思います。
「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」においては、サービス業が検討すべき生産性として以下のような説明から「労働生産性」を挙げています。
サービス業は、現場でサービスを提供する「人」が付加価値の源泉です。従業員の質 が低ければ経営にとって大きなマイナスとなるため、雇用を維持する人件費や人を育て る教育費を安易に削減することは慎重な検討を要します。また、人口減少社会の下で人手不足が顕在化する中、良い人材を確保し、スキルを身につけて定着してもらうためには、相応の賃金とやりがいある職場が必要です。
つまり、 売上げをしっかり確保し、賃金も利益も確保する経営を目指す必要があります。 このためには、従業員 1 人あたり(もしくは時間あたり)の生産性を上げることが必要です。すなわち、「労働生産性」の向上です。
出所:経済産業省「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」
そして、労働生産性を定量的に計るために、「労働生産性」=「一人当たりの付加価値額」として計算する以下の計算式が紹介されています。
また生産性向上を以下の式のように考えることができると示しています。
生産性向上を上記のような式で捉えると、労働生産性を向上するためには大きく以下の二つの方向性が存在すると考えることができます。
- 付加価値の向上:提供するサービスの価値を増やす(売上の向上)
- 効率の向上:時間や工程の短縮(コストの削減)
少し教科書的な分析ではありますが、生産性と曖昧に語るに留めるよりは解像度が上がり、具体的にどんなことを検討していかなければいけないのかの思考を進めるためには有効であると考えられます。
これまで、自社の労働生産性について先述のような方法で定量的に計算したことがなかった事業者様はぜひ、この機会に計算してみてはいかがでしょうか?
これまでの過去3〜5年分の計算をしてみると、自社の労働生産性は上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのか見えてくることと思います。下降傾向にある場合には、補助金を活用した投資なども視野に入れながら、次章にてご紹介する具体的手法を参考に生産性の向上施策につながるような新たな取組みについて検討してみることをお勧めします。
付加価値額の計算方法については、過去の当社記事でも詳細に解説しておりますので、ぜひご一読ください。
生産性を高めるための具体的手法とは?
上記のような二つの方向性に分けた上で、労働生産性を高める為にどんな手法が考えられるのか、気になるところですよね?
付加価値を向上させる観点では、「誰に提供するかの視点」「何を提供するかの視点」「どうやって提供するかの視点」に分けて、8つの大まかな手法と具体例が示されています。
また効率の向上の観点では、「サービス提供プロセスの改善」と「IT利活用」による具体的な施策事例が紹介されています。
(出所:経済産業省「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」)
具体例としてガイドラインでは以下のような事例が紹介されています。他にも様々な事業者の施策例が示されているので、自社と同じ業種業界の例はチェックしておいて、取り組みの参考とされると良いでしょう。
<(1)新規顧客層への展開>
高齢化や有職女性の増加に伴い、なかなか開店時間に買い物ができない顧客のために、地域のスーパーマーケットがネットショップを開設する。リテールサポート(取 引先への経営支援や提案活動)を手がける卸売業等とも連携して、地域内の顧客から の注文を迅速に配達。
<(2)商圏の拡大>
リサイクル品を扱う小売業が、顧客が直接来店しなくてもオンラインで売値の査定 が可能なインターネットオークションの方式で商品を販売するサービスを提供。また、会員登録データベースの整備と購入実績の分析により、会員の趣向に合った商品が入荷した際に電子メールで通知。
<(3)独自性・独創性の発揮>
寝具の小売業が、枕に内蔵した端末を使って睡眠時の情報を取得することで、枕とともに充実した睡眠を手助けする新たなサービスの提供を開始する。
<(4)ブランド力の強化>
鮮魚の卸売業者が、全国の各港と情報ネットワークを構築して、産地からの鮮魚情報・映像情報をリアルタイムで顧客に提供することで、卸売業者が直接に買い手のニーズとのマッチングを進める。
<(5)顧客満足度の向上>
旅館が、クラウドを活用した顧客関係管理システムを活用し、従業員がタブレット 型端末を活用して顧客ごとの購買履歴や嗜好データを確認できるようにして、高品質な接客サービスを実施する。
<(5)顧客満足度の向上>
タクシー会社が、ICカード携帯電話機を用いた配車システム、非接触型 IC カード によるクレジット決裁システムを導入することで、電話受注や決算の時間を短縮し、 利用者の利便性を向上させる。
<(6)価値や品質の見える化>
ゴミ収集車が産業廃棄物を収集する際の価格は従来「言い値方式」だったが、高精度な 計量器の設置と、カーナビ改良による回収先ルート・顧客情報と回収量の紐付により、料金 の明確化、請求事務の自動化を行う。
<(7)機能分化・連携>
複数の中小企業が連携して共同利用するクラウドシステムを構築することにより1社あたりの費用負担を軽減するとともに、情報の共有と分析を通じ複数の企業が協力し販路の開拓や仕入れ、連携により実現される新たなサービスの提供を行うことで収益力を強化する。
<(7)機能分化・連携>
地域の基幹病院が、外来診療から急性期の治療(入院)、回復期のリハビリテー ション病院まで、電子カルテや県内他施設との医療情報共有ネットワークなどの IT 利活用で連携し、高度で充実した医療サービスを提供している。
(出所:経済産業省「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」)
全ての手法に共通して大事なこととして、状況に応じて事業計画を修正できるように、事前に事業改善にあたっての手順としてPDCAサイクルを定め、設定した目標に沿って柔軟かつ継続的に施策実施をすることが示されています。
ものづくり補助金とガイドラインの関係性とは?
ものづくり補助金の技術面の審査項目において、以下の通り明確に「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」又は「中小企業特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った取り組みであるかを審査することが示されています。
(出所:全国中小企業団体中央会「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (16次締切分)」)
また、申請時に提出する事業計画の「その1:補助事業の具体的取組内容」の中でも以下のように指示があり、実施事業とガイドラインの関連性を示す必要があります。10個の手法全てとの対応を示すことは難しいですが、採択に向けてはいくつかの項目とは対応することを記す必要があるでしょう。
応募申請する事業分野(「試作品開発・生産プロセス改善」又は「サービス開発・新提供 方式導入」)に応じて、事業計画と「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」又は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を説明してください。
(出所:全国中小企業団体中央会「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (16次締切分)」)
上記のような指示から、ものづくり補助金の申請検討をする事業者にとって、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」は、公募要領とあわせて読み込んでおくべき、極めて重要な資料であると言えます。
おわりに
今回は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」とものづくり補助金の関係性について解説しました。いかがでしたでしょうか。
ものづくり補助金を検討する上で極めて重要な資料ですが、公募要領をよく読み込まないと「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」の重要性については見落としてしまいがちです。
本記事をものづくり補助金の申請時に参考としていただけますと幸いです。
HKSではものづくり補助金以外にも様々な補助金の申請支援を行っています。
補助金の活用に関心が湧きましたら、ぜひ一度ご相談ください!
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。
補助金活用支援会(HKS)パートナー、中小企業診断士