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議事録は「若手の修行」ではなく、AIに任せる時代へ

旧来型の「精神論」的な新人教育や、非効率な働かせ方は、社会的にも強く問い直されるようになってきました。最近の新人は、昭和型の働き方を無理に押し付けると、LINEメッセージや退職代行を利用して簡単に退職してしまうなどの声を直接聞くようになってきました。

議事録作成においても、若手に対して、

「議事録は若手の仕事だろ?」
「書き直し。ニュアンスが違う。もう一回」
「また書き直し。フォーマットがよくない」

といった、“修行”と称した終わりの見えない議事録直しを強いていないでしょうか。これは、若手の時間を奪うだけでなく、組織としての生産性をもむしばみます。一方で、Microsoft 365 Copilot有料版(セキュリティ確保のため)を活用すれば、裏側ではGPT-5 など、すでに人間の平均知能をはるかに上回る性能を持つ最新世代の大規模言語モデルが動いており、Microsoft Teamsの文字起こしファイルをAI エージェントに読み込ませ、そのファイルを理解したうえで要約・議事録作成を行えるようになってきています。
経営者・管理職が今後集中すべきことは、

  • 「議事録を書かせること」ではなく「良い議論を生み出し、よりよい意思決定すること」こそが仕事

  • そのために、議事録作成は AI エージェントに任せ、人間は“本質的な問いを立てる・決める”側にシフトすべき

という意識改革が必要です。

本記事では、その具体的な一歩として、
Microsoft 365 Copilot で、Teams の文字起こしから議事録を自動作成するAI エージェント(カスタム Copilot)を作る手順を、丁寧に解説していきます。

今回お伝えしたいポイント1. 議事録 AI エージェントによる議事録作成の全体像

2.作業前の事前チェック

3.議事録 AI エージェントと議事録の作り方

4.実務で使うときのコツと注意点

5.新人に「議事録の書き直し」をさせるか、AI に任せるか

議事録 AI エージェントによる議事録作成の全体像

今回作るのは、ざっくり言うとこんな仕組みになります。

  1. Teams 会議で「ライブ文字起こし」をオンにして会議を実施
  2. 会議後、文字起こしファイル(Transcript)が Microsoft 365 上に保存される(Teams会議の録画画面例の右上のダウンロードボタンから「会議の文字起こしファイル」をダウンロード可能)
  3. Copilotで「議事録AIエージェント」を作成
  4. 「会議の文字起こしファイル」を議事録AIエージェントのチャットプロンプト入力欄にドラッグ&ドロップ
  5. 「この会議の議事録を作って」などと指示すると、指定した「会議の文字起こしファイル」を読み込み、所定のフォーマット(過去の議事録ファイルで指定してもよい)で議事録を作成

つまり、一連の作業として、
「Teams が“耳”、Copilot のAIエージェントが“書記”、人間は“最終チェック・補正”」
という分業体制を作るイメージです。

作業前の事前チェック

  1.  ライセンス・権限
    • Microsoft 365 Copilot が利用可能なテナントであること
    • Copilotの「エージェントの作成」機能を利用できるライセンスがあること
    • Teams で会議・ライブ文字起こしを有効化できる権限があること(テナント管理者が制御)
  2. Teams の文字起こし機能
    • Teams 会議中に ライブ文字起こし をオンにすると、会議終了後も Copilot で会議内容を振り返ることができます。
    • 文字起こしは、会議の「詳細」画面の[録画と文字起こし]タブなどから閲覧できます。
  3. セキュリティ
    • Microsoft 365 Copilotにエンタープライズデータ保護(*)が適用されていることを確認します。

(*)Microsoft 365 Copilot/Microsoft 365 Copilot Chat における EDP(Enterprise Data Protection) とは、組織(エンタープライズ)が利用する際のデータ保護・コンプライアンスの枠組み・仕組みを指します。

Microsoft 365 Copilotの画面右上にエンタープライズデータ保護の適用が表示

 

議事録 AI エージェントと議事録の作り方

ここからは、実際の作業手順を「①Teams で会議文字起こし → ②会議文字起こしファイルのダウンロード → ③Copilotの「エージェントの作成」機能で議事録AIエージェント作成 → ④議事録AIエージェントで議事録作成(システムプロンプト設計) → ⑤ユーザプロンプト設計 → ⑥テスト実行して精度を向上」という流れで説明します。

①Teams で会議文字起こし

  1. Teams 会議をスケジュールOutlook または Teams から通常通り会議招集
  2. 会議開始後、上部メニューから[… その他]→[文字起こしの開始] を選択
  3. 会議終了後、Teams の対象チームに紐づく専用のチームサイトを開きます。
  4. 次に、チームサイトの投稿タブの「会議の詳細」をクリックし中身を表示 → [トランススクリプト]をクリック→ テキストとしての文字起こしを確認できます。

※現時点では、Copilot のカスタム エージェントを「会議の参加者」としてリアルタイムで参加させることはできません。エージェントは、保存された文字起こしを後処理する形で活用します。


②会議文字起こしファイルのダウンロード

  1. 会議後に、Teams の対象チームに紐づく専用のチームサイトを開きます。
  2. 次に、チームサイトの投稿タブの「会議の詳細」をクリックし中身を表示 → [トランススクリプト]をクリック→ テキストとしての文字起こしを確認し、[ダウンロード]からファイルダウンロードできます。

[トランススクリプト]をクリック後の画面

 


③Copilotのエージェント作成機能で新しいエージェントを作成

  1. Microsoft 365 Copilot にアクセス:ブラウザで https://m365.cloud.microsoft/chat/?auth=2 へアクセス
  2. 対象テナントでサインイン:左側のメニューから [エージェントの作成]をクリック
  3. AIエージェントの構成を設定(例):

名前:議事録AIエージェント

説明Teams 会議の文字起こしから、定型フォーマットの議事録を生成するエージェントです。

指示:詳細は以下の「プロンプト設計」に記載

[エージェントの作成]をクリック後の画面


④エージェント「役割」と議事録フォーマットの設計(システムプロンプト設計)

ここが一番“人間の知恵”を発揮すべきポイントです。
エージェントに対して、次のような「指示文(システムプロンプト)」を設定します(例:そのままコピペして調整できます)。なお、Teamsの会議文字起こしファイルには発言者の記録しかないため、AIエージェントによる議事録作成後、会議の出席者・欠席者は人間による補正が必要となります。

あなたは日本語話者のビジネス向け「議事録作成エージェント」です。

■ 目的
– Microsoft Teams の会議文字起こしファイルを読み込み、
– 経営会議/プロジェクト会議で利用できるレベルの議事録を、
– 日本語で分かりやすく、簡潔かつ漏れなく作成します。

■ 出力フォーマット(→過去の議事録フォーマットを記載)
1. 会議概要
– 会議名:
– 日時:
– 場所/オンライン:
– 出席者:
– 欠席者:

2. 議題一覧
– 議題1:
– 議題2:…

3. 議題ごとの内容
### 議題1:<タイトル>
– 議論の要点(3〜5行)
– 参加者の主な意見
– 結論/決定事項

### 議題2:<タイトル>
(同様に)

4. 決定事項(Decision)
– [D-1] 〜
– [D-2] 〜

5. アクションアイテム(ToDo)
– [A-1] 担当者:期限:内容:
– [A-2] 担当者:期限:内容:

6. 次回までの宿題・宿題事項
– 〜

■ ルール
– 文字起こしに含まれる発言を、誤字脱字は整えつつ、発言者ごとのニュアンスを保って要約してください。
– 決定していない事項は「検討中」と明記し、決定事項と混同しないでください。
– 雑談・アイスブレイク部分は議事録には含めず、本題のみを要約してください。
– 会議文字起こしに日付・出席者名が明示されている場合は、必ず「会議概要」に反映してください。

 

⑤サンプル質問(ユーザプロンプト設計)を用意する

AIエージェントの使い勝手を高めるために、「よく使う質問(ユーザプロンプト設計)」をあらかじめサンプルとして登録しておくと便利です。

  • 2025/11/23 の「経営会議」の文字起こしから、上記フォーマットに従って議事録を作成してください。

  • 最新の「プロジェクトX 定例会」の文字起こしを使って、議事録を作成し、特に決定事項とアクションアイテムを丁寧に書き出してください。

  • この会議の内容を、部門長向けに A4 1枚で読めるダイジェスト版に要約してください。

 

⑥テスト実行して精度を向上する

  1. Copilot のエージェント画面で [テスト]ウィンドウ を開きます。
  2. プロンプト入力に会議文字起こしファイルをアップロードし、先ほどのサンプル質問を入力してみます。
  3. 期待通りのフォーマット・粒度で議事録が作成されるかチェックし、精度を向上します。
  • フォーマットが崩れる → 出力フォーマットの指示を少し厳密にする
  • 決定事項が弱い → 「決定事項は必ず箇条書きで書く」等を追加といった具合にプロンプトを調整します。

実務で使うときのコツと注意点

「議事録を AI に任せる」ことをチームの前提にする

  • 会議の冒頭で「議事録は AI が作るので、皆さんは記録ではなく“何を決めるか”の議題に集中してください」と宣言する

  • 若手には「議事録を作成・清書する」のではなく、
    「AI にどう指示すればよい議事録になるか」「会議で活用できる議事録になるか」を設計させる(プロンプト設計・テンプレ設計)

これは、単なる効率化ではなく、若手の思考力・議論構築力のトレーニングにもなります。

テンプレートは 80 点スタートで、徐々に改善する

  • 初期テンプレートは完璧を目指さず、「80 点」でとりあえず回し始める

  • 毎週の定例で、「決定事項がわかりにくい」「アクションの担当者と期限が抜けがち」などのフィードバックを AI エージェントの指示文に反映していく

セキュリティ・コンプライアンスの観点

  • AIエージェントには、誰がどの会議文字起こしファイルを読み込ませるか、
    最小権限の原則(least privilege) を必ず徹底する

  • 経営会議・人事会議など、機密性の高い会議については、

    • そもそも文字起こしを行うかどうか

    • 誰がどのAIエージェントを活用し、どのファイルを読み込ませて議事録作成をするか
      ポリシーとして明文化しておきましょう。

新人に「議事録の書き直し」をさせるか、AI に任せるか

本記事で解説したとおり、

  • Teams の会議文字起こし機能

  • Copilotによる議事録 AI エージェント

を組み合わせることで、長時間かけていた議事録作成について、

「会議が終わって 5 分後には、フォーマットが揃った議事録が手元にある」

という状態は、もはや特殊なことではなくなりつつあります。

経営者・管理職が考えるべきは、

  • いつまで「議事録は若手の修行」として人間にやらせるのか

  • いつから「議事録は AI の仕事」「AI にどう仕事をさせるかが人間の仕事」と定義し直すのか

というタイミングの問題だけです。

もしまだ一歩目を踏み出していないのであれば、まずは少人数のプロジェクトチームで、ここで紹介した「議事録AIエージェント」を試してみてください。
1〜2 回プロンプトを調整するだけで、「二度と手動で議事録を書きたくない」と思うレベルの体験になるはずです。

おわりに

IT導入補助金の獲得と同様に、AIを活用した業務効率化も考えてみてはどうでしょうか。本記事が業務効率化に向けたきっかけ作りや若者やAIとの向き合い方のヒントになれば幸いです。AI導入支援など補助金以外のご相談もお気軽にお声がけください。私たちは中小企業の皆さまの伴走パートナーとして、具体的な解決策をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。

 

今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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