HKSブログ
【既存事業の延長では弱い!】新事業進出補助金の採択傾向と、採択されやすい企業とは

今回は、「中小企業新事業進出促進補助金」について、あらためて整理します。
HKSブログでも以前、本補助金の概要を解説(以下リンク参照)しましたが、その後、第1回・第2回公募の採択結果が公表され、実際にどのような業種・事業が採択されているのかが見えてきました。
今回は、補助金の概要だけでなく、過去の採択実績を踏まえて、どのような会社が採択されやすいのか、掘り下げて解説します。
今回お伝えしたいポイント1. 新事業進出補助金の概要
2.過去の補助採択者の振り返り
3.採択されやすい企業とは
本補助金は、単なる設備更新や既存商品の横展開を支援する制度ではありません。既存事業とは異なる事業への前向きな挑戦であり、かつ新市場・高付加価値事業への進出であることが求められています。したがって、「新しいことをやるつもりだから対象になるはず」と考えて申請を進めると、制度趣旨とのズレが生じることがあります。
そこで本記事では、採択結果から見える傾向を整理し、採択率を高めるための考え方まで解説します。
なお、本補助金の概要については過去に解説した記事がございますので、そちらもご参照ください。こちら
新事業進出補助金の概要
中小企業新事業進出促進補助金は、既存事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出を支援する補助金です。
制度の中心にあるのは、「既存事業の延長線上で売上を増やすこと」ではなく、企業の次の柱になり得る新事業を立ち上げることです。
中小企業庁は、第4回公募要領の公表にあたり、既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出等に意欲を有する中小企業等を支援すると明示しています。
中小企業新事業進出促進補助金のホームページはこちら
また、事務局の説明会資料では、単に新製品を出すだけでは足りず、製品等の新規性と市場の新規性が重要だとされています。
具体的には、補助事業で取り組む製品・サービスが、申請企業にとって新しいものであり、かつ、それを売る市場や顧客層も既存事業と異なることが求められます。逆に、既存商品の製造量を増やすだけ、過去に扱っていた商品を再度扱うだけ、単なる製造方法の変更だけ、といったものは「新事業進出」としては弱く評価されやすいと示されています。
さらに、補助対象事業には、新事業進出要件のほか、付加価値額要件、賃上げ要件、事業場内最賃水準要件などもあります。したがって、「新事業らしさ」だけでなく、補助事業後にきちんと成長し、企業全体の付加価値向上や賃上げにつながる計画であることが必要です。
言い換えれば、本補助金は『アイデア支援』ではなく、『成長投資の支援』をする制度です。
2026年5月19日(火)より、第4回の申請受付が開始されますので、是非本記事を参照に、申請を検討してみて下さい。
【本補助金の概要】
※公募資料抜粋(こちら)
過去の補助採択者の振り返り
まず全体感として、第1回公募は3,006件応募、1,118件採択で、採択率は約37.2%、第2回公募は2,350件応募、832件採択で、採択率は約35.4%でした。回をまたいでも、採択率はおおむね3割台半ばで推移しており、「出せば通る補助金」ではありません。
一方で、事業再構築補助金の後継的な位置づけとして新設された背景から、『新規事業性が明確で計画の筋が通っている事業』には十分チャンスがある制度とも言えます。
業種別に見ると、第1回・第2回ともに製造業が最多で、建設業、卸売業・小売業が続きます。これは、既存の技術・設備を活かしながら、新たな市場へ進出しやすい業種が相対的に強いことを示していると考えられます。
他方で、宿泊業・飲食サービス業、情報通信業、学術研究・専門技術サービス業、医療・福祉なども一定数採択されており、「製造業しか通らない」わけではなく、幅広く採択されています。重要なのは業種そのものより、既存の強みを使って、別市場・別顧客・別収益モデルに入っているかです。
※補助金採択実績から抜粋
公開採択案件を見ると、採択されているのは「まったく畑違いの思いつき型」よりも、「自社の既存強みを土台にした新事業」が多いです。
たとえば第2回では、製造業が「半導体製造装置部品の精密加工事業への新規参入」、「特別高圧用配電盤の製造・販売による高付加価値市場への進出」で採択されています。いずれも既存の加工・製造ノウハウを活かしながら、より成長性・付加価値の高い市場に踏み出している点が共通しています。
また、飲食・小売・サービスでも採択例は多くあります。第1回では、「職人技術を活用したホテル・旅館向け魚下処理・加工品の製造販売」、第2回では「海外の富裕層が唸る高付加価値日本酒の開発とブランド戦略構築」などが採択されています。これは単なる店舗改装や販路拡大ではなく、顧客層・提供価値・収益構造が変わる新規事業として整理しやすい案件です。
採択されやすい企業とは
<具体的な事業の特徴>
まずは過去の採択事例から、採択されている事業の特徴を見ていきましょう。
全体的にみられる特徴は、既存の技術・ノウハウ・顧客理解を土台にしながら、新市場の開拓を目指す事業です。
具体的に、製造業であれば、既存の加工技術を使って半導体、防衛、航空、特別高圧設備など、より高付加価値な市場に進出する取り組み、飲食・小売・サービスでは、既存の店舗ビジネスの延長ではなく、加工品製造、BtoB化、ブランド再設計、海外市場開拓など、顧客層や収益構造が変わる取り組みが採択されています。
上記の特徴から判断すると、逆に採択されにくいのは、既存事業の延長に見える案件でしょう。
公募要領では、既存製品等の製造量や提供量を増やすだけ、過去に扱っていた製品を再度扱うだけ、単に製造方法を変えるだけ、といったものは新規性要件に該当しない例として示されています。つまり、「新しい設備を入れる」、「新しい店舗を作る」という表現だけでは足りず、その投資によって何が新事業になるのかを説明する必要があるということです。
<申請書の書き方>
申請書の書き方で特に重要なのは、既存事業と新事業の違いを明確に比較して示すことです。
説明会資料でも、事業計画書では写真や図表も活用しながら、既存事業と新規事業の相違点を分かりやすく説明すること、そして補助事業における製品等や顧客が既存事業とは異なること、新市場・高付加価値の具体性と実現可能性を示すことが重要だとされています。つまり、申請書では少なくとも、①既存事業と新事業の違い、②どのように新事業を成長させるか、③なぜ今投資が必要か、を具体的に記載すべきです。
さらに、具体性を持たせるために、客観データの添付は非常に重要です。
事業計画が優れていても、それを裏づける客観的なデータやエビデンスが不足していると評価が低くなる場合があります。市場規模、競合比較、受注見込み、既存技術とのシナジー、価格の妥当性、収益計画などを、文章だけでなく添付資料で補強することが採択率向上につながります。
実務上は、申請書を次の順で組み立てると通しやすくなります。
1.自社の既存事業と強みを簡潔に整理する。
2.新事業が既存事業の延長ではなく、新市場または高付加価値事業であることを示す。
3.市場性、競争優位性、実施体制、収益計画を説明し、それが賃上げや付加価値向上に繋がることを示す。
補助金はあくまで『手段』であり、会社全体の成長戦略の中で新事業がどの位置にあるのかが分かりやすい計画ほど評価されやすいです。
是非、以下表の『採択されやすい例』に、事業が該当しているか、確認してみて下さい。
【項目別の採択されやすい例、されにくい例(チェックポイント)】
さいごに
今回は「中小企業新事業進出促進補助金」についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
新事業進出補助金は、既存事業の延長ではなく、企業の次の柱になる新事業を後押しする制度です。各社にある自社の既存の強みを活かしながら別市場・別顧客・別収益モデルへ踏み出していく取り組みを支援する補助金です。企業の成長に資する補助金ですので、是非活用をご検討下さい。
なお、HKSでは補助金の申請支援において、多くの支援実績がございますので、よろしければご相談下さい!
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

補助金活用支援会(HKS)パートナー、中小企業診断士、認定経営革新等支援機関
ひとこと:資金繰り、事業計画の策定支援を得意としています。補助金制度を活用して、中小企業やスタートアップ企業の事業成長や経営改善、課題解決に貢献できるよう、分かりやすく役立つ情報を提供します。



