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【経営者必読】初めて人を雇うときの7つの準備―採用・手続き・助成金まで

今回は、初めて人を雇う経営者向けに、求人を出す前から入社後までに必要となる「人事設計」を7つのステップで整理します。あわせて、採用や人材育成、生産性向上などに活用できる補助金・助成金についても紹介します。

今回お伝えしたいポイント

  • 採用は人手補充でなく「人事設計」。7ステップで採用前から入社後まで整理する
  • 雇用形態は助成金の有無ではなく、経営目的から逆算して決める
  • 給与以外の付随コストも含めた採用総額で資金繰りを把握する
  • 労働条件・保険手続・教育計画を事前に整えることが定着率を左右する
  • 助成金は後付けでなく設計の一部。労働諸法令に基づく雇用関係助成金の申請代行は社労士の独占業務で、診断士・社労士と伴走する

はじめに 人を雇うことは、小さな会社にとって大きな投資

経営者が人を雇おうと考えるきっかけは、売上の増加、仕事量の増加、経営者自身の負担軽減、将来の幹部候補の育成など、会社によってさまざまです。

しかし、「忙しいから、とりあえず求人を出そう」と採用を急ぐと、任せる仕事や勤務条件が曖昧なまま採用が進み、入社後に「思っていた働き方と違う」というすれ違いが起こりやすくなります。

人を雇うということは、欠けた人手を1人分埋めることではなく、会社の「人事の設計」に着手することです。誰にどの仕事を任せ、どう評価し、どう育て、どう処遇するのか。その設計図がないまま採用だけを先に進めると、入社後に必ずどこかでひずみが出ます。

人を雇うときに最初にすべきことは、求人を出すことでも、助成金を探すことでもありません。任せる仕事、雇用条件、必要な費用、育成方法という人事の骨格を先に設計することです。補助金・助成金は主役ではなく、その設計をあとから後押ししてくれる存在にすぎません。

準備の全体像―採用は「人事設計」の入口

以下の7ステップは、単発の採用タスクではなく、一つながりの人事設計です。ステップ1〜3で「どんな役割を、いくらで、誰に任せるか」という骨格を決め、ステップ4〜6で「どう契約し、どう守り、どう育てるか」という仕組みに落とし込み、最後のステップ7で、その設計を後押しできる制度がないかを確認します。

この人事設計は、経営者お一人で抱え込むものではありません。事業計画や数値計画から役割と投資額を導く場面では経営の専門家である中小企業診断士が、契約・保険・助成金など労務面の実務では経営に詳しい社会保険労務士が伴走することで、絵に描いた計画で終わらせず、実行と定着まで見据えた人事設計にすることができます。

ステップ やること 陥りやすい失敗
1 なぜ雇うのかを明確にする 「忙しいから」だけで採用を決めてしまう
2 任せる仕事と雇用形態を決める 助成金に合わせて雇用形態を選んでしまう
3 採用にかかる総額を計算する 給与しか見ておらず資金繰りが狂う
4 労働条件と社内ルールを整える 契約書がなく口約束のまま採用する
5 労働保険・社会保険の手続を確認する 加入手続を採用後まで放置する
6 入社後の教育計画を決める 採用がゴールになり定着しない
7 計画に合う補助金・助成金を確認する 採用後に制度を知り、間に合わない

ステップ1 「なぜ雇うのか」を明確にする

最初に決めるべきは、正社員かパートかではなく、何を解決するための採用かです。経営者の事務作業を巻き取ってほしいのか、営業を強化して売上を伸ばしたいのか、現場の業務量を分担して残業を減らしたいのか、それとも将来の幹部候補を育てたいのか。目的が違えば、必要な人材のスキルも、提示すべき給与水準も、入社後の教育内容もまったく変わってきます。「どんな人を採るか」を先に考えると、採用基準が漠然としたまま求人を出すことになりがちです。そうではなく、「半年後、その人に何ができるようになっていてほしいか」を先に描き、そこから逆算して仕事内容や条件を組み立てることがポイントです。

決めるべき3項目

  • 採用によって解決したい経営課題(事務負担/売上不足/後継者育成など)
  • 半年後・1年後に「できていてほしいこと」の具体像
  • 目的を一緒に言語化する相手(幹部社員・中小企業診断士など)

 

ステップ2 任せる仕事と雇用形態を決める

担当業務、責任範囲、勤務場所、勤務日数・時間を具体的に洗い出したうえで、正社員、有期契約社員、パート・アルバイトのうちどの雇用形態が適しているかを検討します。ここで注意したいのは、「助成金があるから有期契約にする」というように、支援制度を起点に雇用形態を選んでしまうことです。雇用形態は、あくまで会社が期待する役割と働き方に合わせて決めるべきものです。また、試用期間と有期雇用契約を混同しないよう注意し、将来的に正社員へ転換する可能性があるなら、転換の時期や判断基準もあらかじめ決めておきます。短時間勤務であっても、労働時間などの条件次第では雇用保険や社会保険の加入対象になる点にも留意が必要です。

決めるべき3項目

  • 担当業務と責任範囲
  • 雇用形態(正社員/有期契約/パート・アルバイト)と勤務日数・時間
  • 将来の正社員転換の有無と判断基準

ステップ3 給与以外を含めた「採用総額」を計算する

経営者が見落としやすいのが、給与以外にかかる費用です。会社が負担する社会保険料や労働保険料、通勤費、求人広告や紹介会社に支払う費用、パソコンや制服などの備品費、給与計算・勤怠管理にかかる費用、研修費用、そして採用した人を指導する側の時間的コストまで含めると、想定より多くの負担が発生します。「月給25万円だから年間300万円」という単純な計算ではなく、こうした付随費用をすべて洗い出したうえで、資金繰りに無理がないかを採用前に確認しておくことが欠かせません。特に開業したての会社や資金に余裕がない会社ほど、採用直後の数か月をどう乗り切るかまで見積もっておくことが重要です。

決めるべき3項目

  • 給与・賞与・諸手当の総額
  • 会社負担の社会保険料・労働保険料
  • 求人費・備品・研修費などの付随コスト

ステップ4 労働条件と会社のルールを整える

採用する人が決まったら、労働条件通知書や雇用契約書を準備します。契約締結時には、賃金、労働時間、就業場所、業務内容などの明示が法律で義務づけられており、2024年4月以降は就業場所・業務の変更範囲や、有期契約の場合は更新上限についても明示事項に加わっています。労働条件の明示事項については、厚生労働省の「労働条件明示のルール」も確認しておきましょう。少なくとも契約期間、就業場所と仕事内容、始業・終業時刻や休日、給与・手当・締日と支払日、残業の有無、昇給・賞与の考え方、正社員転換の有無、退職に関する事項は、採用前に決めておく必要があります。従業員10人未満で就業規則の届出義務がない会社であっても、給与や休日、服務規律などの基本ルールは整えておくべきです。

決めるべき3項目

  • 労働条件通知書・雇用契約書の内容(賃金・労働時間・就業場所・業務内容など)
  • 給与・休日・服務規律などの基本ルール
  • 昇給・賞与・正社員転換・退職に関する取り決め

ステップ5 労働保険・社会保険などの手続きを確認する

労働者を1人でも雇うと、原則として労災保険の適用事業となり、労働保険の成立手続が必要になります。雇用保険の対象者を初めて雇う場合は、労働保険関係の手続を終えたあと、ハローワークへ適用事業所設置届と資格取得届を提出します。労働保険の成立手続については、厚生労働省の案内も確認できます。健康保険・厚生年金保険についても、法人か個人事業か、業種、従業員数、本人の労働時間などから加入要否を確認し、対象者であれば事業主が資格取得届を提出します。社会保険の加入要件や手続については、日本年金機構の案内も確認してください。あわせて、勤怠管理・給与計算の方法、賃金台帳や労働者名簿の整備、残業をさせる場合の36協定、有給休暇の管理体制も準備しておく必要があります。これらは採用後に慌てて対応するのではなく、採用前に専門家や関係機関へ確認しておくと安心です。

決めるべき3項目

  • 労災保険・雇用保険の加入手続(保険関係成立届・適用事業所設置届など)
  • 健康保険・厚生年金保険の加入要否
  • 賃金台帳・労働者名簿・36協定などの整備

ステップ6 採用後の教育計画を決める

採用は入社日がゴールではありません。特に小規模企業では経営者自身が忙しく、入社した人への説明や教育がどうしても後回しになりがちです。初日に何を伝えるか、最初の1週間で何を覚えてもらうか、1か月後にどのような状態になっていてほしいか、誰が仕事を教えるのか、業務マニュアルをどう準備するのか、試用期間や契約更新のタイミングで何を確認するのかを、あらかじめ決めておきましょう。採用はできたのに定着しないという会社の多くは、採用活動そのものではなく、入社後の受入体制に課題を抱えていることが少なくありません。

決めるべき3項目

  • 初日〜1週間で伝えること・覚えてもらうこと
  • 1か月後に期待する状態と、誰が教えるか
  • 業務マニュアルと、試用期間中に確認する項目

ステップ7 採用計画に合う補助金・助成金を確認する

最後のステップとして、ここまで整理してきた採用計画に合う補助金・助成金がないかを確認します。支援制度は主役ではなく、あくまで経営者が先に立てた人事設計を後押しするものとして位置づけるべきです。「使える助成金があるから採用する」のではなく、「この採用計画には、こういう制度が使える」という順番で検討することで、無理のない申請につながります。いずれの制度も、採用後に慌てて申請できるものではなく、計画届の提出など事前手続が前提になっているものが多いため、求人を出す前の段階で候補となる制度を洗い出しておくことが重要です。

決めるべき3項目

  • 採用計画に合う制度の有無
  • 計画届など事前手続の期限
  • 申請を任せる専門家(社会保険労務士)

採用・育成に活用できる助成金

採用や人材育成に活用できる代表的な制度を、目的別に整理しました。助成金・補助金は、人を雇えば自動的に受け取れるものではありません。対象者、雇用条件、申請時期などを、採用や設備の導入前に確認することが重要です。

制度名 活用できる場面 主な支援内容 申請前のチェック
キャリアアップ助成金(正社員化コース) 有期雇用労働者などを正社員へ転換する 重点支援対象者を有期雇用から正社員へ転換した場合、1人当たり最大80万円

一定の要件を満たすと、制度新設に対する加算もあります。
・正社員転換制度:20万円
・多様な正社員制度:40万円
・情報公表:20万円

・キャリアアップ計画書を取組前日までに提出
・転換制度を就業規則等に規定
・正社員と有期社員の定義や賃金条件を事前に確認
人材開発支援助成金(人への投資促進コース) 入社後に、業務に必要な知識・技能を習得させる 訓練内容などに応じて、経費の45~75%を助成。

賃金助成がある訓練では、中小企業の場合、1人1時間当たり800円または1,000円などが支給されます。

・原則として訓練開始前に計画を提出
・コースごとに対象訓練、助成率、手続期限が異なる
・研修を申し込む前に対象になるか確認
特定求職者雇用開発助成金 高年齢者、障害者、母子家庭の母など、就職が難しい求職者を雇用する 高年齢者や母子家庭の母などは、1年間で60万円が目安。

重度障害者などは、対象者や労働時間に応じて3年間で最大240万円となる場合があります。

・ハローワーク等の紹介による雇入れが必要
・対象者によって要件や支給期間が異なる
・60歳以上の対象者は、2026年5月以降の紹介要件に注意
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) 安定就職が難しい求職者を、一定期間試行的に雇用する 原則として、1人当たり月額4万円を最長3か月。

母子家庭の母や父子家庭の父などは、月額5万円となる場合があります。

・事前にトライアル雇用求人を提出
・ハローワーク等の紹介が必要
・通常採用した後からトライアル雇用へ変更することはできない

 

賃上げ・省力化に活用できる補助金・助成金

制度名 活用できる場面 主な支援内容 申請前のチェック
業務改善助成金 事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上につながる設備を導入する 助成率は4分の3または5分の4。

助成上限は、賃金の引上げ額や対象労働者数に応じて最大600万円です。

・2026年9月1日から受付開始予定
・賃金引上げ前に申請が必要
・対象労働者、引上げ額、導入設備の要件を確認
中小企業省力化投資補助金 人手不足を補う設備やシステムを導入し、単純作業を減らす カタログ注文型
補助率2分の1、上限500万~1,000万円。一定の賃上げを行う場合は、上限750万~1,500万円。一般型
補助率2分の1~3分の2、上限750万~8,000万円。一定の賃上げを行う場合は最大1億円
・カタログ注文型と一般型で対象設備や申請方法が異なる
・カタログ注文型は随時申請
・一般型は公募回ごとに審査
・設備を発注する前に申請条件を確認

※記載した金額は、2026年度における中小企業の主な支給額・補助額の目安です。企業規模、対象者、労働時間、賃金引上げ額、訓練内容などによって支給額や要件は異なります。また、制度内容が変更される場合があるため、実際の申請に当たっては最新の公募要領や支給要領をご確認ください。

雇用関係助成金の申請代行は、社会保険労務士の専門業務

厚生労働省所管の雇用関係助成金など、労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成や提出代行を、報酬を得て業として行うことは、社会保険労務士または社会保険労務士法人に認められた業務です。制度に精通した専門家が関わることで、就業規則や雇用契約の内容と受給要件との整合性を確認しやすくなり、不支給リスクの回避にもつながります。人事設計の段階から相談することで、助成金は後付けの申請作業ではなく、経営計画の一部として機能します。

さいごに

補助金や助成金は、人を雇えば自動的にもらえるものではありません。採用前に、任せる仕事、雇用条件、必要な費用、教育方法という人事の骨格を整理し、その設計に合う制度があるかを確認することが大切です。

人を雇うことは、単なる人手の補充ではなく、会社の人事を設計し、将来の組織をつくる第一歩です。そしてその設計は、経営者一人で仕上げるものではありません。経営の専門家である中小企業診断士、そして雇用関係助成金の申請代行を専門業務とする社会保険労務士とともに立てていくことで、法令対応にとどまらず、経営そのものへの投資になります。求人を出す前に、一度「どのような会社にしたいのか」から考えてみましょう。

なお、HKSでは、多くの支援実績がございますので、よろしければご相談下さい!

今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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