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来る補助金申請も有利に!経営革新計画と経営力向上計画の違いをあらためて解説

中小事業者の事業の成長や効率化のための国の支援制度にはさまざまなものがあります。その代表的なものに「経営革新計画」と「経営力向上計画」があります。言葉が似ているので違いがわかりにくいのですが、簡単に書くと、経営革新は新事業経営力向上は既存事業が対象です。この制度は補助金をはじめさまざまな国の支援が受けられます。

来期予算では各種補助金が再開されるとの情報もあり、「新しい事業に挑戦したい」「業務を効率化して利益を上げたい」といった具体的な目標をお持ちの方は、これらの制度を検討してみる価値があります。今回のブログでは、この2制度の違いと、認定を受けることで得られる具体的な支援内容をご紹介します。

なお本ブログの記載内容は両制度について概要を抜粋し要約したものです。具体的な内容については中小企業庁のホームページを確認し、認定支援機関などに相談してください。

経営革新と経営力向上の違い

経営革新計画と経営力向上計画は、いずれも「中小企業等経営強化法」に基づいて定められた中小企業支援制度ですが、目的や取り組み内容が異なります。それぞれの法的な定義や特徴を詳しく見ていきましょう。

経営革新 経営力強化
定義 事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること 事業者が、事業活動に有用な知識又は技能を有する人材の育成財務内容の分析の結果の活用、商品又は役務の需要の動向に関する情報の活用、経営能率の向上のための情報システムの構築その他の方法
目的 新事業活動による売上や利益の増加、雇用の創出など、事業規模の拡大・向上 既存事業の生産性向上などによる効率性・収益性の向上
対象
  • 新商品の開発または生産
  • 新役務の開発または提供
  • 商品の新たな生産または販売方式の導入
  • 役務の新たな提供方式の導入
  • 技術に関する研究開発及びその成果の利用、その他の新たな事業活動
  • 人材育成
  • コスト管理等のマネジメントの向上
  • 設備投資

など

留意点 認定を受けるには、経営の「相当程度の向上」が必要

  • 付加価値額の増加
    (例:3年以内に9%以上の増加)
  • 給与支給総額の増加
    (例:3年以内に4.5%以上の増加)

※付加価値額:営業利益+人件費+減価償却費
※給与支給総額:役員及び従業員に支払う給料、賃金及び賞与並びに給与所得とされる手当(残業手当、休日手当、家族(扶養)手当、住宅手当等)の総額

これらの制度は、事業の成長や効率化を促進するための大きなサポートとなります。どちらの計画を選ぶかは、対象事業の取り組み内容や事業目標に応じて検討する必要があります。

経営革新計画のメリットと申請手続き

経営革新計画の認定を受けると、新規性を伴う取り組みを支援する以下の制度を活用できます。

保証・融資の優遇措置 信用保証制度の特例 信用保証協会による保証枠が拡大され、融資の円滑化が期待できます(保証割合の拡充など)。
日本政策金融公庫の特別利率による融資制度 計画認定を受けた企業は、日本政策金融公庫から有利な条件での融資を受けられる可能性があります。
高度化融資制度 共同で工場団地を建設したり、商店街にアーケードを設置する事業などへの、長期・低利での融資。
食品等流通合理化促進機構による債務保証 食品製造業者等への、食品等流通合理化促進機構による債務保証
海外展開に伴う資金調達の支援措置 スタンドバイ・クレジット制度(株式会社日本政策金融公庫法の特例) 外国関係法人等が、現地(海外)の金融機関から期間1年以上の長期資金を借入する際、公庫が信用状を発行しその債務を保証する制度。
クロスボーダーローン制度 中小企業者の外国関係法人等に対し国内親会社を経由せず、公庫が直接貸付けを行う制度。
中小企業信用保険法の特例 国内の金融機関から海外直接投資事業に要する資金の融資を受ける際、海外投資関係保証の限度額引き上げ
日本貿易保険(NEXI)による支援措置 現地(海外)の金融機関から借り入れを行う際に、地銀等の保証に加え、株式会社日本貿易保険(NEXI) が、海外事業資金貸付保険を付保する制度。
販路開拓を行う場合の支援措置 販路開拓コーディネート事業 商品・サービスを持つ企業のマーケティング企画から、首都圏・近畿圏を舞台に想定市場の企業へのテストマーケティング活動までの支援。
新価値創造展(中小企業総合展) 販路開拓、業務提携といった企業間の取引を実現するビジネスマッチングの機会を提供するイベント(展示会)です。

 

なお、これらの制度を活用するには、経営革新計画で「該当する優遇措置を活用する事業」を行う計画をたてる必要があります。例えば、海外展開の支援措置を希望する場合は、海外展開を含む経営革新計画でなければいけません。

このほかにも、起業支援ファンドや中小企業投資育成株式会社からの投資の可能性があります。また、過去、ものづくり補助金や事業再構築補助金の加点項目となっていましたので、これから補助金を検討される事業者様は一考の価値があります。

<申請手続き>

詳細な手続きは中小企業庁「経営革新計画進め方ガイドブック」をご覧ください。また、所轄都道府県のホームページを必ず確認してください。

  1. 都道府県担当部局等へ問い合わせ(申請先の確認)
    経営革新計画の申請先は、事業所の所在地に応じて以下のいずれかとなるため、相談が必要です。

    1. 都道府県(単一の事業者、単一都道府県の複数事業者)
    2. 中小企業庁や経済産業局(複数事業者で広域的な事業を展開する場合)
  2. 必要書類の準備
    下記の書類を準備します。都道府県独自書式もあるため、申請先に確認必要です。

    1. 経営革新計画
    2. 実施計画
    3. 経営計画及び資金計画
    4. 設備投資計画及び運転資金計画
    5. その他必要書類
  3. 申請書提出
    作成した書類を所轄の都道府県または経済産業局に提出します。提出方法は、郵送が基本ですが、都道府県によっては電子申請が可能な場合があります(詳細は各自治体や経済産業局のウェブサイトで確認してください)。
  4. 審査と承認
    提出後、計画の審査が行われます。審査は約1〜2か月で完了します。

審査では計画の新規性(市場や技術面での革新性があるか)、実現可能性(具体的かつ実行可能な計画であるか)、数値目標の妥当性(売上や利益の目標が現実的か)が評価されます。そのため、商工会議所や認定支援機関に申請書作成や計画の具体化の相談をするとよいでしょう。

なお経営革新計画については、こちらのブログ記事もぜひ参考にしてください。

経営力向上計画のメリットと申請手続き

経営力向上計画の認定を受けると、生産性向上などを目指す企業を支援する以下の制度を活用できます。

税制措置 中小企業経営強化税制 法人税(個人事業主の場合には所得税)について、一定の設備について即時償却または取得価額の10%の税額控除が選択適用可能。
事業承継等に係る不動産取得税の特例 他者から事業を承継するために、土地・建物を取得する場合、不動産取得税の軽減措置を利用することが可能。
中小企業事業再編投資損失準備金 経営力強化計画に基づき株式等を取得し、かつこれを事業年度末まで引き続き有している場合において、株式等の取得価額として計上する金額の一定割合の金額を準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額はその事業年度において損金算入可能。
金融支援(※特定事業者向けの場合)

日本政策金融公庫による融資 経営力向上計画の認定を受けた事業者が行う設備投資に必要な資金について、融資を受ける事が可能。
中小企業信用保険法の特例 経営力向上計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられる。
中小企業投資育成株式会社法の特例 資本金額が3億円を超える株式会社(特定事業者)も中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることが可能。
日本政策金融公庫(中小企業事業)によるスタンドバイ・クレジット 海外支店又は海外子会社が公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける場合に、公庫が信用状を発行。
日本政策金融公庫(中小企業事業)によるクロスボーダーローン 海外子会社が、経営力向上計画等の実施に必要な設備資金および運転資金について、直接融資を受ける事が可能。
法的支援 許認可承継の特例 一部業種で、事業承継を含む認定を受けその内容に従い承継する場合は、当該許認可に係る地位をそのまま引き継ぐことが可能。
組合発起人数の特例 事業協同組合、企業組合又は協業組合を設立する場合には、通常、最低4人必要とされている発起人の人数が3人でも可能。
事業譲渡の際の免責的債務引受けの特例 事業譲渡された経営資源を活用する取組みについて、企業が債権者に対して通知(催告)し、1ヵ月以内に返事がなければ債権者の同意があったものとみなせる

※特定事業者

なお、これらの制度を活用するには、経営力向上計画の認定後に資産取得するなどさまざまな制約があるため、必ず中小企業庁発行の「税制措置・金融支援活用の手引き」をご参照するとともに、商工会議所や認定支援機関に相談をすることを推奨します。

こちらも、過去、ものづくり補助金の加点項目となっていましたので、これから補助金を検討される事業者様は一考の価値があります。

<申請手続き>

詳細な手続きは中小企業庁HPの「経営力向上計画策定の手引き」をご覧ください。

  1. 事業分野、事業分野別指針の確認
    経営力強化計画は、事業分野別に指針があるため、まずその確認をします。

    1. 日本標準産業分類」で、該当する事業分野を確認する
    2. 事業分野に対応する事業分野別指針を確認する
  2. 必要書類の準備
    下記の書類を準備します。

    1. 経営力向上計画に係る認定申請書
      (現状認識、目標・指標、実施方法、資金額・調達方法、設備などを記載する)
    2. その他必要書類
  3. 申請書提出
    各事業分野の主務大臣宛に計画申請書(必要書類を添付)を提出します。具体的な申請先は中小企業庁HPの「事業分野と申請先」を確認します。
    基本電子申請GビズIDが必要ですが、一部の省庁宛て・都道府県経由が必要な申請等、一部の申請については電子申請対応していないようです。
  4. 審査と承認
    提出後、計画の審査が行われます。審査は約30日です。

経営力向上計画については、こちらのブログ記事もぜひ参考にしてください。

さいごに

経営革新計画は、中小事業者が新事業に取り組み、付加価値創出や利益の向上を目的に策定されるため、新規性・革新性を説明する必要があります。また、既存事業の商品やサービスの開発などは対象になりません。

一方、経営力向上計画は現状を改善し経営力を向上させるという目的ですので、逆に革新性や新規性は問われないため、新規性・革新性の説明の必要はありません。また、経営革新計画よりも申請書に記載する内容のハードルは低くなります。

中小事業者にとって、事業の成長や効率化を目指す際に、国の支援制度を活用することは非常に有効です。特に「経営革新計画」と「経営力向上計画」は、認定を受けることで補助金申請だけではなく融資の条件が有利になるなどさまざまなメリットがあります。来年度の計画を検討されている事業者も多いと思いますが、これらの施策活用も検討されてみてはいかがでしょうか?

HKSには100人以上の多彩なバックグラウンドを持つ中小企業診断士が所属しています。経営革新計画や経営力向上計画、あわせて補助金などにも検討されたいということがありましたら、遠慮なくお問い合わせください。

 

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