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中小企業がDX推進に取り組む際の道しるべ DX認定制度を知ろう。
中小企業にもデジタル化の波が押し寄せる中、経営者の皆様はDX認定制度をご存知でしょうか?
今回は、その概要と申請方法についてご紹介します。
今回お伝えしたいポイント1.DX認定制度とは?
2.DX認定制度の申請方法
3.DX認定制度申請作成のポイント
DX認定制度は、中小企業においてもDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めるための支援策の一つです。
具体的には、デジタルを活用した業務改革や新規ビジネスの創出に取り組もうとする企業を評価し、認定する制度です。
その目的は、企業のデジタル活用を後押し加速させることで、経済全体の競争力を高めることにあります。
DX認定制度とは
DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。
「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX-Ready)」の事業者(これからDXに取り組んでいく体制が整備できた企業)を認定します。
認定事業者は、自社をアピールしたり、公的な支援措置を受けることができます。
出典)経済産業省「DX認定制度 申請要項」
DX認定制度の概要(運営体制)
DX認定制度に関わる「DX認定制度事務局」として、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)が、各種相談・問合せ対応及び認定審査事務を行います。
出典)経済産業省「DX認定制度 申請要項」を加工
DX認定のメリット
中小企業がDX認定制度で認定事業者になると、以下のようなメリットがあります。
・企業としての信用性が高まる
経済産業省が策定した指針に基づく、優良な取り組みを行う事業者として信用性が高まります。
またDX認定制度ロゴマークの使用することができます。
出典:経済産業省「DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html
・中小企業を対象とした金融支援措置
日本政策金融公庫による金利優遇や、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。
・税制による支援措置
DX認定制度の認定事業者は、「DX投資促進税制」の対象として税制優遇される可能性があります。
・人材育成のための訓練に対する支援措置
高度デジタル人材訓練の対象事業主としての要件を満たし、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の対象となります。
DX推進のための実践基準 デジタルガバナンス・コード2.0
「デジタルガバナンス・コード」とは、企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる実践すべき基準をまとめもので、現在は、2.0に改訂されています。
また、中堅・中小企業等のDX推進を後押しするために、デジタルガバナンス・コード2.0を活用する方法を具体的に図表で示した「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き2.0」も提供されています。こちらは、DXに取り組む際の課題やヒントが示されているので、DX認定に取り組む際は、「実践の手引き2.0」を参考にすると良いでしょう。
出典:経済産業省「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/contents.html
※手引き(本体)だけではなく、図表中心にエッセンスを凝縮した16ページの要約版、表裏1枚の概要版と、3バージョンが提供されています。
・図表中心にエッセンスを凝縮した「実践の手引き2.0(要約版)」内容例
出典:経済産業省「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き2.0(要約版)」
デジタルガバナンス・コードとDX認定制度の申請書の関係
デジタル認定制度の申請書は、デジタルガバナンス・コードの項目に対応しています。
出典:経済産業省「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」
DX推進に向けたアクションにつなげるDX推進指標
「DX推進指標」とは、経済産業省が策定した指標です。
自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進捗状況を自己診断するために利用できるツールで、以下の内容で構成されています。
① DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標 19項目
(「DX推進の枠組み」(定性指標)、「DX推進の取組状況」(定量指標))
② DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標 16項目
(「ITシステム構築の枠組み」(定性指標)、「ITシステム構築の取組状況」(定量指標))
・DX推進指標の構成
出典:IPA「「DX推進指標」とそのガイダンス」
使い方としては、IPAが提供するExcelファイル「DX推進指標 自己診断フォーマット」に回答を入力し、IPAに自己診断結果を送信すると、業種別・規模別のベンチマークデータとともに分析レポートが提供されます。
DXの推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を得ることができます。
DX認定制度の申請方法
DX認定制度の新規申請に向けたプロセス
DX認定制度の新規申請に向けたプロセスは、以下のとおりです((1)~(6)は、申請書の設問番号と対応しています)。
1.「経営ビジョン」を策定する。(1)
2.取締役会等の基幹承認を取り、「経営ビジョン」を公表※する。
3.「DX戦略」を策定する。「DX戦略」には以下の3点を含む
・DX戦略(2)、・体制・組織及び人材の育成・確保案(2)①、・ITシステムの整備に向けた方策(2)②
4.取締役会等の基幹承認を取り、「DX戦略」を公表※する。
5.「DX戦略」の達成度を測る。指標を決定する。(3)
6.公表※する。
7.経営者による「DX戦略」の推進状況等の対外発信※を行う。(4)
8.「DX推進指標」等による自己分析を行い課題把握する。(5)
9.サイバーセキュリティ対策を推進する。(中小企業の場合、SECURITY ACTION制度に基づく二つ星の自己宣言で代替可)(6)
※ここで言う公表、対外発信とは、ホームページ等に記載することです。
DX認定制度の新規申請方法とアップロード書類・フォーマット
GBizIDを事前取得した上で、申請は、以下の書類を用意して、Web サイト 【 DX 推進ポータル 】 にアクセスして申請します。
①認定申請書(Word 形式)
②自己診断結果記入済の DX 推進指標フォーマット( Excel 形式)
③DX申請チェックシートExcel 形式
④補足資料(「DX戦略」の公表資料、「SECURITY ACTION二つ星」等)(電子ファイル 形式自由)
標準処理期間は、概ね実働日で60日であるため、申請から認定取得までは、通常約4カ月以上として計画する必要があります。
審査の締日(通常15日ごろ)との兼ね合いで、さらに1ヶ月ずれることがあります。
また、申請書類に不備があった場合は、メールによる不備連絡後、不備内容に応じて再申請の準備に時間を要することが想定されますので、その分期間が延びる可能性があります。
DX認定制度申請作成のポイント
DX認定制度の申請は、「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」、「DX認定制度FAQ(よくある質問)」を参考に、「認定申請書」と「申請チェックシート(新規・更新共通)」を作成します。
DX推進制度FAQ(よくある質問)を一読する
DX推進制度FAQ(よくある質問)は、これまで寄せられた質問及び想定される質問を整理してまとめたものです。申請チェックシート記入する前に一読をお薦めします。
申請チェックシート(新規・更新共通)から記入する
申請チェックシートは、申請書を補足するものとして、より詳細な情報をご記入する必要があります。
チェックシートの確認事項は申請書の設問文よりも具体化した文章ですので、各々に対する説明文として記入します。
チェックシートの記入が不十分だと不備のメール連絡がきて、修正した上で再申請することになりますので、その分認定まで期間がかかります。
記入の順番としては、申請チェックシートを先に記入後、その要約を申請書へご記入します。
他社のDX認定事例を参考にする
DX推進ポータル(https://disclosure.dx-portal.ipa.go.jp/p/dxcp/search)で、他社のDX認定申請内容を、Wordファイルで確認することができます。
DX認定が始まった2020年12月以降、2023年3月現在のDX認定件数は、1295件
(内、大企業中堅企業843件、中小企業385件、小規模事業者33件、個人事業主9件)となっています。
出典:IPA. 「DX推進ポータル」https://disclosure.dx-portal.ipa.go.jp/p/dxcp/search
(参照 2024-03-02)
DX認定申請書分析レポートを参考にする
IPAは、テキストマイニング手法を用いて、認定事業者の申請書に記載された内容を分析した「DX認定申請書分析レポート」を発行しています。
申請書にどのような記述が多かったか、設問毎の分析および具体例として実際の文章を示しています。よくある不備や申請書の見本を参考にすることができます。
DX認定と関連補助金
DX認定事業者は、ものづくり補助金、事業再構築補助金等で、加点対象となっています。
また、DX推進にあたってのITツール導入には、IT導入補助金活用の検討は欠かせません。
各補助金については、以下の記事も参考にしてください。
さいごに
今回は、DX認定制度の概要と申請方法をご紹介しました。
中小企業がDX推進に取り組む際は、DX認定制度で整備されている「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き2.0」や「DX推進指標 自己診断フォーマット」等のツール類を、道しるべとして利用することをお薦めします。
なお、HKSでは、DX推進に利用できる補助金について支援を行っておりますので、補助金について相談したいことがありましたら、ぜひ以下よりお問い合わせください。
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。
補助金活用支援会(HKS)パートナー、中小企業診断士