HKSブログ
賃金引上げに関する支援(補助金・助成金等)やメリットについて解説します!
今回は賃金引上げをテーマに、国の施策や補助金・助成金との関連について解説します。
今回お伝えしたいポイント1. 賃金引上げを促進する国の支援措置を紹介します。
2.賃金引上げによる補助金・助成金における加点などの優遇措置を紹介します。
3.中小企業にとっての賃金引上げのメリットについて紹介します。
中小企業における賃上げは、近年、日本経済全体の課題として注目されています。
財務省の「地域企業における賃上げ等の動向について」(特別調査)によると、2024年の春闘では何らかの賃上げ(ベアや定期昇給、賞与等)を実施する企業のうち、引上げ率を「5%以上」と回答した企業の割合は46.5%と高い割合を示した一方で、大企業は65.9%に対して中堅・中小企業等は33.9%と、賃上げの実施有無や引上げ幅は、企業の規模によって状況に差があることが分かります。
出所:地域企業における賃上げ等の動向について(特別調査)※PDFファイルが開きます。
しかしながら、近年の人材不足や物価高騰を背景に、賃金引上げは多くの事業者様にとって必要となってきています。
一方で人件費上昇は経営にとっての負担となるため、悩んでおられる経営者の方は多いのではないでしょうか。
国の施策には、そのような賃金引上げを後押しする様々な支援制度や仕組みがあり、今回はそれらを紹介します。
賃金引上げの支援措置
賃金引上げを直接支援するような施策として、各種助成金・補助金や優遇税制があります。ここではその主なものを紹介いたします。
業務改善助成金
厚生労働省が実施する事業です。生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
出所:厚生労働省「令和6年度業務改善助成金のご案内」※PDFが開きます。
事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げ額や引き上げる労働者数に応じて助成上限額が変わる仕組みです。
詳細は上記助成金の案内の他、厚生労働省のウェブサイトに詳しく掲載されています。事業完了期限は令和6年12月27日です。
キャリアアップ助成金
こちらも厚生労働省が実施する事業です。
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用労働者の正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成します。
賃 金 規 定 等 を 改 定 し 、 非 正 規 雇 用 労 働 者 の 基 本 給 を3%以上賃上げする場合に、キャリアアップ助成金の「 賃 金 規 定 等 改 定 コ ー ス 」 が 利 用 で き ま す。
賃金引上げ率と企業規模に応じて、以下のように助成額が定められています。
出所:キャリアアップ助成金のご 案 内(令和6年度版)※PDFが開きます。
詳しくは、厚生労働省のウェブサイトにまとまっています。
中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
令和6年度から始まった新しい補助金です。こちらは経済産業省の事業です。
本補助の目的は、以下のように「持続的な賃上げ」を実現できるよう支援することです。
そのため、応募の要件に賃上げ要件があります。
• 具体的には、 ①申請時に基準率以上の目標を掲げ、 ②その目標を従業員等に表明の上、 ③達成すること
出所:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金 説明会資料
上記の通り、①基準率以上の賃上げ目標を策定し、②交付決定前に賃上げを表明し、③計画に沿った賃上げを実施する必要があります。
達成できなかった場合に補助金返還となる規定もあります。
10億円以上の投資規模に対して、補助上限50億円で補助を行うもので、現在2次公募を受付中(令和6年8月9日(金)17:00締切)です。
HKSブログでも本補助金について解説しております。こちらも併せてご覧ください。
中小企業向け「賃上げ促進税制」
補助金・助成金以外にも国の支援措置はあります。
中小企業向け「賃上げ促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
令和6年度税制改正で強化され、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。
具体的には大・中堅企業であれば全雇用者の給与支給総額の増加額の最大35%、中小企業であれば最大45%を税額控除できます。
また、中小企業は要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しが可能となっています。
詳しくは中小企業庁のウェブサイトもご参照ください。
補助金における賃金引上げの優遇措置
各種の補助金において、賃金引上げは優遇措置(加点要素、補助率・上限金額の上昇等)がなされています。
主なものについて紹介いたします。
事業再構築補助金
本補助金は令和6年8月4日現在、公募されておりませんが、令和6年7月26日締切となった第12回公募では以下のような賃上げの優遇措置がありました。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
本補助金も令和6年8月4日現在、公募されておりませんが、18次締切分(令和6年1月31日(水)締切済)では、給与支給総額 年平均成長率+1.5%以上増加、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上などが要件になっていました。給与支給総額は、従業員数が増えれば必ずしも賃上げでなくても対応できますが、最低賃金に関する要件などもあり、賃上げを促進する狙いもあると考えられます。
小規模事業者持続化補助金
本補助金も令和6年8月4日現在、公募されておりませんが、令和6年5月27日締め切った第16回では以下のような賃上げに関わる規定がありました。
IT導入補助金
令和6年8月23日(金)17時までの期限で公募されています。150万円以上の補助金を申請しようとする場合、以下のように賃上げの取組を実施する必要があります。(150万円未満なら加点項目)達成できない場合に補助金の返還を求める規定もあります。
・事業計画期間において、給与支給総額*1を年平均成長率1.5%以上向上させること。ただし、被用者保険の適用拡大*2の対象となる中小企業等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年平均成長率1.0%以上向上させること。
・ 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。
中小企業における賃金引上げのメリット
国の支援措置・優遇措置を利用しながら中小企業が賃金引上げを行うことのメリットについて解説します。
企業の競争力の強化
賃金引上げによって、以下のような効果を狙うことができます。
事業計画の作成によるメリット
補助金・助成金の申請には事業計画の作成が必要になることが多いです。
多忙な中での事業計画の作成は負担にもなりますが、改めて事業について検討することで、自社の強み・弱みや事業の将来性について検討する良い機会となります。
その中で、無理のない賃上げを行えるようにシミュレーションし、実効性のある計画を立てることができます。
注意点
多くの補助金・助成金では、賃上げが実行されなかった場合に、補助金の返還措置などの規定があります。そのため、採択率上昇等の優遇措置のために無理な計画を立て、もし実行できなかった場合は、せっかく補助金・助成金が交付されても返還しなければならなくなり、経営に大きなダメージが発生する可能性があります。
そのため、実際に賃上げを実施できる実効性のある計画を立てることが肝要です。
例えば、ものづくり補助金では、給与支給総額や事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合、以下の通り返還義務を定めています。
出所:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.1版
さいごに
今回は「賃金引上げ」についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
国が用意している各種支援や優遇措置をうまく活用し、経営者・従業員双方にとってメリットがある賃金引上げを検討頂く一助となれば幸いです。
なお、HKSでは紹介した補助金・助成金において、多くの支援実績がございますので、よろしければご相談下さい!
今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。
補助金活用支援会(HKS)パートナー、中小企業診断士
ひとこと:事業者様に分かりやすい解説を心掛けております。お気軽にご相談下さい。