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補助金が資金ショートを招くこともある

補助金という言葉を聞くと、“返さなくてよいお金”“もらえるお金”という印象を持ちがちです。

しかし、補助金が採択されたのに資金ショートする会社があります。原因は単純です。補助金は「後払い」だからです。

 

▍ この記事の3つのポイント
1
補助金は後払い。採択されても、すぐにお金が入るわけではありません!
先に支払いが発生するため、補助金入金までの資金繰り確認が必要です。
2
資金ショートは、月末ではなく月中に起こる!
月次の資金繰りだけでは見えないリスクを、日繰り資金繰り表で確認することが大切です。
3
補助金目的の投資は、かえって会社の負担になることがある!
半分は自己負担、また、設備の設置スペースの準備、運用体制の整備、設備稼働費用も必要——投資後のリスクまで見したて判断する必要があります。

補助金は後払い。採択されても安心ではありません

補助金の申請では、どうしても「採択されるかどうか」に意識が向きます。申請書を作り、事業計画をまとめ、必要書類を準備し、締切に間に合わせる。採択結果が出るまでは、経営者も支援者も大きな緊張感を持って取り組むことになります。

そのため、無事に採択されると、ひとまず大きな山を越えたような気持ちになります。しかし、会社経営の視点で見ると、採択はゴールではありません。むしろ、本番はそこからです。

たとえば、1,000万円の設備を導入し、そのうち500万円が補助されるケースを考えてみます。一見すると、「1,000万円の設備を実質500万円で導入できる」と考えたくなります。たしかに、最終的な負担額だけを見れば、そのように見えるかもしれません。

しかし、問題は支払いと入金のタイミングです。設備業者への支払いが先に発生し、補助金の入金が数か月後になる場合、会社はいったん1,000万円を用意しなければなりません。補助金500万円が入ってくるのは、その後です。

この間、会社には通常の支払いもあります。給与、仕入代金、外注費、家賃、リース料、借入返済、税金、社会保険料など、待ってくれない支払いが毎月発生します。「補助金が入るから大丈夫」と思っていても、その入金日より前に大きな支払いが来れば、お金が足りなくなる可能性があります。

資金繰りで大切なのは、最終的にいくら戻ってくるかだけではありません。「いつ支払うのか」「いつ入金されるのか」という時間のズレを見ることです。

資金ショートは、月末ではなく月中に起こる

資金繰りを考えるとき、月末の預金残高だけを見て安心してしまうことがあります。しかし、実際の資金ショートは、月単位ではなく日単位で起こります。

ある会社が、補助金を活用して1,000万円の設備を導入するとします。補助金の採択額は500万円です。ただし、補助金の入金は事業完了後のため、数か月先になります。7月の資金繰りは次のような予定です。

7月の資金繰り予定(日繰りイメージ)

 

この表を見ると、7月末の預金残高は50万円です。月末だけを見ると、なんとか資金は残っているように見えます。しかし、7月20日の時点では250万円不足し、さらに7月25日には450万円不足しています。

これが資金ショートです。月末ではプラスでも、月の途中で支払いが先に来て、入金が後になると、その間にお金が足りなくなるのです。給与の支払いができない。仕入先への支払いが遅れる。借入返済が滞る。こうしたことが起これば、会社の信用に大きな影響を与えます。

特に、補助金を使った設備投資では、大きな支払いが一時期に集中することがあります。そのため、月次の資金繰り表だけでは見落とすリスクがあります。大きな投資を行う場合には、日繰りの資金繰り表で、日ごとの入金・出金・残高を確認することが重要です。


日繰り資金繰りで確認すべきこと

日繰り資金繰り表では、最低でも次の3段階で確認したいところです。

確認段階 何を確認するか 具体例
1
支払いの予定
補助事業に関する支払いがいつ発生するか 設備代金、外注費に加え、給与・仕入・家賃・リース料・借入返済・税金・社会保険料も確認する。
2
入金の予定
売掛金や補助金の入金がいつ予定されているか 補助金は事業完了・報告・検査後の入金。回収サイトとあわせて確認する。
3
残高の確認
日ごとの預金残高がマイナスにならないか 最も資金が薄くなる日を特定し、事前に対策を講じる。

もし資金が不足する日があるなら、事前に対策を考える必要があります。金融機関に相談してつなぎ資金を確保する。設備業者と支払条件を相談する。投資時期をずらす。補助事業の規模を見直す。自己資金を厚めに準備する。売掛金の回収条件を確認する。

このような対策は、資金が不足してから慌てて行うのではなく、事前に準備しておくことが大切です。補助金が採択された後に、「支払いのタイミングでお金が足りない」と気づいても、できることは限られてしまいます。だからこそ、申請前の段階で、日繰り資金繰りまで確認しておくことが重要なのです。


「補助金がもらえるなら申請する」は危険です

もう一つ注意したいのは、補助金を目的にしてしまうことです。補助金制度があると聞くと、「使わないともったいない」「採択されれば得をする」と感じることがあります。たしかに、自社に必要な投資であれば、補助金は大きな助けになります。

しかし、今の会社にとって本当に必要ではない投資を、補助金があるからという理由だけで行うのは危険です。「補助金で安く買えた」と思っても、会社の負担がゼロになるわけではありません。補助率が2分の1であれば、半分は会社負担です。1,000万円の投資なら、500万円は会社が負担します。さらに、補助金は後払いですから、支払い時点では1,000万円を先に用意しなければならない場合もあります。

【図】「補助金目的」の投資が招く4つの負担
01
自己負担
補助率2分の1なら、半分は会社負担
1,000万円の投資なら500万円は自社で用意。補助対象外の費用が発生することもある。
02
場所・動線
設備だけが残り、動線が悪化することも
思ったほど使わなかった場合、工場や事務所のスペースを取られ、作業効率が下がる。
03
運用コスト
保守費・電気代・管理の手間が継続発生
使いこなす人がいないシステムなら、月額利用料だけが残ることもある。
04
本業への影響
人手不足のまま新事業を始めると品質や納期に影響
販売先未定の新商品なら、在庫や広告費だけが増えることもある。
補助金は、必要な投資を後押しする制度です。必要のない投資を勧める制度ではありません。

事業計画は、資金繰りリスクを確認するためにも必要です

補助金申請では、事業計画を作成します。制度の目的に合っているか、成長性があるか、実現可能性があるか、生産性向上や賃上げにつながるか。こうした点を整理することはもちろん大切です。

しかし、事業計画は、採択されるためだけに作るものではありません。その投資が本当に会社に必要なのか。投資後に売上は増えるのか。粗利は残るのか。固定費はどのくらい増えるのか。借入返済に無理はないのか。そして、補助金が入金されるまで資金繰りは持つのか。これらを確認するためにも、事業計画が必要です。

特に重要なのは、売上計画と利益計画だけで終わらせないことです。売上が増える見込みがあっても、入金が遅れれば資金繰りは苦しくなります。利益が出る計画であっても、設備代金や仕入代金の支払いが先に来れば、資金ショートすることがあります。つまり、事業計画には、資金繰り計画が欠かせません

月次の資金繰りで大まかな流れを確認し、大きな支払いがある場合には日繰りで確認する。ここまで行って、初めて「この補助金投資は実行できる」と判断できます。


社長が押さえておきたい確認ポイント

補助金を検討するときには、少なくとも次の6点を確認しておきたいところです。

📋 補助金申請前チェックリスト   社長が確認したい6項目
①その投資は本当に必要か——今やるべき投資か、補助金があるから考え始めた投資か
②自己負担分を払えるか——補助率2分の1なら半分は会社負担。対象外費用も確認
③補助金入金までの資金は足りるか——支払い時点で全額用意できるか、つなぎ資金は必要か
④日繰りで見ても資金ショートしないか——月末残高だけでなく、最も資金が薄くなる日を確認
⑤投資後に売上・利益へつながるか——誰が使い、どの売上や利益につなげるのかを確認
⑥場所・人・運用体制に無理はないか——設置場所、使いこなす人、日常運用の手間まで確認
補助金は採択されれば終わりではありません。実行・支払い・成果・成長まで見据えて判断しましょう。
これらを確認せずに「補助金が使えそうだから申請する」と進めてしまうと、採択後に困ることがあります。

おわりに

補助金は、とても有効な制度です。しかし、使い方を間違えると、会社にとってリスクにもなります。特に注意すべきなのは、資金繰りです。

補助金は後払いです。採択されても、すぐにお金が入るわけではありません。会社が先に支払い、その後に補助金が入金されます。だからこそ、申請前に資金繰りを確認することが大切です。月末残高だけでなく、日ごとの入金・出金を見て、資金ショートしないかを確認する必要があります。

また、「補助金がもらえるなら投資する」という考え方にも注意が必要です。会社にとって必要のない投資であれば、補助金があっても負担は残ります。場所を取り、運用費がかかり、自己負担分やつなぎ資金も必要になります。

「補助金が使えそうだから申請する」のではなく、「この投資が会社に必要だから、補助金を活用できないか考える」。補助金は、会社が成長するために、社長がリスクを取って行う投資を後押しする制度です。

 

このような投資のタイミングや採算性、資金繰りに不安がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

ハイブリット経営サポートは、投資の採算性や収益の可視化などの利益管理、月次決算や予算制度の導入による運用体制整備、社内コスト意識の浸透のための実務支援など、補助金以外のご相談も対応できるエキスパートの集団です。私たちは中小企業の皆さまの伴走パートナーとして、具体的な解決策をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。

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今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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